302 前言撤回
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
石炭。
前世なら火力発電の燃料となり、見つかれば重要な産業ともなるだろう。だが、この世界(時代)にゃ火力発電なんてあるわけねーからそれほど重要視されてはいない。
しかし、だ。このファンタジーな世界の石炭はちょっと、かどうかは知らんが、石炭に魔力が含まれており、それを燃やして鉄を錬成するとあら不思議。鉄に魔力が移り、魔力伝導がよくなるのだ。
まあ、その辺は鍛治屋の腕といろいろな技術を必要とするが、鉄を主産業としているこの国には重要なものだ。
他にも燃料だったり暖房用だったりと、派手ではないがいろいろなところで使われてたりもする。
しかも、この国で石炭は採れないので輸入となるのだが、今の段階で石炭が採れる国は帝国領。それもこの国から離れた場所で採れるよーだ。
その辺の事情は詳しくはないが、バリアルの街で石炭が一樽で銀貨十七枚で売ってたよ。
「随分と勉強してきたんだな」
「それしかないのでな」
できる王弟どの。国の現状が透けて見えるな。危ない方向によ。
「しかし、ただの村人に厄介なもの出してくんな。石炭なんて国同士の商売じゃねーかよ」
それほどでなくても鉄を精製するときには火を使う。薪なんて──あ、だからか。こんな無法に近い時代になぜ薪に走らなかったのか謎だったが、人外のお陰か。納得だわ。
「ただの村人かどうかはともかく、カムラの隊商の間では小賢者ベーの名は有名だ。知り合いの商人、ザーネルの言葉を借りるなら『誠意を持って相手すれば魔王を味方にするより心強い』だ、そうだ」
ザーネル? ザーネル。ザー……あ、あの美人さんか。うん。あれは見事なお──どこからか殺気が! オホン。まあ、迫力のある年齢不詳の美人さんで、カムラ王国で一、二を争う商会の娘とかなんとか言ってたよーな。あの美しいフォルムしか鮮明に覚えてねーです。
「あのねーちゃんな。だったら一緒に来たらよかったじゃねーか?」
隊商の代表として毎年くる。なにもずらしてくることねーじゃんか。一緒にきた方が話が通りやすいだろうによ。
「すまない。一刻も早くきたかったのだ……」
なにかを堪えるように頭を下げた。心中察します、だな。
「まあ、代金はそれでイイ。ただ、石炭となるとさすがにオレの手には余るもんだ。それ専門に託さしてもらうが構わんか?」
困ったときの会長さん。出番ですよ~! だねっ。
まあ、実際問題頼めるのは会長さんしかいねーしな、サクッとマルッとお任せしますだ。
「構わない。それどころか紹介してもらえるなら更に助かる」
「……なるほど。あのねーちゃんの考えだな」
アニバリの表情が崩れたことで確信する。このシナリオを書いたのはあの女狐だとな……。
ったく。きたら二割高にしてやっからな。
こちらは結界術で六台の荷車で済むが、石炭は少なくても二十台は越えるだろう。しかも貿易ともなれば荷車は膨大なものになり、それを仲介する者は莫大な利益を生むことだろうよ。さすが過ぎて鼻血も出ねーよ。
「……本当に見透かすのだな……」
「そのくらい見抜けなくちゃ海千山千の商人なんて相手できねーよ。ケツの毛までむしられっちまうよ」
ましてやカムラの商売人はえげつないくらい商売上手。それで国が存続してるって話だからな(旅の行商人談)。
「さすがあの女傑が一目置くだけはある。見習わんとな」
どっちを、とは聞かん。どちらも見本にしたらダメなヤツだからな。
「食料は五日待て。量が量だけに直ぐには用意できねーよ」
さすがにすぐに用意しろとは言えねーよ。会長さんの血管ぶち切れるわ。まあ、お任せするオレのセリフじゃねーがな。
「あ、そうだ。誰か一人、王都に人を出せ。住む場所は用意してやっからよ」
窓口は必要だし、契約不履行されてもたまらんからな、人質だ。
「わかった。レリーナ」
と、やや離れた場所に立っていた、薄汚れたねーちゃん(十六、七、だと思う)がこちらにきた。
「わたしの娘を出す。もしものときは好きにしてくれ」
……また、あのねーちゃん差し金だな……。
オレを引き込むためにあれやこれやとやってきたが、今回は色仕掛けできやがったよ。ったく。五割増しにしてやんぞ、ゴラァ!
「……ま、まあ、そちらがそれでイイのならこちらに否はねーよ……」
まあ、それも会長さんお願いねっ⭐ だ。オレには関係ねーさ。たぶん。きっと。そう願います……。
「じゃあ、五日の間は好きにしてな」
と立ち上がったところで重要なことを思い出した。
「あー、前言撤回。あんたらには重要なことをしてもらう」
マジな顔でアニバリらを見る。
「テメーら、風呂に入りやがれ!」
まずこいつらを洗浄しねーとサプルにこの一帯業火で焼き尽くされっちまうわ!




