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転生ものによくある始まり

16年間生きてきたなかで不自由なことは何一つなかった。

幼い頃に両親がいなくなったりだとか今の家族とは血の繋がりがないとか、ましてや虐待を受けていたとかそういったことは何一つないごく普通の家庭に産まれ、両親からはたくさんの愛情をもらってきた。まあ、妹は思春期のせいか最近俺にやたらと冷たいが目が会うたびに人殺しのような目付きで睨んで来るのはやめて欲しい。

友達もよくある可愛い幼馴染みはいないが学校帰りにゲーセンに寄ったり好きな漫画の話で盛り上がったりなどそこそこいる方だと思う。彼女?それは空想の産物だろ。

顔は・・自分ではわからんが友人からは「目が死んでなければそこそこモテる顔」らしい。

部活はやってない。理由は簡単、何かに縛られるのが嫌いなんだ。まあ綺麗なお姉さんに縛られるのなら・・・何を言っているんだ俺は。

そんな感じで放課後と休日は一人ないし友人達とぶらぶらするのが俺の日常だ。

そんなことを身の回りの大人に話すとそんなんでいいのかと苦笑い混じりで言われるが俺は良いと思う。自分だけの人生だ、他人に迷惑はかけないから自分のやりたいようにやらせて欲しい。

しかし、そんな俺・・もとい美和 志童(みわしどうの人生がまさかこんなところで終わってしまうとは、本当になにごとだろうか。







「美和 志童、享年16歳死因は老婆を庇ってトラックに轢かれる・・と、いい加減受け入れてください、あなたは死んだのです!」


目の前の露出過多なお姉さんが何度目かになる問いを投げ掛けてくる。

ウェーブのかかった長い茶髪に色白でタレ目、そして神話とかでよく神様達が着ているような肩とか足とか丸だしな格好。そこから挑発的に見える豊かな胸と太ももはたまらないが正直な話、いくら美人でもあまりに露出が多いと特に童貞はドン引きしてしまう。


「まさかあなたが今日死ぬ運命だったあの老婆を庇うだなんて思いもしませんでした。」


そう、俺はこの女の言う通り車に轢かれそうになっていた老婆を庇った。そこから先のことは何もわからない。何故俺が今自分とこの女のいる・・いや、自分とこの女しかいない真っ暗闇の部屋にいるのかもわからない。だから俺も何度目かになる質問を目の前の女にする。


「俺を生き返らせて下さい!お願いします!あなたは神様みたいなもんなんでしょう!?確かに退屈だと思ってた、何か変わったことは起こらないか、そんなことばかり考えながら生きてきた。でもまさか死ぬなんて「変わろうとしなかったのはあなただけでしょう」」


子どものようにわめき散らす俺の言葉をその女はピシャリと遮った。その表情はいい加減にしてくれ、と言っている。確かにその通りだと思う。

俺は将来の夢ややりたいこともなく、ただこの日常が続けば良いとひたすら思ってた。

『悪いしどう、俺今日講習があるから』

『週末大学のオープンキャンパスがあるから』

『部活の大会』

『彼女とデート』

でも気づいていた。気づかない振りをしていた。周りは常に動いていた。いや、自分だけ動いてなかった。自分も何かやろうか考えてた矢先に死んでしまった。

俺はその場で項垂れる。まさかこんなにあっさり終わってしまうものだと思ってなかった。まだまだやり残したことが・・・・あれ?やり残したこと・・・何かあったっけ?


「それに生き返らせることは出来ません。私は神の使いでしかない存在です。そんな力も権限もありません、・・・寧ろチャンスかもしれませんよ?」


最後にそれまでの堅苦しい言い方とは違った悪戯っぽい言い方に志童は顔を上げる。


「チャンス?」

「新しい人生を歩むチャンスですよ」

「そんな・・・」


無責任な・・と言おうとしたが確かにその通りだとふと思う。

もしあのままダラダラと生きていったとしたらそれは楽しいと言えるのだろうか?惰性と妥協で溢れた底辺人生、下手したらニートだ。そんなことを心の底で思いながらも俺は甘えていた。時間と可能性に、まだ高2だから、なんとかなるだろうと・・・・。そんな人生を変えたいと思っていた。


「流石に死にたいとは思ってなかったけどな」

「それに関しては本当にごめんなさい。」

「でもそれぐらいじゃないと変わろうとなんて思っていてもしなかっただろうな」


生前の自分のものぐささに腹が立つ。

俺は腹を括る。新しい人生を歩むと。決意が軽すぎる?どうやら自分が思っている以上に今までの人生に嫌気が差していたんだろう。わめき散らしたのは楽な道から抜け出すのが嫌だったからだ。


「ではさっそく新しい人生のことですが、神様から通知がありましてですね、ええと何々・・・うわ~」


スマホのような機械を取りだしその画面を見て顔を歪ませる。


「え?なんすかその反応」


なんだか不安になったので聞いてみる。

これでスラ○ムなんかになったら目もあてられない。


「え~と、変わりたいと言ってた手前凄く言いづらいんですが・・モンスター溢れる危険でファンタジーな世界『グラン』で・・農民A」


気まずそうな顔で女が言う。

農民A・・・つまりあれか、ド○クエで村にきた勇者が話しかけると「ここは○○村だよ」とか言うしか能のないモブキャラ中のモブキャラ


俺は大きく息を吸い込み、全身全霊でその思いをはきだす。


「嫌だああああああああああ!!」


視界に五月蝿そうに顔をしかめる姿が見えた。


「ステータスも最低中の最低、タンスの角に小指をぶつけた瞬間に死ぬ最弱のキャラですね」

「弱すぎだろ!?もっと他にないのかよ!チートとかさー」

「五月蝿い童貞ですねぇ、引きちぎりますよ」

「何を!?」


思わず股間を隠す。


すると女が持っているスマホのような機械・・もうスマホでいいや、から赤い帽子と髭が特徴のキャラが冒険するゲームの音楽が鳴る。

つか天使もマ○オとかやんのかよ。


「神様から連絡がきました・・ええと、そんなに言うなら自分で決めろっと。」

「え?それなら最強チート・・」


俺が言い終わる前に突然何もない空間からとてつもなく大きな・・・・・・・・ガチャガチャが現れる。中には無数の球体カプセルがあり、それがみっちり詰まった箱が天井(暗闇だからどこが天井かわからん)まで続いていた。


「まさかこれで決めるのかよ」

「因みに内容の内訳としては

ハズレ(さっきの村人レベル)50%

ノーマル(普通の戦士or魔法使い)30%

レア(ちょっと強い戦士or魔法使い)18%

スーパーレア(エリート戦士or魔法使い)1,9999999%

ウルトラレア(神)0,0000001%

だそうです」

「ソシャゲーかよ!しかもガチャの内容が鬼畜過ぎる。」


とにかくやるしかない!覚悟を決めてレバーをまわす。なにごとも最初が肝心だ。絶対にレアを当ててやる!当たるまで何度でも回してやる!そう、

リセットマラソンだ!!









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