670 メイドの実態
あんちゃんがカイナーズホームに買い出しに出かけたので、転移バッチで館へと飛んだ。
玄関前に現れると、メイドさんがたくさん集まっていた。
「あ、ベー様。ヴィアンサプレシア号に送る人員ですが、増員してもよろしいですか?」
メイドさんの中からミタさんが現れ、そんなことを言った。
「そりゃ構わんが、うち、どんだけメイドがいんだよ? 日に日に増えてね?」
ここにいるだけで七、八十人。いくらなんでも雇い過ぎじゃねっ!
「昨日で二百人は越えたそうですよ」
二、二百人って、うちをヴェルサイユ宮殿にする気かよ! そんなことしたら全員クビにすっからな!
「と言うか、誰が雇ってんだよ?」
オレも親父殿も関知してねーぞ。まあ、いるんなら雇うとは言ったけどさぁ……。
「サプル様です」
「え、サプルが!?」
思わぬ人物にびっくらこいた。なぜにサプルが雇ってんの?
「わたしたちがいた地域からだけではなく、別の地域からも移住者が来て仕事がないのです。それを知ったサプル様がメイドの学校を設立しました」
メイドの学校って、よく学校なんて知ってたな、サプルのヤツ? 前にしゃべったっけか、オレ?
ま、まあ、サプルがやると言うのならオレに否はねー。
たまに暴走しがちなサプルだが、人魚相手に結構……どころではねーな。ちょっとした商会くらいは稼いでいる。その他にも広場での商売や内職(投げナイフの術込めとかな)で金を得ている。
その財力を考えたら二百人でも三百人でも余裕で面倒みられる。
あ、よくよく考えたらオレ、うちに金なんていれたことねーな。つーか、うちは自給自足と物々交換だっけ。なんで金稼いでんだ、オレら?
いや、深く考えるのは止めておこう。なんだか負けた気分になってくるんでよ。
「そうかい。まあ、サプルのやりたいようにやればイイさ。それより、二百人ってことはまだいるってことか?」
「はい。地下の訓練施設で勉強しています」
だったらサプルもそこで勉強して欲しいもんだが、言ったところで興味を見せる訳でもねーしな、未来に期待しよう。
「なら、四十人ばかりあんちゃんに預けてくれ。明日の朝からカイナーズホームで買い出しの手伝いしてもらいてーんだわ」
「人数が増えても構いませんか?」
「ああ。大丈夫だろう」
指示を出すあんちゃんは大変だろうげどな。
「あ、あんちゃんの商会から給金が出るからそれは各人が受け取れな。サプルやうちに出さなくてもイイからよ」
当たり前のようで当たり前と受け入れできねーヤツがいるからな、ちゃんと釘を刺しておかねーと。
「わかりました。そう伝えておきます」
「そう言やメイド長さん、サプルについてるが、纏め役っていんのか?」
サプル任せなのでどうでもイイっちゃーイイんだが、なんとなく気になったのでつい聞いてしまった。
「はい。メイド副長が六人いて四、五十人単位で纏めています」
な、なかなか組織的ですこと。もうメイド結社として裏から世界を征服しそうだな……。
「そ、そうかい。それはなによりだ」
なにがなによりだかは自分でもわからんが、追求は止めておこう。下手に言うとそうなりそうだしよ……。
「ついでに聞くが、ミタさんってどんな立ち位置になってんの?」
散々指示しておいてなんだが、メイドさんズはサプルの指揮下。ミタさんはオレの専属(?)だ。組織的に不味かったか?
「わたしはベー様の専属メイドですが、指揮権的にはメイド長に並びます。ですが、ベー様の指示の場合はサプル様やお館様の言葉より優先されます」
なにやらオレの知らないところで重要なことが決まってました~。
いや、サプルや親父殿の言葉を優先しろよ、とは言えないか。言ったらそれは責任放棄したのと同じこと。最後まで責任を持て、だ。
「わかった。それで頼むよ」
これも言葉に出して言っておかんとな。曖昧なのが一番ワリーからよ。
「人選はミタさんか、副長さんズに任せる」
「畏まりました。ベー様は、すぐに人魚の国へ向かいますか?」
ん~どうすっぺ? もう陽は沈んだし、あっちに行っても寝るだけだし、プリッつあんやドレミ……はいるな。たまに空気すぎていること忘れるぜ。
「今日は自分の部屋で寝るよ。ドレミ、サプルのもとに分離体、いるよな?」
「はい。緑がついてます。それとシュンパネができたそうなのでアバール様やご婦人にお配りします」
随分と早いこと。バンベルがガンバったか?
「任せる。オレは部屋にいるからなんかあったら遠慮なく言ってくれ」
任せられることは任せる。これが疲れないコツだぜ。




