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魔王的世界平和への一歩

職場の異動とかモンハンダブルクロスとか色々あってサイト自体から離れてた。

好きな作品がめっさ更新されていた・・・

ルシアは珍しく額に汗を流してひたすらに鍋を掻き回していた。

目の前にある鍋の中には数種類の野菜と魔獣の肉が入ったスープがグツグツと煮込まれている。

「5、4、3、2、1、」


数えて身を翻し、分厚いミトンを装備するとルシア程もある大きな釜の蓋がピーッと湯気を噴き上げる。


「・・・バッチリ」


パカッと蓋を開けると、細かく切った具材と共に炊かれた米が顔をだす。それをしゃもじで素早くかき混ぜて無駄な水分を飛ばす。

芳ばしい香りが魔王城の厨房に満ちる。


「・・・・サヤ、これお願い。釜ごとでいい。」

「り、了解」


普段は配膳も自分でやるが今はサヤの手も借りたかった。

すぐに巨大な魔牛肉の丸焼きの加減をチェックする。

火の上で炙られている巨大な牛は以前サヤが仕留めたものをルシアが冷凍保存してあったものである。

それ以外にも、保存してあった食料を全て使いルシアは料理をひたすらに作り続けていた。





「あぐっ!んむんむ!っぱあ!」


先程サヤが運んだ山盛りのパスタが、少年の口に吸い込まれていく。

まるでジュースか何かを飲むような勢いでパスタを平らげた少年はよほどガタイが良いかと言うとそうでもなく、かといってひょろい訳でもなく、正しく中肉中背。

しかしその表情は、げっそりと頬が痩せこけてまるで病人のようだった。


「は、腹へった~~~~!!!!!!!」

「魔王様!これを!」


サヤが運んできたのはルシアから託された炊き込みご飯が大量に入った釜。熱々のそれを投げつけるように魔王と呼ばれた少年の前にだす。

目の前に出されたご馳走を目にして、少年の目が一段と輝きをます。


「米キタ━(゜∀゜)━!やっぱ日本人は米だうっひよーーい!」


おかしなテンションのまま釜に顔を突っ込んで貪り食う。熱々の炊きたてのご飯をそんな食べ方をすれば勿論


「あっちぃ!」


当たり前である。


「でもうまい!モグモグ!」


それでも構わずに食べる。食べる、食べる、食べる、ただひたすらに食べる。


「魔、魔王様・・・」


その様子をサヤは心配そうな顔で見守っていた。

倒れた時より顔色は良くなっていたし、この食欲。もう心配はない・・・はず。


『・・・サヤ!次お願い』

「!?・・ああ、今行く!」


通信魔法でルシアから呼び立てられ、おっかなびっくり返事をする。

そして不安な気持ちをかきけすように少年―『魔王』シドーから視線を切って部屋を後にする。




不思議な感覚だった。大量の人を殺した後のはずなのに、目を閉じれば最期の悲鳴やうめき声が鮮明に思い出されるというのに食欲が止まらなかった。

思い出したくないはずなのに浮かんでくる天界の兵士やガブリエルの最期の表情。普通なら食欲なんて毛ほどもわかない。口に入れたとしてもすぐに吐き出してしまうはずなのに。

シドーは一心不乱に運ばれてくる料理を平らげていた。食べても食べても腹に貯まらず、どこか別の場所に運ばれているような感覚。それでも最初より空腹や頭痛は治まり、手足にも力がはいるようになってきていた。

なぜこんなことになっているのか、原因はルシア曰くガブリエルとの戦いで大量の魔力を急に使ったことによる魔力酔いと呼ばれるものらしい。


『・・・魔法は精神力が具現化したようなもの。使いすぎれば精神に大きな影響が出るだけでなく、肉体的にも負担がかかる。

・・・まおー様の場合は魔力切れという訳じゃなくてただ単に魔法を使い慣れてないのにあんな大魔法を使ったせい』


「確かに練習じゃああんなに魔力を使ってないし、自業自得か・・・・この肉うま。」


そんなこんなで魔王城の食材を食いつくし、それでも足りずにルシアとサヤの特製かき氷(魔法で出した氷塊をサヤが削って蜂蜜をぶっかけた)を約200kg分

平らげ、やっとシドーの腹は満たされた。

今はサヤがいれてくれた食後のお茶を飲んで一息ついていた。


「いや~旨かった~。ルシアに後でお礼言っとかねーと」

「そうですね。きっと喜ぶと思いますよ」


二人が言うようにルシアは最後のかき氷を作った後体力が尽きて眠ってしまった。ほっとくとまた「・・・寝ぼけた」とか言ってシドーの布団に潜り込もうとするため、サヤがすぐにルシア自身の部屋に放り込んだのだ。何か恨みがましいことを言ってた気がするが本人もだいぶ疲れてたみたいですぐに寝息しか聞こえなかった。


「まさかこんな短時間でマノクニ名物料理を制覇するとは思わなかったぜ。」

「ええ。それも25品目を10人前ずつ。・・・全部作ったルシアも凄いですが、食べきった魔王様はもっと凄いです。」

「いやぁ・・(^-^ゞ。・・・・ルシアは昔から料理担当だったのか?」

「いえ、昔は交代で作ってたのですが、あるときから急にルシアが料理に凝り初めて、料理の腕がどんどん上がっていって『・・・これからは私が作る』というわけで」

「なるほどな~。確かにルシアははまったらトコトンやりそうな性格だもんな~」

「ルシアに限らず魔法職という人種は、興味の対象に関心の全てを向けますから。・・・逆にそれ以外のことはなんの興味もないんですよ。酷いときは3日間風呂にも入らず着替えもせずに魔法や料理の研究をしてた時もありますし」

「女の子としてそれはどーなんかねぇ。」

「あはは・・・。ルシアの・・・ブルーオーガ族はみんなそんな感じでしたからね。」

「一族揃って研究熱心なんだな~。ん?『でした』?。まさか・・・」

「はい。先代魔王様と連合軍との戦争の折に異端種族として皆殺しにされたのです。私のレッドオーガ族もそのとき・・・」

「わかった!無理に話さなくていい!。ったく酷いことするもんだ。同じ人間なのに・・」

「魔人族は先祖である魔物から進化してきた生き物なので連合からしてみれば魔物とおんなじなのですよ・・」

「だからって・・・」


シドーはそこからさき何も言うことが出来なかった。前世の地球でも同じ人間達が絶えず戦争を繰り返したり、人種差別等が止まなかった。どこの世界も一緒なのだと思うとサヤの言葉を否定することは出来なかった。


「すまんサヤ。」

「魔王様が謝ることではありません。魔人族はもう私達3人だけになってしまいましたが、私達が・・・いや、この世界の人間が本当の意味で平和に暮らせるようにすればいいんですよね。」


ニコッと、それまでシドーに対し忠節の態度をとっていたサヤが初めて見せる年相応の少女の微笑み。シドーは思わずドキッとしてしまいながらも、この凛々しい少女の期待にしどろもどろになりながらも答える。


「お、おう!任しとけ!」

「・・・なんか不安ですねー」

「ルシアみたいな言い方するなよ、区別つきにくいだろう。」

「なんの話ですか!?この場に私と魔王様しかいないですよね!?」

「とーにーかーく!ああそうだよ不安で仕方ねえ!だから・・・・」


シドーはそこで言い淀んでしまう。ここから先を口にすればサヤとルシアは協力してくれる。魔王の部下として、自分と一緒に終わりのない地獄巡りに。

大切な二人をそんな宛もない旅路に同行させるわけにはいかなかった。


「だから二人にはこの魔王城の城に残ってマノクニの復興と、通信魔法での支援を頼みたい!」


せめてこの城にとどまってくれていれば、もし自分に何かあっても二人は無事でいられる。そんなシドーの想いを


「「お断りします」」


バッサリと、サヤといつのまにか起きてシドーの部屋に来ていたルシアに断られてしまった。


「・・・・・まあそういうと思ったよ。なら言い方を変えよう。魔王として命ずる。ルシア、サヤ、この魔王城を二人で死守しろ。」


短い付き合いだが二人は性格とは別で自分への忠誠心は本物だとシドーは理解していた。だから余り薦めはしないが魔王としての立場から二人に対し命令を下す。だがそれでも


「・・・拒否」

「その御命令には従えません」


真剣な目をした二人はシドーの命令を真っ向から拒絶した。


「これから先、俺は魔王として全世界から命を狙われる。いや、ガブリエルをブッ飛ばしたことでより巨大な勢力が敵になったかも知れねぇ。

今回は上手くいったが次はどうなるかわからない。俺がここにいて、爆弾か何かで攻撃されたら二人が死んじまう!俺が一人でここから離れれば・・」

「それで私とルシアにここに立て籠れと・・・そうおっしゃるのですね。」

「ああ、そうだよ!わかってるなら・・」


「つまり魔王様は私達に死ねというのですね」


次の瞬間にサヤの口から出た言葉にその場の空気が凍りつく。シドーはサヤが何を言っているのかわからずにポカンとしている間にサヤは続ける。


「こんなだだっ広いだけのなんの設備もない、戦う兵士も皆殺しにされ、唯一残っていた食料もぜーんぶ食い尽くされた『魔王』の城にルシアと永遠に立て籠れと。」

「!!」


サヤの言葉にシドーは雷に打たれたような衝撃を受ける。

そう、ここは魔王の城。言うなれば本拠地である。魔王たるシドーが旅に出て不在ですなんて言い訳は通じない。そんな敵からもっとも狙われる場所に二人を置いていくなど愚の骨頂である。


「・・・・それにまおー様一人じゃこのマノクニから出ることも出来ない」

「う、・・・それは気合いでどうにかする!この城から真っ直ぐダッシュすれば俺の敏捷ステータスなら・・」

「・・・・結界の中を30時間走り回って空腹で倒れるだけ」


まるでそんな未来を見てきたかのように言うルシアにシドーは何も言えなかった。


「これでわかりましたか魔王様。一人ではルシアが張った結界から出ることも出来ない、敵から狙い撃ちにされ、最悪その前に飢え死にです!」

「結界があるから大丈夫なんじゃないのかよ」

「向こうにだってルシアクラスの魔術師はゴロゴロいます!結界も無敵ではないので攻略されればここは丸裸です!」


ルシアが若干不機嫌そうにするが確かにサヤの言う通りだ。ここに籠っても何一つ良いことはない。


「因みに本音は?」

「「まおー様/魔王様一人じゃ心配だから/ですから」」

「子どもか俺は!」


魔王のはずが部下からは信頼の欠片もなかった。


「・・・・・・・・わかったよ。

正直、俺はこの世界のことを殆ど知らない。ガブリエルの親玉をぶっとばせば良いと思ってたがそれでこの世界が平和になる・・・訳ないよな。それは結局、俺を殺そうとしている奴等と同じだ。だから二人には俺と一緒にこの世界を見て回って、どうすればいいのか一緒に考えてほしいんだ。」


シドーの言葉に二人は待ってましたと言わんばかりに頷き、


「慎んでお受け致します。」

「・・・・任された」


と、それぞれシドーの手をとって運命を共にする決意を示してくれた。


因みに魔力酔いででる症状は人によって違います。

シドーはヤバイくらいの空腹、サヤは犬耳と尻尾が生える、ルシアは体が縮んで幼女になる。


死んでしまったガブリエルさんは足の小指の爪が異様に伸びます。

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