勇者殿の姉君
俺とロンダが勝ち進んだ事によって木の札は全部で32枚となった。ロンダの試合は破格の倍率、4倍もあった様だ。その事についてロンダは怒りをあらわにしていたが、懲りずに近づいて行ったメウロバルトを数回殴る事で気が済んだ様だ。次の試合に勝てば決勝に残る事になる。そうなれば海の魔王討伐の資格を得るのでその後の決勝に出る意味は無い。
「駄目だ」
ロンダは決勝で俺と戦いたい様だ。
「だが、この剣では……」
俺は光の剣の柄を握った。
「俺が負けると?」
ロンダが俺をにらむ。
「いや、この剣では俺は本気で相手が出来ん」
「なんだと?」
ロンダが歯を剥いた。
「ロンダ殿、勇者殿は大事な姉君でおられるロンダ殿を斬る様な事は出来ないと言っておられるのです!」
アンが口を挟む。
「大切な……姉……本当か?」
俺を見るロンダの目がギラリと光る。
「あ……ああ……勿論だ」
「ワン!」
俺と一緒にピヨールも答える。
「大切か……俺の事が大切か……ならば仕方ない。おいお前、絶対に折れない頑丈な木剣を2本用意しろ。次の試合が終わる迄だぞ」
ロンダがメウロバルトに命令するとメウロバルトは大声で返事をして控え室を出て行った。
試合はするのか。
木剣でロンダと稽古をするのは何年ぶりだろう。確かに面白そうだ。正直、俺は自分で言うのも何だがそうとう強い。強いから勇者を目指したのか、勇者を目指したから強くなったのかはよく分からんがとにかく強い。だがロンダとだけは明確に勝ったという状況になったことが無い。
どっちが強いか勝負するのも悪く無いな。
その為には次の試合に勝たねばならない。試合数が減ってきて試合の間隔も短くなり俺の試合はすぐに始まった。




