港での大歓迎
ハパ・クロードは非の打ち所の無い応対と準備で俺たちを港に迎え入れた。俺達が魔王討伐に成功した事をどうやって先に知ったのかメウロバルトに尋ねると、監視役の船を付けていたのだろうと答えた。全く気付いていなかったがこの盛大な歓迎を見るとそれが真実なのだろう。
そしてハパ・クロードは更に俺達、特にメウロバルトに追い打ちをかける。
「皆さん!ここにいる勇者ピヨール殿、そしてその姉君である戦鬼ロンダ殿、我がミノア王国の騎士アスタルテ殿、そしてその3名を見守る聖女アンジェリカ殿の4名と誇り高き海の英雄メウロバルト船長とその船員達が不可能と思われた海の魔王の討伐に成功しました!」
船が並ぶ港に作られた舞台の上に立つハパ・クロードはよく通る声で集まった群衆に言い放った。
「おおお!!」
「凄いぞ!」
「勇者だと!?」
「俺は昨日闘技場で見たぞ!」
「俺もだ、あの2人は本物だ!」
あちこちで称賛の声が上がる中、ハパ・クロードは両手を広げて静まる様に合図する。群衆は素直にその指示に従い静かにハパ、クロードの次の言葉を待った。
この群衆全てが仕込まれた者達なのでは無いかと言うぐらいの統率力だが、それ程ハパ・クロードは恐れられ、また同時に尊敬されている様だ。
近い者ほど恐れ、遠い者ほど尊敬している。メウロバルトがハパ・クロードについて言っていた言葉を思い出した。その時は信じていなかったが、今ならその言葉も頷ける。
「メウロバルト船長の船、冒険号をご覧ください!」
その声とともに、冒険号の甲板の上に並べられたかがり火に火が灯された。
「きゃーっ!」
「ひぃい!」
「ま、魔王だ!!」
船に積まれた魔王の半身が炎に照らされ、体の表面のぬめぬめした部分がその揺れる光を鈍く反射するせいでまだ生きている様に見える。
「安心んしてください、魔王は既に死んでいます。しかし、この魔王に沈められた船がたくさんあったと言う過去は消えません。しかし、命を落とした船長や船員たちの妻や子供達の無念な思いは今日、この英雄達によって晴らされたのです!」
「おお・・・私のマリオット・・・」
「ママ、あの人たちがお父さんのかたきをうってくれたの?」
「そうですよ、エミリア」
群衆の中で何人もの女性がその場に膝をつき、残された子供を抱きしめた。暗がりの中で見えるその姿は決して裕福な者ではなく、夫を亡くして日々の生活に困窮する姿であった。
これを狙って居たのか。
俺よりももっと前から気づいていたであろうメウロバルトが小さく舌打ちをする。
報奨金は貰えそうに無いな。




