カーテンを開けるな
促されるままに俺はテバレの部屋に入った。
いない?
部屋の中は薄暗く、分厚いカーテンの隙間から差し込む光でかろうじて様子が分かる程度だった。部屋には何だかよく分からない物が積み上げられていて、それらに押しやられる様に隅の方にベッドがあった。
寝ているのか?
ベッドの上には盛り上がった布団があり、俺はそこにテバレがいるのかと近づいてみたが、それはただ布団が丸められているだけだった。
あれ? やっぱり、いないのか?
暗くてよく分からないのでカーテンを開いて明るくしようと窓に近づく。
「カーテンを開けるな」
背後から声がする。振り返ると積み上げられた物の中にテバレがいた。
「いたのか」
「私の部屋だ」
「まあ、そうだが」
「何の用だ?」
「用?」
何の用かと聞かれても、俺には何の用もない。
「ピエトパオ侯はいつもあんな感じなのか?」
「そうだ」
「婚姻がまたかと言っていたが何度目だ?」
「5回以上は数えていない」
「で、そこで何をしているんだ?」
「削っている」
「削る? 何を?」
「石だ」
石?
「削ってどうするんだ?」
「中にある物を取り出す」
中にある物?
「何があるんだ?」
「ふん、何も知らないんだな」
「え? ああ、まあ、そうだな。何も知らないな」
「馬鹿なのか?」
「確かに。賢くは無いな。教えてくれるか?」
「お前、変わってるな」
テバレがこちらを振り返った。




