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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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734 オレも人の子

「法律上、わたしはまだ二人の子にはなっていないが、心はもう二人の子であり、ここにいる者全てが家族だ。これに異論は認めない。わたしは、両親を、あなたたちを家族と決めた」


 もちろん、異論は認める。が、オレから異論を言うつもりはねーし、異論を言うヤツに容赦はしねー。オレが家族だと認めたら家族なんだよ。文句があるならいつでもかかってこいや!


「決めたからにはわたしに従ってもらう。異論がある者はここより立ち去れ。いらないと言うほど退職金を渡してやる」


 ん? あれ? この時代に退職金ってあったっけ? よくわかんねーが、ここは勢いと気迫で乗り切れ、だ。


 睨むように家臣たちを見る。


 三十秒一分と待つが、誰からも異論は上がらない。と、執事風の老人が床に片膝をついた──ら、他のヤツらも片膝をついた。なによこれ?


 上辺にしか貴族の風習を知らんので、この反応に対応できない。誰か説明プリーズ!


「忠義の公ですよ。家臣一同あなたに全てを捧げますって」


 コソッとレイコさんが耳打ちしてくれた。


 そんなのがあんだ。初めて知ったよ。で、なんて答えたらイイのよ?


「主の格を見せる場でもあるので、人それぞれですね。なにかを贈ったり、願いを叶えたり、珍しいところではお酒を酌み交わした者もいますね」


 なんとも難しい風習だな。だが、これと言った答えがねーのなら、オレ流でイイってことだ。


「皆の忠義、ヴィ・ベルが確かに受け取った。ならば、その忠義に答えよう」


 ドンと床を叩き、土魔法でテーブルを作り出した。


「食事にする。用意を」


 と言うと、背後にいるメイドさんたちが『畏まりました』と返事をし、各自が持つ鞄から料理を出して行く。


 容量を無視しているところからして魔法の鞄だろう。前にミタさんがゼルフィング家のメイドは一つは支給されるとか言ってた。もちろん、出所はカイナさんですよ。


 サプルの教えがイイのかメイド長さんの教育がイイのかは知らんが、さすが選ばれただけのことはある。こちらの言いたいことを理解し、今できる最高の用意をする。


「ヴィ・ベル様、用意が整いました」


 作り置きを出しただけとは言え、テーブルに並べられた料理や配置に一切の隙はねー。いったいどんな訓練してんのよ、君たちは?


 いやまあ、知ったところでどうだってこともねーんだ、ガンバった方々に感謝の敬礼を送っておこう。心の中でな。


 さすがに椅子までは用意できなかったようだが、まあ、最初から出す気はなかった。家臣に主と同じ席につけと言っても従うわけもねー。忠義の公とやらをやる連中だ、その辺の教育は骨の髄まで染み込んでいるだろうよ。


「今、このときだけは主も家臣もない。ここは親と子が集う場所である。さあ、食せ。語らえ。笑顔を咲かせろ。ここから幸福をもたらそうではないか!」


 メイドさんに視線を飛ばすと、家臣たちに葡萄酒を配り始めた。つーか、よくわかったね。君たち、なんか改造された?


 なんて冗談はともかく、葡萄酒が皆にいき渡った。


 メイドさんの一人から、たぶん、中身は葡萄ジュースだと思うグラスを受け取る。信じてるからね。


「シャンリアルに住む者たちに繁栄と笑顔を!」


 グラスを掲げる。


「シャンリアルに住む者に繁栄と笑顔を!」


 と、領主さんが答え、家臣たちがそれに続いた。


「乾杯!」


 と音頭を取り、中身、絶対葡萄ジュースだよねとメイドさんの有能さを信じていっきに飲み干した。


 うん! 葡萄ジュースでした。つーか、旨いな、これ。どこで……は愚問か。こんなのカイナーズホームでしか売ってねーよ。


 飲み干した葡萄酒の洗練(たぶん、そうなんじゃないかな~と言う妄想です)に驚く家臣たち。そりゃそうだろうよ。葡萄酒の瓶についた値札(ってか、取っておけよ)に〇が三つもついてるもの。


 安もんじゃん! とか言うのはカイナーズホームを知らんヤツのセリフ。あそこ、どんな高い酒でも千円しない。安いものなんて一本十円で売ってたわ。


 ほんと、見たとき、この世界を堕落させてーのかと叫んじまったよ。


「旨いものを口にしたとき、人は幸福に満ちる。空腹は人を不幸にする。心を貧しくする」


 それは今生で経験したこと。学んだこと。


「わたしがシャンリアルにいる限り、民を空腹にさせることはしない。させもしない。シャンリアルをこの国最大の農業領とし、空腹のない領とする。皆の者。わたしの願いを叶えるため、力を貸して欲しい」


 頭は下げない。ただ、家臣たちの心に訴えた。


「もちろんです!」


「そうですとも!」


「我々はあなたの家臣。どこまでもついて参ります!」


 次々と賛成、賛同してくれる家臣たち。


 チョロイと言うことなかれ。いつ終わるとも知れない絶望的状況で、希望を見せると言うことは洗脳に近い行為。逃げ道が一つしかないと思わせ、それが唯一の正解だと信じ込ませることだからな。


 ゲスいな、お前。って突っ込みは甘んじて受けよう。オレは目的のためなら手段は問わない。叶えるためならゲスでも鬼畜にでもなってやるよ。


 ただ、オレも人の子なので、なるべく憎まれるより好かれる手段を選びますけどね。だって、家族に嫌われるとかヤダもん。


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