370 トゥルベンガー
さぁ、夢と冒険の世界に出発だ!
とか、前世にあった千葉なのに東京と言い張る、メルヘンよりのファンタジーキングダムなら喜んでついていくのだが、生憎と、ここは剣と魔法の世界。
もう、剣とついてるだけで血生臭いこと決定。夢どころか希望さえあるのかもわからん、弱肉強食サバイバルファンタジーだわ。
いやまあ、世界にどうこう言うつもりはねーが、向かい入れんのに、なぜに城? いや、百歩下がったとして、それはイイ。いや、一万歩下がっても飲み込めねーが、問題はそこじゃねー。
オレが問題にしてーのは、城の形だ。
ある意味、剣と魔法の世界に相応しいが、ゲームで例えるなら終盤に見るよね。苦難苦闘の末に見るものだよね。こんな平和な村で見るものじゃないよね。
いや、色も白亜で、造りも繊細で高級感が出ている。それだけなら夢と冒険の国にあってもイイが、形からはハリーさんちにある方が、さぞかし人気の出るアトラクションになるだろうよ。
「つーか、なんで城に手足が生えてんだ?」
城なのに人型とはこれいかに。だれかその心を教えてくださいだ。
「準機動要塞、第二世代型鬼巌城、トゥルベンガーだからさ」
オレの素朴な疑問に、なぜかドヤ顔で答えるカイナさん。
準とか機動とか第二世代とか、いろいろ素朴に突っ込みてーが、なんか無理。マジ無理。オレの突っ込みレベルでは魔王に勝てねーよ。
なんでスルー拳、四倍! 速攻で決める!
なにをだよ! とか突っ込みぷりーず。皆の元気がオレには必要なんだ!
「ベー、どうしたのさ?」
──はっ! いかんいかん、なんか現実逃避しったわ!
「ワ、ワリー。ちょっと受け入れがたい現実と最終決戦してたわ」
「なに言ってんの?」
オレはお前になにやってんのと問いてーわ!
「え、えーと、なんでアレなん?」
「おれが持ってる中で手頃なのがあれしかないんだよね」
ハーイ、今度は二百歩下がりまーす。
「だったら夢と冒険の王国から持ってこいよ。見た目的に厳ついだろう、あれ」
「ん~。それも考えたんだけど、あちらの城を持ってきてもライフラインが繋がってないから不便なんだよね」
「ま、まあ、そりゃ確かにそうだ──あ、いや、昔の城なんだからねーのが当然じゃね?」
ハーイ、六十歩前に出まーす。
「おれ、城の暮らしなんて知らないし、使いにくいのヤダだよ」
ハイ、なんかいろいろと終~了~!
「そうか。ならしょうがねーな」
横から『なんでだよ!』とか聞こえるが、そんなもの全力全開でスルーです。
「ところで、どっから入るんだ? 足か?」
昔、足から入る特撮ロボとかあったな。あんな感じか?
「ちょっと待って。トゥルベンガー、変形!」
とかカイナが叫ぶとなんとか城がトランスフォーム。もう勝手にしてください……。
完全に城となった、なんとか城。ファンタジークオリティーに万歳三唱してーよ、まったく。
「皆、お客さまのお迎えだよ!」
……皆?
「「「「はぁ~い!」」」」
と、なにやら愛らしい声が耳に届いた。
現実逃避をしそうな意識さんが急停止。辺りへと目を向けると、城から冥土──じゃなくてメイドさんがわらわらと出てきた。
「ハイ! カイナさん、説明ぷりーず」
「魔王さんがあっちの世界に行ってから魔界は戦国時代になってさ、結構、あっちから流れてきてるんだよ。そのままにしておくとこっちまで戦国時代になっちゃうからね、その対策さ。魔王さんにも頼まれてるしね」
なにやら軽く言ってるが、内容はどんより重いな。メンドクセーことにならなきゃイイがよ……。
左右に並ぶいろんな種族のメイドさんズ。
……もう、うちに帰りてーな、こん畜生がよ……。
「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」
「──どこだよ、ここっ!」
「メイドホテル?」
「知らねーよ!」
ほんと、お前、なにしてくれてんの!




