2009/2413
森が消えた
「消す? 森を?」
ピエトパオ侯が眉を寄せ怪訝な表情で尋ねてきた。
「そうだ。こんな感じだ」
俺は塔の上から森の入口に向かって影を広げた。
「おぅおお!!???」
ピエトパオ侯や騎士達が声をあげて驚く。ルシモドとゴメリは驚かないが、やはり少し怯えているように見える。
「これは影だ。この中に森を沈める」
ズヌ
俺は入口となる岩の周りの森を影に沈めた。そして影を戻す。
「な、んだ、それ!?」
ピエトパオ侯が言葉を忘れた者のようにゆっくりと声を漏らす。
ガシャシャン
その背後で騎士達が驚きで尻餅をつくように倒れ込む。
「森が消えただろう?」
俺がそう尋ねるとピエトパオ侯は無言で何度も頷いた。そして呆然と目の前で消えた森の跡を眺めている。
「もう一度、頼む」
少し落ち着いたピエトパオ侯はそう俺に頼んできた。
「分かった。もう少し広く消すぞ」
「広く??」
「ああ、影はまだ広げられるからな」
俺はそう告げてから一気に影を広げた。




