979 人形
なにこれ? なんなのこれ? どうなってんのよ? 誰か説明してよ? これはどんな状況になってんのよ~~!?
「オレはどこの不思議の世界に迷い込んだんだよ!」
って言うか、ホラーハウスに来た感じか? メチャ怖いんですけど!
「ほんと、なんだって言うんだよ! 悪夢でも見てんのか、オレは?」
なぜかオレを見詰めるように置かれたリアルな人形の数々。四方をリアルな人形に囲まれるとか、幽霊に慣れてなかったらおしっこじゃじゃ漏れだわ。
「なにドールって言ったっけ、これ? 関節人形? あれ? 西洋人形だっけか?」
まったく興味のないもので、テレビのニュースで観ただけの知識しかない。なんで、これがそれと同じかはわからんが、リアルな作りをしているのは同じ……だと思う。
「……人の趣味嗜好はそれぞれとは言え、よくわからん物を作るヤツがこの世界にもいたんだな……」
人形好きとかのレベルじゃねーだろう。つーか、これを愛でるのか? 飾って眺めるのか? マジで意味わかんねーわ。
「ってか、どうなってんだよ? ドレミ、なんなんだ、これは?」
オレが眠っている間になにが起こったんだよ。
「プリッシュ様がこの建物で発見して、ここに運ぶよう命じられました」
君の中でプリッつあんはどんな存在なのよ? いやまあ、ドレミがイイのなら構わんけどさ……。
「つーか、これはなんの包囲陣だよ? それともなにかの儀式か?」
オレを呪ってのことなら無意味だぞ。もうレイコさんに呪われているようなものだからな!
「……わたし、清く正しい幽霊ですからね……」
なんだよ、清く正しい幽霊って? イイ幽霊は成仏した幽霊だけだ。
「なんでもイイが、これ、呪われた人形じゃないよな?」
幽霊博士。鑑定してください。
「ただの人形ですよ。ただ、自動人形かもしれませんね」
自動人形? って、動くってことか?
「何百年か前に自動人形が流行った時代があったんです。愛玩具として」
「これをか? 不気味なだけだろう」
「時代時代で趣味嗜好は違いますし、美醜にも違いが出て来ます。最高級の人形は一体で城が買えたとか言われてましたよ」
流行りってのはよくわからんな。
「でも、自動で動くほど高度なものなのか? 結構華奢じゃね?」
材質がなんなのかわからんが、そんな丈夫な感じじゃねーぞ。木か? 陶器か? なんだこれは?
「魔力で強度を高めますし、魔術で動かしますから。けど丈夫ですよ。まあ、複雑な動きはできませんけど」
あくまでも愛玩遊具、って感じか? まあ、遊ぶくらいなら単純な動きでも子どもには喜ばれると思うがよ。
「にしても、こんなに集めてどうしようって言うんだ?」
人形が着ている服でも回収すんのか?
「ん? 人形が身につけてる指輪や装飾品って本物なのか?」
ガラス製品でも今の時代なら高価なものだが、本物の宝石ならその数倍はするだろう。
「本物ですね。水色のクランなんて初めて見ましたよ」
クラン? トパーズのことか? オレも初めて見るな。
人形の指から紫と白の石がついた指輪を外し、錬金の指輪で解体してみる。
「……ここで創り出されたものじゃねーな……」
まあ、証明できるほどの証拠はないのだが、土魔法の反応がいつもの感じがするのだ。ここで創り出したものは、土魔法が微妙に鈍くなるのだ。
「まあ、宝石を創造するってのも難しいだろうからな」
見たこともないもの、知らないものは創造できない。まず、創造するには知識と想像力が不可欠。設定か神の介入か、えげつないところなのは間違いねー。
ここは、決して都合のイイ場所ではない。前世の記憶と知識がなければ宝の持ち腐れだ。
「ホー! ホケキョ!」
ん? ミミッチーの鳴き声? どっからだ?
四方をリアル人形に囲まれている割りには、鳴き声の響きが小さいな? なんかに阻害されてる感じだな?
「ってか、完全に閉じ込められてるよな、これ」
わざとだったら覚えてろよ。
「ミミッチー! どこだ!」
「ここ! なんか箱の山に囲まれてる! 助けて!」
オレが言うのもなんだが、囲まれる前に気がつけよ! お前の野性が心配でならんよ!
リアル人形を無限鞄に放り込み、声がするほうに道を作っていく。
「クローゼット? こんなものまで運んで来てんのかよ!」
リアル人形の中からクローゼットと言った家具が現れ、それも無限鞄に放り込む。
「おもしろいものは確保しろとは言ったが、集め過ぎだわ!」
家具が消えたら今度は服の壁が現れた。たぶん、ドレミ団を使ってるんだろうが、少しは自重しやがれってんだ! こんなに集めてどうすんだよ!
なんとかしてミミッチーと合流。だが、ミミッチーが言ったように箱が天井まで積まれており、心を折るには充分な状況だった。
「……一旦、落ち着くか……」
慌てず騒がす、まずは冷静になろう。それに、腹が減った。万全の体調と健やかな精神を復活させよう。
料理を出して腹を満たすことにした。




