425 清く正しく美しく
オレの仕事をザンバリーのおっちゃんに引き継いでいることを、ザバルのおっちゃんに伝える。
ザバルのおっちゃんもオカンとの結婚を知っており、おめでとうと祝福され、やはり明日にでも親睦会と言う名の飲み会をすることに決まった。
別の意味で程々にな、と忠告して山小屋へと戻った。
イイ感じに冒険譚が終わったので、オレの割り当てられた伐り場へと向かった。残念がるハンガたちには焼きラビーを渡して諦めさせた。
「随分と奥にあるんだな?」
木を伐るには最初に道を造らなくちゃならず、オレが割り当てられたところには道がなく、樵衆も来ない奥にある。
これは別にいじめを受けている訳ではなく、オレが望んでここを割り当ててもらったのだ。
「……凄いな……」
「まったくだ」
オレがここを選んだ理由は、泉が湧き、その周辺にはクランコロスと言う名の薬草が生えているのだ。
はっきり言ってクランコロスは、麻薬だ。近隣諸国で有害植物として取り締まりを受けている。
「お、お前、なにやってんだよ!? これ、クランコロスだろうが!」
さすがA級冒険者。薬師でも知ってるヤツがいねーのに、よく知ってる。
「ああ。クランコロスだな。それも良質の、な」
「おま、ベー! これを所持してるだけで絞首刑になるものだぞ!」
「ああ。オレも聞いたときはびっくりしたよ」
クランコロスのことはオババから教えられてるし、絶対に触れるなと厳しく言われている。なんで、これを見付けたときは驚いたもんだが、前世の記憶を持つものとしては、麻薬と言えど使い方では人を救う薬ともなる。
高い金を出して薬学書を買って読んだが、その利用法や製造法はまったく載ってなかった。
ならばと、王都や帝国の情報屋を使って調べたが、知れたのは麻薬の製造法だけ。薬にしようとしたヤツがいねーってことぐらいしかつかめなかった。
それならオレが、とは思わなかった。既にあるものなら覚えるだけで済むが、新しく作るとなるとオレの能力(根気)では無理だ。そこまでの情熱は湧いてこねー。
なんで、村の者が立ち入らないようにオレがここを管理し、自然のままに放置していたのだ。ザンバリーのおっちゃんが言ったように持っただけで犯罪だ。ほっとくしかねーだろう。
「安心しな。これは勝手に咲いてるだけ。葉の一枚も採ってねーからよ」
「本当か?」
疑いの眼差しを向けて来る将来のパパさん。まあ、オレを知っていれば当然ですね。使えるものならなんでも使うと広言してますし。
「ああ。使い道がねーんだ。興味だけで自然破壊はしねーよ。犯罪者にもなりたくねーしな」
食うに困ったら盗みを働くかもしれねぇが、今生は幸せに満ちている。清く正しく美しくがモットーだぜ、クックックッ。
「悪い顔しておるぞ」
「なんか企んでるときの笑いだな、それ」
おっと。それは失礼。つい顔に出てしまいました。
「まあ、自然に咲いてるもの。そして、採らなきゃ問題はねーよ。クランコロスなんてもの知るヤツは極少数。オレが、いや、ザンバリーのおっちゃんや賢者殿が黙っていれば世はこともなし。平和ってことだ」
なにか、納得できない顔をしてるが、自然に咲いてるものに罰は下せず、見付けたからと言って報告義務はない。ちゃんと優秀な情報屋に調べてもらいましたもの。
「許せないと言うなら燃やすなり埋めるなりしな。家族の情として見て見ぬ振りはしてやるからよ」
法を逆手にとったものだ。ケッケッケッ。
「……お前は、一生村人でいてくれよ。息子が犯罪王とか、おれの髪が全て抜けるわ……」
「安心しな。誰がなんと言おうと、オレは死ぬそのときまで村人さ!」
ドヤ顔でキメてみたが、なぜかうろんな目で見られてます。なぜに?
「まあ、犯罪者にはならねーと誓うよ。それを信じろ。オレは家族にウソは言わねー男だ」
「わかった。今はそれを信じておくよ」
「そうだな。これまで見た限りでは悪に手を染める男ではないようだからな」
そんな家族に感謝だよ。
まあ、ウソはつかねーが、秘密は口にしねーがな。ケッケッケッ。
「やるんなら最後までやりきれよ。将来の父親のために……」
そんな呟きは右から左にスルーです。
「ほれ、木を伐るぞ」
魔術と結界でエアーチェーンソーを創り出す。
「相変わらず変な魔術を創り出すよな、お前って」
「必要は発明の母ってな、不自由な環境だからこそ人は学び、努力し、成長進化して行くんだよ。人よ、とどまるな、だ」
まあ、オレはゆっくり歩むんで、急ぎたい人はがんばってくださいな。オレのためによ。
「……たまに、含蓄あること言うから狡いよな、お前は……」
「そこに意味を求めるかはザンバリーのおっちゃん次第。受け入れる受け入れねーはそっちで決めな」
そこはオレの領分じゃねー。オレはオレの都合と主義主張で動くまでだ。
「よし。まずは見本を見せる。あとは、おっちゃんのやり方でやってみな」
クランコロスがよく育つように、泉に影を差す木にエアーチェーンソーを振り下ろした。




