表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬勇者  作者: 吉行 ヤマト
76/2394

ロンダと巨漢

 俺の試合が終わり、すぐにロンダの試合となった。ロンダの相手はこういう試合が好きそうな槍を持った巨漢だ。だが大女であるロンダと並ぶと男女の組み合わせとしては丁度良い感じに見えなくもないところが少し面白い。俺がそんな風に思っていると試合開始直前だというのにロンダがこちらを向いて俺を睨んでいる。


 何故分かる。


 俺がいらぬ事を少しでも考えると必ずロンダにばれてしまう。


 試合開始の鐘が鳴った。ロンダの相手は太い槍を構えた。柄の部分も全て鉄か何かの金属で出来ている様で先っぽにおまけ程度の刃が付いている。斬るというよりは叩きつける様な使い方をするのだろう。


 だが動き出した男の槍さばきは目を見張るものがあった。巨体から繰り出されているとは思えない様な鋭い突きと円を描く様な棒術にロンダが防戦一方になっている。


 「勇者殿!」


 アンが心配そうにロンダを見つめている。


 「神よ……」


 アンジェリカとメウロバルトが手を合わせて祈っている。アンジェリカは分かるがメウロバルトが何故祈っているのかと聞いてみると、全財産をロンダに賭けたのだと言う。どうやら試合前の倍率を見て勢いで賭けてしまった様だ。


 「大丈夫だ」


 俺は不安そうにしている3人にそう声をかけた。


 「ワン!」


 ピヨールもそう言っている。


 こういう一方的な展開には2通りあってな、と俺がアンとアンジェリカに話そうとした時、闘技場全体がどっと湧きあがった。


 男が自分の槍を地面に落としたのだ。


 「あれ? 何があったんだ?」


 余所見をしていた俺はその瞬間何があったのか見ていなかった。


 「ロンダの姐御が何かを投げつけていた様な」


 ちゃんと見ていた筈のメウロバルトでも何が起きたかよく分からない様だ。


 「石を投げられました! 私には見えました!」


 アンが大きな声で叫んだ。


 ロンダの石をあの距離でくらうとは可哀想な奴だ。よく見ると両の肩から血が垂れている。恐らくその場所に石が食い込んでいるのだろう。男の槍を片手で軽々と持ち上げたロンダは腕に力が入らず戸惑う男の頭に槍の石突を叩きつけた。


 あ、怒ってるなあれは。


 試合開始とともに槍で小突き回されたのが許せなかった様だ。男は頭を割られてその場で動かなくなった。試合終了の鐘が鳴り、男は引きずられて行った。2試合目を勝ち抜いたロンダの姿を涙を流して喜び迎え入れたのはメウロバルトだ。


 「今は止めておけ」


 と言う俺の忠告を無視してロンダに抱きつこうと駆け寄り殴り飛ばされた。顎の骨が砕けている様だが本人は嬉しそうに笑っている。この男は思っていたより大物なのかも知れない。俺はピヨールを掴んで治してやった。


 「こ、これが!?」


 勇者の力を体験できて良かったな。


 「だ、旦那!」


 メウロバルトが今後は俺に抱きつこうとしてきたのでロンダと同じ場所を殴っておいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ