825 オシャレ統括本部長
「いきなりどうしたんだい?」
瞼を開かない公爵どのに問う。
「お前が考えている通りだ」
つまり、奥さんに実力を見せろ、ってことと解釈するぜ。
まあ、話には聞いているとは言え、どこともわからない自称村人。胡散臭いにもほどがあるわな。
「まあ、オレはどっちでもイイよ。公爵どのとするか公爵領とするかの違いだしよ」
メンドクセーことはそっち任せだしな。
「……わかりました。公爵領として交渉します」
奥さんも了承したので、交渉と行きますか。
「公爵領で木の価格ってのは決まってんのかい? あ、口調は勘弁してくれ。こっちは田舎の村人なんでよ」
貴族の奥さまには耳障りなことだろうが、由緒正しき村人にはこれが当たり前なんでな。
「気をつけろよ。ベーは、その気になれば貴族の言葉すら使いこなすし、貴族の振る舞いもできるからな。表面だけ見てたら足下を掬われるぞ」
任せたなら黙ってろよ。やりずれーわ。
「えーと、だ。オレは木が欲しい訳だが、その代価に真珠に代わるものでどうだい?」
「真珠に代わるものですか?」
「ああ。これさ」
無限鞄から涙型のコガードを一つ取り出し、テーブルの上に置いた。
「見たことあるかい?」
奥さんの方に押し出す。
「……初めて見るものですね……」
テーブルに置かれたコガードをじっと見詰めたかと思うと、急に立ち上がり、重厚な机と向かった。
なんぞや? と見てると、引き出しを開け、中から白い手袋とルーペを取り出してきた。
「手に触れてもよろしいかしら?」
「構わんよ。見本に作ったものだから傷をつけようが、砕こうがお好きにどうぞ。つーか、やるよ」
初めて見るもの。どう言うものか知るためにはいろいろ確かめたいだろうしな。
「よろしいので?」
「真珠のときだってお試しに何十個か渡したしな。それの価値がわかってもらえるなら安いものさ」
大した労力もかけず、タダで手に入れたもの。そこら辺に落ちてる石を渡す程度の損失でしかねーよ。
「カティーヌ。遠慮なくもらっておけ。で、なにが欲しいんだ?」
わかってんなら最初から公爵どのがやれよな。
「帝国で使える金をくれ。カムラの商人が思いの外来て、金貨が足りなくなってな、帝国の金貨を潰して金板にしちまったんだよ」
時間があれば金鉱山にいきたかったんだが、なかなかいけなくて、しょうがなく帝国の金に手を出しちまったのだ。
「五千ラグもあればいいか?」
「……五千ラグ、って言うと、金貨五十枚くらいだっけか?」
さすがに帝国の金とうちの金の換金差までは熟知してねーよ。
「ん~。まあ、そのくらいじゃねーか?」
公爵どのも熟知してねーようだ。
「それだけあれば足りんだろう。足りなきゃなんか売るさ」
こんだけデカい街なら市とかあるだろうし、オシャレアイテムなら売れんだろう。うちの国より発展してるとは言え、庶民の暮らしにそう差はねーだろうからな。
「なら、おれのサイフからやるよ。公爵領の金とは別にしてるからよ」
前にくれてやった収納サイフから五千ラグ入ったと思われる革袋を三つ、取り出した。
「意外とあるんだな」
帝国の金貨、うちの国より小さくなかったっけ?
「金貨だけじゃ不便だろう。袋二つは銀貨だ」
なるほど。それは助かる。金貨なんて市では怪しまれるだけだからよ。
「オレが言うのもなんだが、公爵どのって結構金持ってるよな」
大領地とは言え、個人でこんなに持ってるものなのか? 車もポケットマネーだろう?
「お前と付き合ってたら金なんていくらでも貯まるわ」
「なんでオレと付き合ってると金が貯まるんだよ? 意味わからんわ」
「お前が作る薬、帝国では千ラグで取引されてるし、飛竜の鱗は一枚百ラグで売れたわ」
飛竜の鱗はまだしもオレの作った薬が千ラグ? ぼったくりじゃね?
「飛竜の心臓から作った薬がどれだけ価値があるか、それはお前が一番知ってんだろうが」
あ、オカンの病気、飛竜の心臓で治したっけ。
殿様のところで大量に仕入れて、余ったから先生に万能薬を作ってもらって、いくつか公爵どのに売ったな。
「お陰さまで大儲けだよ、こん畜生が」
なんで罵倒されんだよ? 儲かったんなら感謝の言葉を吐けや。
「カイ様。わたくしの判断では心もとないのでラリーたちを呼んでも構わないでしょうか?」
「口止めはしっかりしておけよ。どこに目や耳があるかわからんからな」
「心得ております」
そう頷くと、オレに一礼して部屋を出て行った。
「ラリーって?」
「宝石職人で販売組織だ」
へ~。そう言うのがあるんだ。なら、こちらもオシャレ統括本部長(今、テキトーに決めました)を連れてくるか。
「公爵どの。オレも担当を呼んでくるわ」
「担当?」
「プリッつあんだよ」
言って転移バッチを発動した。




