マルンへ
「旦那、俺の船でマルンに行けばこのまま寝ていられますよ」
メウロバルトが寝起きの俺に聞いてきた。確かにこのまま寝ていられるなら有難い。
「船賃は、闘技場で稼いだ分しか無いぞ」
「何を水臭い事を!」
メウロバルトが俺の肩を叩きながら言う。
「旦那と俺の仲じゃないですか!」
そんなに大した仲では無いぞ。
「ロンダの姉御達はまだ寝てますので、さっさと船を出します。マルンまでなら明日の朝までには着きますよ」
「ああ、すまんな」
「ワン!」
俺の横で寝ているピヨールも返事をする。船酔いが酷いアンジェリカも寝ているならましだろう。
結局俺達は陽が落ちかける夕方頃まで眠っていた。普段の旅より昨日の歓迎会の方が疲れていたのか、海に上で眠が浅いのか、そんなに寝てもまだ体がぼーっとしていたのでピヨールを使って疲れをとった。
目が覚めて甲板に出るとアンが素振りをしている。鋭い振りだが、本人は納得いかない様でまだまだ続きそうだ。
「ロンダも起きているのか?」
俺が話しかけると、アンはフウッと一息ついて、剣を下ろしこちらを向いた。
「上におられます」
そう言ってアンは檣の上を指す。見上げると確かにロンダの姿がチラチラと見える。アンジェリカはまだ寝ている様だ。起きてはいるが立ち上がれないらしい。早速船に酔っているそうだ。
「皆さん夕飯が出来たんでこちらにどうぞ」
船員が俺達を呼びに来たのでついていくと、船室の机に食器が並べられ、何が入っているのか分からない謎の汁物が入っていた。中身は謎だが、美味そうな匂いが漂ってくる。
「おお、見た目は変だが、中々の味だぞ」
いつの間にか俺よりも先に席に着き、汁を飲んでいるのは、さっきまで帆柱の上にいたはずのロンダだった。
「これは、港で見た干されていた魚か?」
ロンダが船員に聞くと、完全にロンダに怯えている船員は何かされるのではないかと身構えながら答える。
「は、はい!そうです!」
「骨まですり身にしているな。干すというのもありなのか」
ロンダが出された夕飯に興味を持ったようだ。なんだか嫌な予感がしてきた。
次回投稿は3/14(月)の予定です




