7 木版は優れた教材
「あんちゃん、また新しい話か?」
マ〇ダムしながら焼きごてで木版に文字を焼いてると、妹が声をかけてきた。
「ああ。そろそろ新しいので文字を教えようとと思ってな」
王都や大都市ならまだしもこんなド田舎に学舎などあるわけがないし、文字を知ってるヤツなんて十人もいないくらい識字率が低い。
確かにここなら知らなくても生きていけるが、文字を知っていて損はないし、よりよい生活ができる。なにより本が読める生活は心を豊かにしてくれるのだ。
とは言え、製紙技術がまだ未発達のこの時代では本は高額。文字を写す水晶版など貴族様でもないと買えないくらい希少品だ。
薬師のオババに貢いで文字を教わり、小遣い貯めて行商人から本を買って読んでいたら妹も興味を持ち、教えて欲しいとねだってきた。まあ、今は覚える気十七パーセントぐらいしかないがな。
そのときはまだ勉強中で、買える本も旅行記や植物図鑑、歴史書と言うものばかりでまだまだ理解してなかった。
さて、どうしたもんかと悩んだ結果、お伽噺で文字を教えることにした。
紙を作る知識も能力もあったのでやってみたが、なかなか手間がかかった。そこで思った。別に紙じゃなくてもイイんじゃねぇ? と。
木はそこら辺に腐るほどある。木を切るなど造作もない力がある。土魔法があるので焼きごてを変形させることができる。
A3サイズのベニヤ板で一物語となると少々嵩張ってしまうが、土魔法で地下室を作ったので問題なし。
なぞってよし。読んでよし。九九も焼けば算数も教えられる。教材として売ろうかなと皮算用するくらい優れものであった。
まあ、妹の場合文字を学びたいと言うよりはお伽噺を聞きたい方が勝っているので、音読させながら文字を覚えさせている段階だけどな。
「今度のはなんの話なの?」
「鶴の……いや、ホウ鳥の恩返しって話だ」
「どんな話なのっ!」
瞳をキラキラさせながら迫ってきた。
なんの娯楽もない世界では町にサーカスがやってくるくらいの大興奮ものなんだよ。
「できたら話してやるよ。ほら、オカンがきたし、朝メシにするぞ」
妹を押し戻し、居間へと上がった。
絶対だよ。絶対だからねと言う妹に生返事しながら運んでくる朝食を炬燵の上に並べていく。
今日の朝メシは、肉まんに具たくさんのシチュー。ゆで卵。漬け物。魚の練り物を焼いたもの。統一感はまったくないが、この村では、いや、ここの領主の食卓以上の豪華さだろう。
一日の元気は朝食から。よく食べてよく働くが我が家の家訓である。
「では、いただきます」
十歳であるが、家長たるオレが音頭を取る。
「いただきます」
「いただきま~す」
あ、そーいや、弟が帰ってきてねーや。




