地底
「男は馬鹿か? と言うと怒り出すのだが」
テバレが俺を見上げる。その目は鋭く睨んでいるように見えるが、実際にはただ俺を見ているだけなのだろう。
「怒らなかった男は本当に馬鹿な奴だけだった」
そう言いながらテバレは立ち上がる。そして手に持った石を俺に見せて来た。それは暗闇の中で淡く滲むように光っていた。
「青? いや、緑や黄色にも見える。不思議な光だ」
俺がそう言うとテバレは目を見開いた。
「見えるのか!? これが???」
「見える? この石から出ている淡い光の事か?」
「そうだ! これは誰にでも見えるものでは無い!!」
「そうなのか?」
俺はそんなに目は良くないが。いや、違うか。ロンダと比べたら良くはないが、その他の者達と比べるとかなり良いのかも知れない。
「弱い光だからな。それに削り出したり、日光に当たるとすぐに消える」
「それで部屋を暗くしているのか?」
「そうだ。ここを地底にしたい」
「地底?」
「この石があった場所、ルベェートと同じ地底に」
「それは洞窟か?」
「そうだ。この町の下にある」
「ほう、面白そうだな」
「ふっ、地底が面白い? やっぱりお前は変な奴だ」
テバレが少し笑ったように見えた。




