赤い玉
「森へはその岩から入る」
ピエトパオ侯が指差す方向に俺は装置を向ける。そこには大きな岩があった。
他からだと駄目なのか?
「あそこから入らんと迷うのだ」
迷う? 確かに森は深いが迷うほどでもなさそうだが。
「ただの岩に見えるが、あの岩には仕掛けがあってな」
ピエトパオ侯は嬉しそうに説明を始めた。
「これを見てみよ」
懐から取り出した球体。網状の金属で出来たその球体の中に赤い玉が入っていた。
球体の中に赤い玉? 玉が動いているが?
中にある赤い玉はプルプルと震えながら揺れている。
「この玉は常にあの岩のある場所を教えてくれるのだ」
ピエトパオ侯の言う通り、赤い玉は岩の方角に張り付いて揺れている。
「面白い仕組みだ」
「そうだろう!!」
この赤い球と球体も名前があったらしいが、赤い玉と呼ばれているらしい。これは騎士達は皆持っているようだが、呼び名は赤い玉や、玉だと言う。
名前を覚えるのが嫌なのか。
本当の名前が相当覚えにくい名前なのだろうという事にして俺は名前については気にしないことにした。
「ひとつ聞きたいのだが、その辺りの森は残しておきたい森か? 何か言われがあるとか、神聖な場所だとか? そう言ったものはあるか?」
俺がそう尋ねると、ピエトパオ侯は少し考えてから答えた。
「いや、何もない。逆に邪魔なぐらいだ」
「そうか。ならば、消しても問題ないな」
俺の言葉にピエトパオ侯や騎士達が首を傾げた。
次回投稿は、4/1(月)の予定です。




