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犬勇者  作者: 吉行 ヤマト
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呪われた者達

 ブカリ村に辿り着くと村は既に襲われた後だった。村の家は破壊され残ったと言う男達の姿は無かった。


 「死体が無いな」


 村の真ん中辺りでロンダが俺に言う。


 「ああ、何処かに運ばれたか食われたか、生きたまま連れ去られたか」


 「生きたままなら救えるな」


 「ああ」


 俺とロンダの話をアンは黙って聞いていた。アンジェリカを荷馬車の一団の所に置いて来てから微妙に機嫌が良くなっていて今は俺の後ろについてきている。俺、アン、ロンダと言う配置で村を一周し、二モスへ続くであろう街道を進んだ。


 村を出でしばらく歩くと、街道の横に川が流れている事に気づいた。街道と川は道の先で交差している様で、まあまあの大きさの石橋が架かっている。


 「あの橋を魔物が渡って来たという事か」


 「ワン!」


 俺の言葉に返事をするピヨール。石橋を渡った辺りで何かがうごめいているのが見えた。


 「何でしょうか、あれ?」


 アンもそれに気づいた様だ。


 「魔物なら斬るだけだ、ピヨールがな。今回はピヨールの動きを見て学ぶがいい。俺よりも学ぶところが多いはず。お前は一応騎士で、ピヨールは剣士だからな」


 「はい!」


 アンが大きな声で返事をする。その声に気づいた様で何かがうごめきながら橋を渡って来た。


 「ゆ、勇者殿……申し訳ない……」


 アンが自分の返事が敵に感知された事を知り謝ってきた。


 「気にするな。どちらにせよ斬るだけだ」


 俺は光の剣を抜き、うごめくものに向かって走った。


 「いくぞ、ピヨール!」


 「ワン!」


 石橋を渡って来たのは、やたらと足の多いやつだった。その足を小刻みに動かしながら器用にこちらに向かってくる。全体は薄い赤色でブヨブヨしている様に見える。大きくて太いミミズに足がたくさんあるという感じだが、正面に何でも飲み込みそうな口の様な者があった。歯は無い様だ。


 「ワン!」


 ピヨールが吠えた直後に正面にある口から液体を噴き出してきた。俺が避けると地面にべちゃりと広がり煙となって消えていった。


 「今のには触れるな! 煙も吸い込むなよ!」


 「はい!」


 アンが素直に返事をする。俺は目の前に迫っている大ミミズの横をすり抜けながら向かって左側の足を全て斬り落とした。見た目から足が直ぐに生えて来るかもと軽快した俺は反対側に回り込み、右側の足も斬り落とした。


 大ミミズは街道の横の草むらに飛び込む様に転げ、斬り落とした足からは赤い血を口からはべちゃりとした液体を撒き散らす。


 「とどめだ!!」


 アンが大ミミズの胴体に剣を突き立てる。


 「待てっ!」


 俺はアンを止めた。アンは切っ先を差し込んだ辺りで突くのを止め、引き抜くと俺の所まで戻ってきた。


 「悪いな。だが、あれが気になってな」


 俺が指差す場所で大ミミズの胴体が急激に太くなっていた。蛇が何かを飲み込んだ様に。


 「村人が!?」


 「分からん。だがその可能性が高い」


 アンの質問に俺が答える。


 「腹を開けば分かるだろ」


 俺たちの会話を聞いていたロンダが獲物処理用の小刀を手に、のたうっている大ミミズの腹を一文字に掻っ捌いた。内臓を一切傷つけず皮と肉だけを切り裂く見事な腕前だ。その切り裂かれた場所からドサドサと男達が転げ落ちてきた。大ミミズの血とべちゃりとした液体にまみれているが見たところ怪我は無い様だ。


 大ミミズのべちゃりとした液体に触れるのはまずそうなので細めの丸太を使って近くの川まで転がして体を洗った。


 「生きているが、何かの毒にやられているな」


 全身が麻痺しているのか目を開き口を開けたままの怯えた顔で男達は固まっていた。俺はピヨールを掴んで男達の顔の上に置いてみる。


 「クゥーン」


 ピヨールが困った様に鳴いた。あの男と同じで治せない様だ。


 「呪いかもな」


 ロンダが男達を小刀で突きながらつぶやいた。

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