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in the セレナ樹海

ルシアに魔力ポーション(ルシア曰く「・・・凄く不味い」)を飲ませ終え、現在シドー達は、ガブリエルと戦った絶壁の道へとやって来た。


「前は空を飛んできたからわからなかったけど、ここまで道なりに行くだけだったのか・・」

「ええ、なのでこの間の進撃は本当に危険だったのです。距離はあれど、障害物もなにもないですし」

「普通魔王の城の前のダンジョンって、メチャメチャ複雑なもんなんじゃねえの?」

「・・・・・それだと森人族と交易出来ない」


などと話ながらも歩いていると、辺りに鎧や、剣の破片が幾つも散らばっているのを見つけた。勿論、それらの持ち主だったと思われる白骨も転がっていた。


「行こう」


シドーはチラリとそれらを一瞥し、その場を後にした。


その後も道なりに歩き続け、遠目に森林地帯が広がっているのが見えた頃、日も暮れたので野宿することになった。

平地に麻のような丈夫な布でできたテントを2つ張り、薪を集めてルシアの魔法で火をつける。


「私とルシアは水と食糧を調達してきますので、魔王様は火の番をお願いいたします。」

「ああ、任せとけ!どでかい火柱をあげてやるぜ!」

「・・・・メラゾー・・・」

「言わせねぇーよ!」


サヤとルシアが夜の闇のなかに消えると、途端に辺りが静かになり、パチパチと、枝が燃える音のみが聴こえる。


「・・・・って俺一人放置かよ・・・変な化物とかでないよな~・・・」


途端に堪らなく心細くなって、鎌を握り締める。


「そうだ!気晴らしに素振りでもするか!うん!そうしよう!ガブリエルと戦った時は肉弾戦と魔法だけで結局この鎌使わなかったしな~」


青ざめた顔に滴る脂汗、それに加えて鳥肌もたちまくっているが、決してびびってなんかいない。


「確か鎌って武器は相手を引っ掻くように切りつけたり、振り回して面制圧に優れた武器だったはず。・・・・こうか?」


試しに袈裟懸けに弧を描くように振るう。そのままの勢いを殺さず水平に構え、横凪ぎに一線。


「おお・・・なんかできた!よーし」


次は左足を軸に回転し、辺りを薙ぎ払うイメージで振り払う。ビュオッと、風圧が起こり、何枚かの木の葉が宙を舞うのが見えた。


「へぇ~・・・結構様になっているじゃない。それに顔つきも、前より精悍になったというか・・・」

「え?マジで?いやぁそんなことねぇよ・・・って、うおおおお!?」


突如背後からサヤでもルシアでもない声で話しかけられ、反射的に振り返りながら鎌を振る。しかし、その人物は、光の粒子と白い羽を翻して軽やかにかわす。


「もう、危ないわねぇ!」

「わ、わりぃ・・え・・と、アリー・・・だっけか。久しぶりだな。転生したとき以来か・・・」

「ああ、そういえば、夢の中に入ったときは、記憶が曖昧になるんだったっけ。

・・・まあいいわ。こうして心身共に無事でいるってことは、なんとか危機を乗り越えたみたいね。」

「危機?・・・ああ、まあな。魔王のステータスのおかげでなんとか生きてるよ。」


現れた天使、もとい、シドーを異世界グランに転生する際、お世話になった女性・・・アリーは、「そう」と、一言言うと、指を鳴らして、現れた豪奢なイスに足を組んで座る

タイトスカートのため、程よく肉付きの良い足が際どいことになっている。

シドーは一瞬そちらに目を奪われるが、それよりもなぜ今になってこの天使が自分の前に現れたかということの方が気になる。


「で・・どうしたんだよ急に。様子を見に来たのか?」

「まあ、そんなところね。君は覚えていないけど、私は貴方の専属サポート係になったのよ。・・・・で、もろ現代っ子で、運良くとんでもないステータスを手にいれ、可愛い女の子達に「魔王様」なんて言われてデレデレしている志童くんの今のご感想を聞きたいんだけどな~」

「嫌な言い方するなよ。まあ、前の世界より生きがいがあるというか・・・。」


シドーの答えにアリーは「ほう」とだけ言うがバカにする様子もなく、感心したような顔をしている。


「今までの人生・・・生きてた頃な、なんだか自分の人生の筈なのに他人事な気がして、何事にも本気になれなかったんだ。

この世界に来たときあんたが言ってた「変わろうとしなかったのはあなただけでしょう」ってまさにその通りだったんだよ。他のやつみたいに明確な目標なんてなかったんだ。

で、この世界はまさに俺が望んでいた何でもありの異世界だ」

「ま、全世界から命を狙われている魔王だけどね~」


アリーが茶々をいれるが、シドーは苦笑しながら続ける。

「まあ、魔王だからといってただ単に殺される訳にもいかないよ。マノクニの復興と、全人類が手を取り合う世界のために、まずは協力者を見つけるのが今の目的だ。」


シドーがそういうと、アリーは「そっか・・」と、一言だけのこして立ち上がる。

「見つかると良いわね、協力者。最も、今の状況の森人族へ協力を頼むのが吉と出るか凶と出るか・・・」

「え?今なんて・・・」


すぅっと光の粒子を散らしてアリーは消えてしまった。


「行っちゃった・・・。にしても森人族ってどんなやつらなんだろな~後で二人に聞いてみよ~「ガサガサガサガサッ!」

みぎゃああああああああ!!??ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ」


突然すぐ近くで草木が揺れる音がして、反射的に叫び、鎌を振る。すると鎌から黒いオーラを纏った斬撃が、音のなるほうへと飛んでいく。


「魔王様?どうしマアアアア!!??」

「・・転移」


音の正体はサヤとルシアで、いきなり飛んできた斬撃に対し、悲鳴をあげながら(サヤのみ)回避する。


「え?ああ!悪い!大丈夫か!?」

「いきなりなにするんですか!?死にますよ!?」

「いや~ちょっと新技の練習を・・・」


シドーが苦し紛れの言い訳をすると


「まあ!そうだったのですね!こんな場所でも鍛練を欠かさないなんて!流石です魔王様!」


と、ころりと騙され、上機嫌で去っていく。

するとその後にルシアがやって来て、背伸びをしてシドーの耳元で

「・・・『みぎゃああああああああ』・・・ぷぷ」

と、言い残し、サヤの所へ駆けていく。

その一瞬後、顔を真っ赤にして、悶えるシドーであった。


「ってあれ?今ルシア笑った?ねえ?ルシア!もっかい笑って見せろよ~お~い」

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