魔王様の猿でもわかる物理の授業
引力とか重力の説明分かりにくいと思いますが暖かい目で見ていただければ。
「確認しておくがこの《グラン》って世界には朝と夜があって季節は4つあるok?」
「おーけー?とは何か知りませんが概ね合っています。国毎に多少異なりますがここ《マノクニ》では朝3夜7の割合で一日として季節は温暖期、乾燥期、湿潤期、寒冷期があります。今は湿潤期なので毒の沼やスライムが大量発生しています。」
どうやら地球とは季節からなにまで違っているらしい。あまり地球基準で考えるのはよそう。どうせもう帰れないんだし。そう割りきってシドーは考えを改める。
(じゃあ太陽の公転周期だの星の自転だのの説明は省いた方がいいな。そもそも宇宙があるかもわからんのだし)
「それで魔王様、重力魔法のより効果的な使い方とは一体なんなのですか?」
「そもそも重力魔法っていう呼び名からまず改めようか。」
「「え」」
シドーが何気なく発した一言にサヤもルシアも目を丸くする。少ししてルシアが気をとりなおして尋ねる。
「・・・・それってどういうこと?重さを自在に操るから重力魔法なんじゃ・・」
「それじゃあ元々存在する重さっていうのはなんの影響を受けてその重みとなっていると思う?俺たちがこうやってふわふわ浮かびもせず大地にたって生活していられるのはどうしてだと思う?」
「・・・・!!大地に引っ張られている?じゃあまおーさまの魔法は土魔法?」
「半分正解で半分違う。確かに大地に引っ張られているって聞くと土魔法っぽいかも知んないけど俺の魔法は正真正銘闇魔法だよ。魔眼で確認したから間違いない。そして俺の魔法の正体は重力を自在に操るものではなく、物体同士に働く引っ張り合う力、引力を自在に操る『引力魔法』だ。」
「・・・・つまりまおーさまはさっきの岩の重さを軽くしたんじゃなくて大地と岩の引っ張り合う力を弱めたっていうこと?」
「そゆことそゆこと。でも引っ張り合う力だけじゃなくてその物体の質量・・まぁ純粋な重さ自体も軽くしたから重力魔法でもあるわけだけどな」
つまり小石と大岩、この二つに働く大地に引っ張られる力を同じくらい弱めたとしても、大岩の方が質量があるためこれだけではまだ大岩の方が重い。プラスして大岩の質量も軽くしなければならない。
シドーが自分の魔法の疑問に気づいたのはアリーと話している際、自身のステータスを見たときだ。この時すでに魔眼の能力が発動しており、対象の真理・・重力の本質である引力の存在を理解したためである。
余談だが生前のシドーの物理の成績は62点、クラスの平均値ジャストだとよく笑われていた。
「・・・・・難しい・・・でも興味は絶えない」
「いやぁでもルシアの気づきも中々だったぞ。流石魔王軍参謀長!魔法に関しての知識はルシアに聞けば大丈夫だな!」
ぽんぽんっと帽子の上からルシアの頭を軽く叩く。すると出会ってからここまでで無表情だったルシアの顔が若干赤くなっていた。
「・・・・ぅきゅう・・・・」
モジモジとクールな印象に似合わない可愛らしい悲鳴にシドーは思わずイケない悪戯をしそうになるがここでこの場にいるもう一人の存在を思い出す。シドーが魔法の説明を始めてからずっと黙って空気と化していた
「インリョク?ヒッパリアウチカラ?シツリョー?闇魔法であって土魔法じゃない。でも大地に作用する力?・・・ハハハ、ワケガワカラナイ・・・」
サヤが頭から煙をあげながらぶつぶつと同じ言葉を繰り返して壊れていた。
気がつけば日の光が弱まり、辺りは薄暗くなっていた。
その夜はシドーもルシアを手伝って料理をしていた。この世界の料理に興味があったのと、少し試したいことがあったからである。それは
「おぉ~スゲースゲー!ちょっと見て触るだけで食材の切り方だとか美味しい部分や調理法が頭に入ってくるぜ!おもしれ~!」
「・・・・こんな魔眼の使い方する魔王はまおーさましかいないと思う・・・」
魔眼の能力でルシアから言われた通りの形に食材を切ったり、捌いたりと料理人顔負けの手捌きで料理を次々と完成させていった。
料理なんてお湯をいれて3分か、ご飯にかけて醤油を垂らすぐらいしか出来ないシドーだが魔眼のおかげでその食材ごとの適格な調理法が見るだけで頭の中にインプットされ、まるで今までずっと料理をしてきたかのような感覚で調理することが出来た。
因みにサヤは先程の解説の影響で知恵熱のようなものを出して寝込んでいる。
ルシア曰く「・・・・・サヤは脳筋」だからだそうだ。
「つーかさっきから結構な量の食事を作ってるけど多すぎじゃないか?俺も腹は減ってるけど流石にこの量はちょっときついぜ。サヤは今は無理そうだしルシアだってそんなに食べる方じゃないだろ?」
シドーがいうようにルシアもサヤも昼御飯のレルーカを皿一杯食べただけでシドーのように大盛にしてさらにおかわりした訳ではない。
「・・・・・・これはこの子達にあげるの」
「この子達って・・・え?」
いつの間にかシドーとルシアの周りには淡い光を纏った小人のようなものが無数に集まっていた。
「こ、これって・・・」
「・・・・彼らは私の使い魔。転移魔法を応用した召喚魔法で呼び出した下級精霊達。・・・・この子達に今まで魔王城の掃除や結界の維持をしてもらっていたの。」
その内の一人を手にのせ少し寂しそうな顔をして続ける。
「・・・・でもまおーさまが来て、魔王城が本来の力を取り戻したお陰でこの子達の役目も終わった。だから今日はいっぱい作った。」
そういうとルシアは作った料理をテーブルに並べ「・・・・召し上がれ」と一言告げる。すると小人達が一斉に料理に向かい、次々と平らげていく。みんなとても嬉しそうな顔をしていて、美味しそうに料理を食べていた。
「・・・・まおーさまも食べて、なくなっちゃう」
「え?ああ、そうだな。いただきます。」
シドーも料理を食べ始めるがルシアは相変わらずその様子を見ているだけ。
最初は黙々と食べていたが徐にウィンナーのようなものにフォークを突き刺し、そのままルシアの元へ向かい
「・・・・どうしたのまおーさま。美味しくなか「お前も食え」ムゴッ」
ルシアの口にウィンナーのようなものを突っ込んだ。
「そんな辛気臭い顔で見守られながらじゃあ折角の料理が台無しだ。ルシアも一緒に食おうぜ。昼の時もそうだけど一緒に食った方が何倍も旨くなるもんだぞ。」
「んむ!モゴモゴ!んむ~~~!!」
口にウィンナーのようなものを突っ込まれながら手足をパタパタと降ってもがくルシア。流石に苦しいかと思いウィンナーのようなものをルシアの口から引き抜く。
「・・・・ぷはぁっ・・・・はぁ」
つぅとウィンナーのようなものとルシアの口の間に涎の橋ができ、口の端からも白い脂身のようなものと混ざって垂れている。苦しかったように息を荒げて顔も上気したように頬が赤くなっていた。さらに
「・・・はぁ・・・凄く熱くて太かった・・」
「わ、悪いルシア!大丈・・ぶはぁ!」
ロリ巨乳の美少女が口に熱くて太いのを突っ込まれ、喘ぎ声のようなものを出しているというのは健全な高校生男子のシドーには刺激が強すぎた。鼻血を吹きながら前屈みでしゃがみこむ。
「・・・・どうしたのまおーさま?」
「な、ナンデモナイ、ナンデモナイよ!・・・それより、みんな満足してくれたみたいだぞ」
見るとあれだけあった料理をほぼ平らげ、精霊達はルシアに手を振りながら虚空に消えていった。
『アリガトウ、ゴシュジンサマ』と言い残して。
「・・・・・こちらこそ」
ルシアもペコリと虚空に頭を下げる。最初はクールな印象が強かったルシアだがこういった思いやりのある一面もあり、優しい女の子なのだとシドーは思った。しばらくしていつものダウナーな雰囲気に戻ったルシアが食器を片付けようとしたとき、床に零れていたタレを踏んづけツルンと転びそうになる。
「わっ・・あ・・・」
「ちょっ!アブねぇルシア!おわぁ!」
バランスをとろうと懸命に(?)手足を振るも魔法職で女の子のルシアにそこまで優れたバランス感覚はない。運の悪いことに前屈みのシドーの上にのし掛かるように転んでしまう。
「わむぅ!?んむ!」
いきなり視界が暗闇に閉ざされ、顔全体に柔らかいなにかが押し付けられ呼吸もままならない。手で退けようとその柔らかいなにかを掴んでみると
「・・あ・・・」
ぴくんっとそのなにかが震え、斜め上からか細い声が聞こえる。それだけでシドーは今がどういう状況なのか判断する。ここはフワッとだぼついたローブのなか、顔全体に柔らかい二つの塊、すなわち
「ぶはぁ!ごめんルシア!」
すぐさまローブの中から飛び出すシドー。肝心のルシアはポカンとした表情のまま。それもそのはず、勢いよく出てきたせいでローブがめくり上がり、下着姿が丸見えになってしまっているのだから。
「ご、ごごごごめんルシア!決してわざとじゃないんだ!やっぱり凄くでかくてぷよんとしてて・・じゃなくって受け止めようとしたらいい匂いで柔らかくて・・・って違う違う!そうじゃなくてえっと」
沸き上がる劣情と戦っている間にルシアは乱れた衣服を整えていた。
「・・・別に、気にしてない。転んだのは私のせいだから」
「そ、そっか、えっとじゃあ今日はもう休むから部屋まで案内してくれないか?
しどろもどろになりながらシドーは部屋の場所を尋ねる。ルシアは何事もなかったかのように城の見取図を出すとシドーの魔眼にインプットさせる。
「おお、ありがとうルシア!じ、じゃあ・・えっと・・おやすみ!」
「・・・・おやすみなさい」
ビュンッと長い廊下を駆けていくシドー、取り残されたルシアはシドーに掴まれた左胸を触り
「・・・・初めての感覚。興味深い。」
と、その場でポツリと呟いた。
その夜。シドー自室にて。
「き、今日一日で二人の女の子の裸を見たり触ったり・・・ヤベェドキドキして眠れねぇ・・・」
たどり着いた初めての部屋の中を見る暇もなくベッドに潜り込み、悶々とした夜を過ごしていた。