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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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27 オババは恩師

 ──薬師《くすし》。


 開拓村のような人類最前線でなければだいたいの村に一人か二人は薬師はいるのが常識だ。


 前世のように資格がある訳でも、学ぶ機関があるわけでもねー。医者なんて呼べるような医学なんて王都でもなければ見ることもない希少な存在だ。


 医学っても前世のような人体学を学んだもんじゃなく、外科的な、切ったり折れたりを治す魔術に依る医学が主だ。


 薬も熱を下げるとか毒を解するとか、長年の知恵による薬でなんとかできるものがほとんどだろう。


 まあ、医者はともかく、薬師の場合は、親から子に、または師から弟子に受け継がれ、村に残ったり新たな村に移ったりするそーな。


 我が村の薬師は、親から子に受け継がれた口で、もう六十年以上も薬師として活躍しているばーちゃんだ。


 前世の医療技術と比べたらおばあちゃんの知恵袋くらいの差があるが、この時代では交通が不便な田舎町に診療所があるかないくらい生存率に関わってくる。


 この世界のこの時代では、薬師は総合職。出産から墓場まで、人の生き死に必ず関わってくる村で重要な、それこそ村長より発言権がある職なのだ。


 なので、薬師の家──薬所《やくどころ》は、村の中心(集落のね)にあり、周りが木で造られている中、頑丈な石で造られている。


 これは、なにを置いても薬師の存在は村にとっての生命線だからで、薬草を保存するには一定の温度管理が必要だからだ。


 薬所のドアを開けると、幾十もの薬草の臭いが流れてきた。


 慣れないと青臭い臭いやら苦い臭いに気分が悪くなるが、ド田舎に生まれ、家畜の糞やら魔物の臓物の臭いを日常的に嗅いでたら少々の臭いなど気にもならない。ましてや、五歳の頃は毎日きてたのでまったく気にもならなくなっている。


「オババ、生きてるか~」


 誰もいない所内に声をかけた。


 基本、薬師の仕事は薬作り。奥の工房で作業しているのだ。


「生きてるわよ~」


 奥から若いねーちゃんの声が返ってきた。


 別に姉御のようにわ──殺気──いえ、なんでもございませんです。はい。ねーちゃんは、現薬師の十番目の弟子で、現在修行中の薬師見習い、十四歳だ。


 見習いの腕にも依るが、だいたい十年に一人は弟子入りさせ、一通り学ばせたら冒険者にさせて薬草採取や生態を実地で学ばせ、薬所支所で経験を積ませることをしている。


 この時代、生存率は低く、薬師と言えども病気には勝てない。冒険者時代なら魔物との戦闘もあるので尚更生存率は低くなるのだ。


 まあこれは、ある程度の人口がある村で、魔物や自然災害がないところじゃないと不可能である。


 まぁ、幸いにしてうちの村にはオトンがいて姉御がいたから魔物の被害は軽微で済んでる。自然災害も水不足が一回あったくらいで飢饉になるようなことはなかったからうちの村では薬師率は高いが、近隣の村では一人か二人ぐらいしか輩出してねぇのが普通だ。


「よっ、ニーブ。しっかり勉強してるか」


 ちなみにオレはオババの九番目の弟子で薬師を名乗ることを許されている。なのでニーブは妹弟子にあたるのだよ。


「してるわよ。まったく、年下のクセに生意気なんだから」


「ハッハッハー! 悔しかったら早く一人前になってオレ以上の薬師になるんだな、ニーブくん!」


 別に驕っているわけじゃねーよ。薬師を名乗れるようになったが、どんな職業も日々勉強で日進月歩。そこがゴールなんてありはしない。これは、ニーブに発破をかけて、腕のイイ薬師にさせるための兄弟子の優しさであるぞよ。


「いらっしゃい。よく来たね」


 しわくちゃな顔をさらにしわくちゃにして歓迎してくれた。


 いつもの席で薬草を磨り潰していた豆粒のようなばオババは御年八十うん歳(本人も長く生きすぎてわからなくなったらしい)。村で最高年齢だ。


 これだけ年を取れば偏屈になりそうだが、物静かで柔らかい性格。この時代では珍しいほどの人格者。昔からまったく変わっていない(村長談)とのことだ。


 オレの存在も否定することなく、薬学だけではなく自分の知っていること全て教えてくれた。


 この人はオレの恩師で、家族と同じくらい大切な存在だ。


「ニーブ、食料持ってきたから馬車から下ろしてくれ」


 薬師は税を免除(村からな)され、食料は村(村長宅)から支給される。が、この時代のこんなド田舎。固いもんしかありゃしない。歯の欠けたオババには辛すぎるのでオババ(と住み込みのニーブ用も一緒に)のためにトロっトロに煮込んだものを中心としたものを差し入れているのだ。


「ニーブ。頼むよ」


「はぁ~い!」


 まあ、いつものことなのでニーブに任せておく。


「いつもすまないねぇ」


「気にすんな。オカンが採って、トータが狩ってきたもんをサプルが作る。それを薪を運ぶついでに持ってきただけだ。なんの労力もねーよ」


「ほっほ。まあ、ありがたくもらっておくよ」


 オレの能力を知りながらなにも聞かず、普通に接してくれる。七十歳若かったら求婚してるところだ。


「一応、十日分は持ってきたが、足りないときは言ってくれ。まあ、大丈夫だろうとは思うが、状況次第では食料不足になるかもしれん。万が一のときのためにオレが持ってきたやつは地下に置いとけ。あと、傷薬も多目に作って置いたほうがイイかもな。無駄になったらオレが保存して置くからよ」


 しわくちゃなのでオババの表情はわかんねーが、恩師と仰ぐ人である。雰囲気を読む力なら弟子の誰にも負けねぇよ。


「そう心配すんな。悪いようにはしねーから」


「すまんな、いつもいつも……」


「それこそ気にすんな。オレが勝手にやってることなんだからよ」


 わかってるヤツがわかっててくれればそれでイイ。それだけでこの世界に生まれてきた甲斐があるってもんさ。

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