まだまだ遠い
暗闇に包まれたその場所は暑くも寒くもない不思議な空間だった。その場所にテバレを連れて行った俺は、真っ暗で何も見えないはずの空間に浮かぶ光に驚いた。
「何だ!? これは???」
思わずそう叫ぶ。その声が空間に響き渡ると、その声に反応したかのように光が揺らいだ。
「すごい!! すごいぞ!!!」
テバレも叫ぶ。そしてその声で再び光が揺らぐ。青に見える光が徐々に緑や黄色に変わる。その揺らぎが波となって広がって行くのだ。
夜空のように輝く空間。それは上も下も左も右も前も後ろも全てに広がっている。
「こんなに石が影響されているということは、かなり近づいたと言えるのかも知れないが、この場所が暑くないということは逆にルベェートの洞窟にはまだまだ遠いということだな」
なるほど。確かにそうだ。
「これ以上近づくのは危険なのではないか?」
「そうだな。だが、行かずにはおれんだろう? その存在がこれ程までに示されているのに」
確かにこの空洞自体がその洞窟の存在を指し示していると言えるだろう。それ程にこの空洞は見事なものだった、
「では、更に掘るで良いんだな?」
「もちろんだ!!」
テバレは興奮して俺にしがみついて来た。本人は興奮して分かっていないようだが、少し恐れを感じているのだろう。その恐れがどこから来ているのかは俺には分からないが。
俺はこの空洞に辿り着いた穴の真下から穴掘りを再開した。




