100年かかっても
テバレの話によると、この石の光はかつて存在した文明の技術で作られたものだが、それ自体では無く、それに長い間触れる事により影響を受けたものだと言う。
「本物であれば光は消えない。それどころか太陽の様に輝き、熱く燃えるらしい」
テバレは嬉しそうにそう語る。
「燃えるって、危なくないのか?」
「危ないに決まっている。これを作った文明はそれで滅んだらしいからな。神罰とも魔の厄災とも言われているが」
危ないのか。
「それが、ここの地下にあるのか?」
「多分な。ルベェートの洞窟と呼ばれる場所だ。そこはその文明の名残りがある筈だ」
「筈?」
「そうだ。見つけてみないと何もわからん」
「それを1人でやって来たのか?」
「そうだ。誰も信じない。この光が見えないから」
見えてしまう者の苦しみ、見えたからこその希望、テバレの顔にはそんな複雑な感情が浮かんでいるように見えた。
「一応、聞くが」
「何だ?」
「どうしても、自分で掘り当てたいか? その洞窟を」
「そうだな。そうしたい」
まあ、そうだろうな。自分で見つける方が良いよな。
「だが、今のやり方では恐らく見つけられない。そんな事は分かっている」
テバレは小さくため息をついた。
「町の真下を大々的に掘る訳にもいかず、こっそりこうやって石を少しずつ持ち帰る毎日、あと100年かかっても、そんなに掘れはしない」
自分のやっている事が愚かな事だと理解していても、やらずにはいられない。テバレはそれ程、その文明に焦がれているようだ。
「体は鍛えているが、そんなに深くも潜れないだろうしな」
穴を掘るだけでなく、鍛えてもいるのか。確かに細いが良い筋肉だ。
「俺なら多分、もっと掘れるが、掘っても良いか?」
俺は現実を前に覇気を失ったテバレにそう問いかけた。




