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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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25 姉御には逆らうな

「おっちゃん、いるか~」


 冒険者ギルド(支部)の扉を開けながら声をかけた。


「いるに決まってんだろうが」


 カウンターの向こうで仏頂面した片足のおっちゃんが不機嫌そうに言い放った。


「ったく、毎回毎回、同じセリフを吐きやがって。嫌味か」


「嫌味だ、っていったら笑顔で迎えてくれんのか?」


「するか、ボケがっ!!」


 アハハ。ほんと、よく切れる三十代だ。


「まあ、暇そうでなによりだな」


 冒険者ギルドが忙しかったら村の一大事。暇で良いではないか。


「暇すぎて死にそうだわっ!」


「やだね、人の不幸を喜ぶヤツは。そんなんだから片足なくすんだよ」


 まあ、実際、なんで足をなくしたかは知らないが、この性格では足の一つや二つなくしても不思議ではない。いや、生きてること自体が不思議だよ。


「テメーになにがわかる!」


「ガキじゃあるまいし、わかって欲しけりゃ口にしろ。知られたくないのなら黙ってろ。腐るのは勝手だが、それを他人に押しつけんな」


 怒りで真っ赤になるが、別にオレは気にしない。こんな思い通りにいかないからって、周りにわめき散らすようなアホに優しくしてやるほどオレは人間できちゃいねーよ。


「マスター、落ち着いて下さい」


 冒険者ギルド(支部)の受付嬢で影のギルドマスター、姉御うん十歳(知ったらたぶん、殺される)。なんでこんなド田舎にいんだよと、突っ込みたくなるくらいの殺気を出せるお方だ。


 ……オトンの相棒でオカンの──目の前から殺気が──いえ、あの、なんでもないっす。ごめんなさいっ!!


「いらっしゃい。また依頼?」


「そうであります!」


 お釣りが出るくらいの笑顔に、なぜかオレは敬礼で答えてしまった。


「クスクス。相変わらず変なことする子ね。それで、今日はどんな依頼を出すの?」


 ……いやもう、この人を相手するのは寿命が縮むぜ……。


「花壇に花を植える依頼を頼みやす、姉御。報酬は小銅貨六枚でお願いしやす」


 精神年齢はオレが上のはずなのに、なぜか精神的に負けた気がして下出になってしまう。


「も~。お姉ちゃんでいいって言ってるでしょう」


「と、とんでもないっす! 姉御にそんな無礼なこと言えないっす!」


 そんなの凶悪なドラゴンにドラちゃんと言うようなもの。オレにそんな度胸はねーよ!


「まったく、君がそんな態度取るから小さい子まで姉御扱いなんだからね」


 いや、姉御に逆らうなは村の掟になってるくらい有名ですぜい。


「ふ~う。まあ、いいわ。依頼を受理します。それにしても前の道の手入れとか花壇とか、君は不思議な依頼を出すわね? しかも自分の懐から出してるし。あの子たちの支援にしては金額が安いし、いったいなんなの?」


「ん~まあ、郷土愛的なもんですよ」


 別にどうしても成し遂げたいものはないが、まあ、村が綺麗になったら良いな~ってくらいのもの。完全なオレの道楽だな。


「それより、ゴブリンが出てるそうですが、目撃情報は結構出てるんですか?」


 査定待ちしているバンたちを見ながら姉御に尋ねた。


「そーね。出ていると言えば出てるわね。昨日きた冒険者パーティーもゴブリンの襲撃にあったって報告があったし」


 ゴブリンは珍しくもない魔物(害獣)だし、一年中どこにでも生息するから遭遇率は高い。冒険者やってりゃあ、にわか雨に合うくらい会っているよくいる魔物(害獣)だ。


 ……ん~。冒険者ギルドじゃあ当たり前すぎてはっきりわからんな……。


「なにか、あったの?」


 さて、どうしたものか。大暴走なら冒険者ギルドに報告するべきものだが、はっきりとした訳じゃねーし、毒味役に欲しいモルモットだ。オレの益になるなら黙っている方が良いんだが、寿命を大切にするなら姉御に言った方がイイ。しゃーねーな。ここは、情報だけ渡しておくか。


「トータもバンたちが討伐したところでゴブリンを三匹狩りやしてね、もしかして、と思いやして……」


 オレの言いたいことを理解したようで、真剣な顔になった。


「わかりました。ギルドで調べてみます」


 まあ、調べると言ってもバンのパーティーともう一つのパーティーに依頼を出すと言うこと。なら、何匹かは捕獲しても怪しまれないだろうよ。


 ……もっとも、姉御には怪しまれるが、もう今さらだ……。


「んじゃ、報酬の金です。よろしくお願いいたしやす」


 なにか言われる前にさっさと冒険者ギルド(支部)から逃げ出した。


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