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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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997 女神さま

 うぷ。さすがに三杯は食い過ぎた。苦しぃ~。


 でも、旨かったので後悔はない。夜も食うぞ!


 ぽっこり膨れた腹を擦りながら強く決意した。まあ、それほどのこともないんだけどね……。


 タバコを吸えたらプカ~と一服してるところだが、タバコは二十歳になってから。吸わない人に迷惑をかけないように吸いましょう──じゃなくて、この余韻を楽しむためのものが欲しいぜ。


 腹一杯の状態ではコーヒーも入らない。なんかねーもんかね?


「ベー様、アイスなんていかがですか? 食後には最適ですよ」


 あなたらには別腹がおありでしょうが、オレにそんな便利なものはないのです。お心遣いだけで結構です。食べたいなら勝手に食べなさい。


「はい。では遠慮なく」


 この万能メイドに遠慮なんてあったっけ? とか考えながら、自分の無限鞄からバーゲンなやつを出して美味しそうに食べるミタさんを眺めた。


 ……なんとも旨そうに食うこと……。


 食後にアイスって意識はないので、食いたいとは思わないが、客が来たときに出すのもイイかもな。ココノ屋に行ったときアイスも一緒に買うか。


 膨れた腹を擦りながらボーとしてたら、奴隷商の一人が立ち上がり、厨房にいるミラジュさんの嫁さんに声をかけた。


「ゴジルスープを鍋でもらえるか?」


 ナヌ。鍋でだと? 買い占めかこの野郎! それは許さんぞ。


 と言いたいが、腹が一杯で口が開かない。あ、ミタさんのやりとりは目で語りましたから。


「はい。大丈夫ですよ。簡単にできますから。パンはどうしますか?」


 お。簡単にできるんだ。なら後でも大丈夫そうだな。なら、お先にどうぞ。


「簡単ならばうちの鍋で作ってくれ。奴隷どもに出すので具は少なくても構わない。銅貨五枚分で頼む」


 奴隷の移動に鍋まで積んでんだ。堅いパンと水を与えてるのかと思ってたぜ。


「銅貨五枚だとこの鍋二つ分になります」


 こっからは鍋が見えないのでわからないが、随分と安いな。だいたいこの器で野菜が三種類くらい入った塩味のスープだと、小銅貨二枚が相場だろう。


 この五種類の野菜に肉が入ったけんちん汁では銅貨一枚取っても文句は言われないだろう。この旨さなら銀貨一枚だと言われてもオレは食うね! それだけの価値がこれにはあるぜ。


「ず、随分と安いんだな!?」


 オレの推測に間違いはないようで、奴隷商の男どもが驚いていた。


「ええ。この村では野菜も肉も簡単に手に入りますし、簡単な料理ですからね」


 野菜と肉の出所がうちならその値段にも納得か。保存庫は時間停止にしてるので沢山溜め込めるからな。


「……相変わらずこの村はふざけている……」 


 うん、まあ、そうだね。ふざけたヤツ、いっぱいるし。


 おい、その筆頭! とか聞こえたような気がするが、気のせいだろう。オレ、真面目に生きてるし。


「ふふ。そうですね。わたしもこの村に来てそう思いましたよ。王都より快適な田舎とか意味わかりません」


 なぜオレを見て言うのだろう、ミラジュさんの嫁さんは? 田舎は不便だよ。不便だから田舎なんだよ。


 まあ、田舎暮らしをエンジョイしてるならオレがどうこう言う資格はねー。カントリーライフを楽しんでくださいませ。


 男が鍋を取りに食堂から出て行き、しばらくしてラーメン屋で使われそうな大鍋を一つ持って戻って来た。


 ……あんなにデカいと作るの大変なんじゃね……?


「これだといくらになる?」


「銅貨五枚でいいですけど、こんなに大きいと持って帰るの大変じゃありません?」


「二人で運べば問題ないさ。商売柄力はあるんでな」


 そりゃ、重犯罪者を扱うんだし、魔物も相手にしなくちゃあかん。腕っぷしが強くなくちゃやってられんでしょうよ。


「お前ら、食ったら交代な」

 

 リーダーらしき男の指示に「了解」と素直に従う男たち。統率が取れた奴隷商だこと。


 ちょっと腹が落ち着いて来たのでコーヒーを出して一服する。あ、今ならアイス食えそうだ。


 どうしようかなと悩んでいると、奴隷商の交代組がやって来た。


「女将、同じものを頼む。酒は軽いものを出してくれ」


 前の組とこの組は役割が違うのかな? まあ、追及するほど興味はないので流すがよ。


「お、こりゃウメー! こんなウメーもん、初めてだぜ」


「だな。パンも柔らけーし」


 ん? 役割じゃなくて格が違うのかな? 前の組はそんなに騒がなかったし、強い酒も注文してたしよ。


 なんとはなしに奴隷商たちの会話を聞いていると、なんかお洒落した姉御がやって来た。どったの!?


「あら、ベー。久しぶりね」


 椅子から立ち上がり、四十五度のお辞儀をする。


「チーッス! ご無沙汰しております!」


「止めなさい!」


 なぜか持っていたフランスパンみたいなもので殴られた。


「ったく。どれだけわたしを恐怖の存在にしたいのよ」


 とんでもございやせん。姉御は宇宙一優しい女性でございやす。よっ、ボブラ村の女神さまっ!


「ミタさん。姉御にお紅茶を。ささっ、姉御。こちらにどうぞ」


 クッションを出して椅子に置き、姉御にお座りいただいた。ミタさん、お菓子も忘れずにね!


「だから止めなさいって言ってるでしょう! 普通にしないと怒るわよ」


 イエス! マイ姉御!


「で、どったのよ、そんなお洒落して? 逢い引きか?」


 そんな勇敢な男がいるんなら兄貴と呼ばしてくれ。全身全霊をかけて媚を売るからよ。


「……まったく、見ない間にさらに傍若無人に磨きがかかってるんだから……」


 失敬な。オレは品行方正な村人です。

 

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