967 新しい家
「うん。美味しかった」
食いも食って百四十七個。なんか微妙やな~。
その体格から言って大食漢なのはわかるし、胃が丈夫なのもわかった。だが、百四十七個は微妙やろ。大食いでもそれくらいは行けんだろう。いや、無理か?
一個で充分なオレにはわからん世界だわ。
「満足したのか?」
「うん。満足。久しぶりに美味しいの食べた」
美食な梟なのか?
「んじゃ、引き継ぎをしろや」
カーレント嬢の笑顔が六割ほど消失してるからな。まあ、それでも笑顔を崩さない根性には頭が下がるぜ。
「わかった」
ススッと動き出すと、最初にいたドーム状の建物に入った。寝るのか?
「こっち。まず、住み処を案内する」
「住み処?」
首を傾げてカーレント嬢を見ると、困り笑顔と美味しい高度な芸当を見せた。
「この空間は、創成の間と言って、クリエイトマスターは、この下に部屋があるそうです」
「クリエイト、ね」
なんとなく見えて来たわ。
「ベー様はクリエイトの意味がわかるのですか?」
「正しい意味は忘れたが、創造とか創成とか言った意味だったと思う。漫画や物を書くヤツはクリエイターとか言うから、カーレント嬢にはふさわしいかもな。詳しくはあいつに訊け。ある意味、あいつもクリエイトマスターだからな」
ダンジョン製作を放棄したようなヤツだ。ダンジョンマスターよりクリエイトマスターのほうが似合ってんだろう。
「ちょっと興味が出て来た。カーレント嬢、いくぞ」
ミミッチーの後を追って、ドーム状の建物に入った。
ここで寝ている訳じゃなく、どうやら下へと続く通路のようだ。
螺旋状になっているのか、右回りな感じで下へと向かっていた。
下りること数百メートル。意外と深いなと思ってたら、突然、外に出た。
「いや、人工の空か」
広さは野球場ほどで、ここもドーム状になっているようだ。
「こっち」
ミミッチーが中心部にいて、翼でオレたちを招いている。この梟も器用な動きをするよな。
「ここは、ミニクリエイトルーム。新しいマスターの住み処。好きにクリエイトして」
どう言う意味でしょうかとオレを見るカーレント嬢。いや、見る相手が違うわ。
「もう、カーレント嬢に権限は移ったってことか?」
「うん。ミミッチーが受け継いだ力強いを新しいマスターに渡した」
「なにを渡されたんだ?」
「これです」
と、手の甲を出すカーレント嬢。オレには見えない紋章でも刻まれたのか?
「あ、指輪をいただきました」
指輪? あ、ああ。してるな。なんか飛行石っぽいものが嵌め込まれた指輪を……。
「ミミッチー。これがクリエイトマスターの証しで、この空間を自由にできるってことか?」
「そんな感じ」
なるほど。そう言うことか。
「ベー。あの説明でわかったのか? おれにはまったくわからんのだが?」
まあ、これは前世の記憶があり、箱庭を知っているから理解できたようなもの。なかったら暴れているところだわ。
「口で説明するよりやってみたほうが早いだろう。カーレント嬢。まずは椅子を思い浮かべて、出ろと念じてみろ」
「椅子ですか? やってみます」
エリナと付き合いがあるなら、なにもないところから物を出すところを見ているはずだ。それなら想像して創造できるはずだ。
「……椅子よ、出ろ!」
と、さっき上で使っていた椅子と同じものが現れた。
「ど、どう言うことだ!?」
「つまり、この空間内ではカーレント嬢は神も同然。どんなものでも創造できて、目の前に出せるってことだ。まあ、どこまで創造できるかは知らんがよ」
すべてを創造できる、ってことはねーはずだ。そんなこと、この世界の神(?)が許すはずがねー。許したらオレたちの能力に介入なんてしねーよ。あのカイナですら介入された感じがあるからな。
「……滅茶苦茶にもほどがあるだろうがよ……」
「だな。ここならなんでも創造し放題。食料でも金でもな」
オレの言葉で滅茶苦茶度がさらに上がり、まるで心臓を握られたかのように苦しそうな顔になった。
「ここは奥の手。どうしようもなくなったら利用するつもりでいれはイイんだよ。それまでは表の力で乗りきればイイのさ」
あるからと言って無理矢理使う必要もねー。それは無駄遣い。賢い領主なら賢く使え、だ。
「お前の欲のなさが羨ましいよ」
「オレの鞄には大き過ぎるだけさ」
とかなんとか言っちゃって~。まさかそんな一度は言ってみたいセリフを口にするとは。なんかメッチャ恥ずかしぃ~!
「カーレント嬢。いろいろやってみろ。今日からここがカーレント嬢の新しい家になんだからよ」
「はい。よい家にします!」
おう。ガンバレや。
お友達とどんな家にするか楽しく相談しているのを見てると、オレも自分の住み処を整えたくなって来たぜ。しばらく活動を休みにしてオレも新しい家を整えるか。フフ。楽しみだぜ。




