またですか
「お父様、なんの御用でしょう?」
ピエトパオ侯と俺がいる食堂に入って来た女性。背が高く、日焼けした肌が特徴的な女性だった。顔の雰囲気はピエトパオ侯とは異なり目鼻立ちがあっさりしており、異国の女性という感じだ。
「お前の夫だ」
ピエトパオ侯が俺をそう紹介した。するとテバレは俺を見てから軽くため息を吐いて視線を逸らす。
「またですか」
「何だ? ピヨールが気に入らんのか?」
ピエトパオ侯の言葉にもう一度俺を見つめるテバレ。一重のスッキリした瞳が印象的なその顔には、何かを諦めているような冷めた印象を受けた。
「貴族の御曹司という訳ではなさそうですが、つまりお父様が認められた才能があるということですね。ですが、私はつまらない男とは一緒にはなりません」
テバレはそう言い残して食堂を出て行った。
「どうだ? 面白い娘だろう?」
ピエトパオ侯は満面の笑みで俺にそう言った。
「そ、そうだな」
返事に困った俺だが、相手が嫌がっているならこの話は無しだと安心した。
「だが、娘は俺が嫌な様だ。婚姻は無しで良いな?」
俺がそう言うとピエトパオ侯は首を傾げた。
「いや、もう婚姻は決定だ。後はお前達が仲良くなれば良いだけだぞ?」
何を言っている?
「仲良く?」
「そうだ。テバレはいつも部屋に篭っている。だから部屋に行って来い」
ピエトパオ侯はそう言った後、屋敷の者を呼び出し、俺をテバレの部屋まで案内させた。
「この部屋に入れと?」
「左様でございます」
「いや、勝手に入るのはまずいだろう?」
「いえ、ピヨール様はテバレ様と結婚されましたので、問題ございません」
おいおい、この屋敷の奴等は全員やばいな。




