石造りの納屋
岩山の上の二モスを出たのは昼過ぎ、日が落ちるまでにサンジドーロに着きたいが道は分かってもサンジドーロ迄の距離が分からないので俺達は先を急いだ。
二モスから伸びている道は2本。1本は俺たちがブリカから来た道なので、もう1本の道を進んだ。
だが、これが間違いだった。実は二モスには岩山の断崖沿いにもう1本道がありそちらがサンジドーロへの道だったのだが俺たちがそれに気づいたのは二モスから1時間ほど歩いた場所にある名も無き農村に辿り着いた時だった。
「あんたら、二モスから来たんけ?」
農民らしきおばさんが俺たちに農具の大鎌を向ける。
「そうだ。サンジドーロに向かっている」
アンが答える。
「サンジドーロ? 今更あんなとこに行くって、あんたらやっぱり魔物なんけ?」
「こんな美しい魔物などいないぞ」
ロンダがニヤリと笑う。
「ひぃぃぃ、お助けぇ」
おばさんは大鎌を放り投げて家ではなく納屋の方に逃げていった。家とは異なり大き目の石を積み上げて出来た壁で作られた納屋に避難するのは魔物から身を守るには最適かも知れない。冬や夏の温度差から収穫物を守る為の分厚い壁が魔物から身を守る為の小さな砦となっている。
だが俺たちは魔物では無い。
「我々は王都からやって来た魔物の討伐隊だ。ブリカ、二モスを通ってサンジドーロに向かっている。こちらを進めばサンジドーロに行けるかどうかだけでも聞かせて欲しい」
アンが納屋の扉越しに語りかけると中から声がした。
「かあちゃん! とうばつたいってなに!?」
「魔物を倒してくれるんよ」
「ほんとう!? じゃあ、とおちゃんたすけてくれるん?」
「それは、どうだろね」
「生きていたら助けてやる」
中からの声にロンダが答える。
「とおちゃんたすけて!」
「いいだろう。父ちゃんの名は?」
「ファルコだ。うちの旦那はファルコだよ。本当に助けられるんけ? サンジドーロの道も分からんに」
最もな意見だ。
「サンジドーロに行きたいならこっちで無い。二モスの岩山の裏の道を行かねば着かん」
「岩山の裏に道が?」
アンが聞き返す。
「そうだ」
結局、おばさんは最初に納屋に隠れてから一度も顔を出さなかった。相当、ロンダが怖かったようだ。
「引き返すか」
俺たちは1時間かけて二モスへと戻った。




