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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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 叫んだら幾分か気持ちが安らいだ。


 まったく、これほどストレスが溜まったのなんて今世じゃ初めてだぜ。


 やっぱ、ちょくちょく発散させねーと前世みてーに腐っちまうぜ。気をつけろよ、オレ。


「……あ、あの、ベーさま……?」


「あ、ああ。何度もワリーな。あんたの存在を受け止めんのにオレのなにかが抵抗しててよ、感情が制御できなかったんだよ。だが、なんとか受け止めたから大丈夫だ」


 そうだ。目の前に真実があるんだ、抵抗しても無駄なこと。さっさと受け入れて楽になれ、だ。


「このような醜い姿で現れたこと、深く謝罪致します」


「いや、イイよ、謝らなくても。別に姿がどうこうとか、種族がどうこう言ってる訳じゃねーからよ。ただ、しゃべるスライムとか初めて見たからな、びっくりしちまっただけさ」


 初見で素直に受け入れたヤツをオレは正気と認めねーぞ。


「そうでしたか。確かにわたしは下等なスライム。しゃべりもすれば驚いて当然でした」


 いや、あんたを下等にしたら人間なんてミジンコ以下だよ。


「では──」


 と言うと、ゲル状の体が蠢き、人型へとチェンジした。


「人型になれんのかよっ!」


 つうか人化だよ、もはや。燕尾服に蝶ネクタイって執事じゃねーか。あ、いや、執事だったっけ。ぐおーっ! なんか納得できねー!


「はい。ですが、どうもこの形は不便でして。お見苦しいところがあればご容赦を」


 ま、まあ、人間だってスライムにチェンジしたら動き辛いだろうし、せっかく人化してくれたんだから多少のことには目を瞑るよ。


「しかし、スライムってなんでもありだな。そんな進化ができるって知らんかったよ」


 そんなこと、魔物図鑑にも載ってなかったぞ。


「いえ、わたしの場合は、マスターの力によるものです」


 あ、そー言やぁ、マスターとか出てきたっけな。イン子のことですっかり忘れてたよ。


「まあ、そのことはイイや。話を進めようぜ」


 気分が安らいだとは言え、まだショックが抜けきれてねー。今はマスターなるものまで面倒みきれねーよ。


「単刀直入に申します。バリアルとチャーニーを解放してください」


「……………」


 オレはなにも答えず、黙ってスライム──バンベルを見る。


「もちろん、非はこちらにあります。無茶を言ってるのも理解しております。お詫びはいかようにも致します。どうか解放をお願い致します」


「……………」


 頭を下げるバンベル。だが、オレはなにも言わない。だって、本当に無茶言ってんだもん、こいつ。


 だがまあ、このまま黙りしててもただ時間を消費するだけ。なんの解決にもならねーしな。


「なあ、バンベルさんよ。それが問題解決に繋がってると、本当に思ってんのか?」


 だったら本当にあんたは下等なイキモンになるぞ。


「いいえ。まったく思っていません。ただ、いきなり物で謝罪するより誠意を見せたくて頭を下げました。ご不快に感じたら更に謝罪致します」


「わかってんならイイよ。誠意は受け取った」


 ほんと、スライムを超越してんな、こいつは。どう進化すればこうなんだ?


「感謝を」


 まったくもって誠心誠意を感じさせる見事な謝罪である。


「まあ、誠意は受け取ったが、あいつらはオレを殺そうとしたし、うちの弟にも同じことをした。それを許さねーとは言わねぇ。こんな世界だ、生きるため、食うため、己のため、生き物を殺すことが当たり前だ。それをやってるオレにあんたを責める資格はねーからな。だが、それが当たり前だからこそ、あいつらの命はオレのだ。オレが手に入れたものだ。それを返せとは筋が違うだろうがよ」


 それが弱肉強食。これが現世。明日は我が身だからこそ、命の価値は高いのだ。前世で読んだ本に、『命を軽く見る者の命は軽い』とあった。この世界に生まれて確かにと実感する。


 だからオレは命を大切にする。どんなゲス野郎でも無駄に命は奪ったりはしねー。必ず有効利用ができねーかを考える。オトンを殺したオークの群れでさえ、ちゃんと有効利用した。その命に感謝をした。


 ここでバンベルに二人(?)を返すのは簡単だし、別にただで返したところで懐は痛まねぇ。なんの不利にもならねーからな。


「返して欲しけりゃ対価を出しな。それであんたの本心が見えるってもんだ」


 まあ、本心と言うよりは思惑だがな。


「……正直、あなたを見るまでは金貨や魔道具を用意すればと、軽く見ていました。ですが、あなたと対峙して、あなたと話をして、わからなくなりました。あなたは金や物では動きそうもない。ましてや脅しに屈する方ではない」


 スライムなのに良く人を見てんな、こいつは。


「だから、借りを作らせてください。あなたが我々を必要と思われるとき、その借りを払わして頂きたい」


 そーきたか。ほんと、スライムかよ、こいつはよ。


「わかった。それでイイよ」


 その言葉にバンベルがちょっと驚いた顔になる。器用だな、お前さんは。


「不思議かい?」


「はい。正直言って」


「だろうな。だがまあ、簡単に言えばあんたが気に入ったってことだ」


 まあ、いろいろ突っ込みてー存在ではあるが、おもしろい存在でもある。オレの今世の経験上、そんなヤツと友達になっておくと吉になる。


「わたしがスライムでも、ですか?」


「ああ。スライムでも、だ」


 友達に姿形、身分なんて関係ねー。気に入ったか気に入らねーかだ。

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