マリンガはうまい
屋敷の前に着くと馬車と馬が並んでいた。武器と鎧を着た者と使用人の様な者がそれぞれの馬車に乗り込んだり、馬に乗ったりしている。
「マリンガ、どうした?」
屋敷の門番らしき男がそう尋ねて来た。レバドンが目の前にいるのにその後ろのマリンガにわざわざ声をかけて来たのを見ると、マリンガに多少の気がある様だ。
「この馬車や兵士は、東への調査隊ですか?」
マリンガが門番に聞き返しながら、きっちり微笑んだ。
「そうだ。まあ、本格的な調査の前の下調べだと言う話だがな。急に決まったらしくて一昨日の夜から屋敷は大忙しだ。こう出入りが激しいと門番なんてやってても意味がない。見た事のないやるらが次々と呼ばれたとか、荷物だと言ってやって来るんだからな。まあ、俺は長いから、怪しい奴かどうか何て見ただけで分かるがな」
マリンガの笑顔に悪い気がしない門番はペラペラと知っている事を吐き出した。
「流石ですね」
マリンガは敢えて相手の質問を待った。
「で、お前らは何の用だ?」
「あ、そうだ。このピヨールは東から来たそうです。東の城の様子を見たらしいので連れて来ました」
と言って俺を紹介した。
「東から? 本当か?」
門番の男が俺を睨む。マリンガの前で精一杯強がっているという感じだ。
「ああ、本当だ」
「どんな情報があるんだ?」
「見て来た情報だけだが、誰に言えば良い?」
「俺に言え」
門番がそう言うとマリンガがその門番の腕に軽く触れる。
「ハトリ様に直接、話をさせて下さい。ここじゃ、誰が聞いているか分からないので」
門番を見上げてそう訴えるマリンガ。
このマリンガは男を操るのがうまいな。いや、この門番が女に弱いだけなのかも知れないが。
「わ、分かった。取り敢えず、ジョカ様に聞いてみるから、ここで待っていろ」
「ありがとうございます」
マリンガは門番に頭を下げた。そして屋敷に向かって走り出した門番を見送った後、振り返って微笑む。
「あいつ、いつも優しいんだ」
「あ、ああ」
俺とレバドンとアバギは、苦笑いしながらそう返事をした。




