232 この子も天才でした
船を置いた場所へと到達した。
「船はどこなの?」
「ねーちゃんの踏んでるのがそうだよ」
教えてやると、犬のフンでも踏んだかのように飛び退いた。
「砂……いえ、砂鉄?」
「ああ、砂鉄だよ」
オッサンが言ったようにこの国は鉄が採れる国なようでうちの村──まあ、二キロは離れてるが、そこから鉄がいっぱい採れんだよ。
「これが船なの?」
なんか冷たい目で見ているが、ちゃんと“創る”と言っただろうがよ。
「下がってな」
充分な距離を取ったのを確認して地面を、砂鉄を踏みつけた。
一度体が覚えたら創るなど簡単。それが土魔法の才能だ。
きたときと同じ、十メートルのプレジャーボート(みたいな)が創り出した。
「これが王都にきたときに乗ってきた船だ」
名もねーので自己紹介もできねーな。
ねーちゃんらを見ればお口あんぐり。土魔法ははじめてか?
「なんなんだよこれっ!」
「なにって、船だよ。まあ、今の状態は箱船だがな」
コンコンと船を叩いてみせる。
「オレは土魔法が得意でな、ちょっと特殊な魔術が使えんだよ。そう納得しろ」
ねーちゃんはまだまだだとして、オッサンズは親父さんを見てんだから素直にありのままを受け入れろや。よくそれでファンタジーの海を渡ってんな。
「ほれ、ねーちゃん。魔道剣をよこしな」
まだ茫然としてるねーちゃんから魔道剣を取り上げ、船へと上がった。
さて。魔道剣を動力にするのはナイスアイデアなのは間違いねーが、推進力をなんにするかだよな。
簡単に思いつくところではスクリューを風で回転させるってのだな。だが、その機構が難しくなるので極力したくねー。って言うか、わかんねーよ、そんな仕組み。
次点で風を吹かすってのがあるが、船が安定しねー上にちらょっとした波で転覆しっちまう。これは海の中で吹かしても同じ。前にやって転覆しっちまったよ。
そんな経験からまず船を安定させなければならんと学んだんだが、所詮素人。解決策なんて出てこなかったわ。
ならなんで船をと突っ込まれそうだが、親父さんから公爵の話題が出たとき、ちょっと閃いたことがあったのだ。
船、安定しねーなら浮かせたらイイんじゃねぇ? とな。
浮遊石は公爵から見本としてもらい、土魔法で再現できてる。船も飛ばす訳じゃねーんだから海面から一メートルくらい、万が一のことを考えて五メートルは浮かべばそれでイイ。あとは風を吹かせば問題ねー。
もうそれ船じゃないよね。って突っ込みは甘んじて受け入れよう。別になんのカテゴリーでも構わんしな。つーか、船の形してたら船でイイだろう。飛空船も船のカテゴリーに入ってんだからよ。
「となると、トレジャーボート形はちょっと頂けねーな。ん~~~うん。あれにすっか」
前世で見たジェットフォイル。あの形にすっぺ。
まあ、構造は違うが、あの形はなんかカッコイイし、制御翼(浮遊石)をつければ更にカッコイイ!
イメージを膨らませ、土魔法で船の形を変えていく。
「こんなもんかな」
なかなか良さ気な感じにできあがった。あとは、上手く走るかだな。
魔道剣を鍵になるように操縦席の中央に差し込み口を創り、風を上手く吹き出せるように結界を敷いていく。
試行錯誤をすることしばし。満足いくものができた。昼過ぎなのはご愛敬でお願いします。
昼食を挟み、ねーちゃんに試運転をしてもらう。
「……これ、船だよね……?」
「魔道剣使ってんだから魔道船の一種なのは間違いねーよ。まあ、認めたくないのなら違う乗り物にすればイイさ。なんのかはオレは知らんがな」
そこまでは責任持てん。
「うぅ~~~あー! なんでもいいわよ!」
なんとも複雑そうな顔をして唸っていたが、突然叫び出すねーちゃん。どうやら自分の中で解決、または開き直りしたよーだ。ああ。それが賢明ってもんだぜ。
一つ、大人の階段を上ったねーちゃんに操縦席を譲る。
「やってみて変えて欲しいところがあるなら変える。まずはやってみな」
習うより慣れろと偉人は言った。ならオレは、考えるな、感じろと言いましょう。
最初は戸惑っていたが、時間とともに慣れて行き、その才能を開花させて行くねーちゃん。あらやだ奥さん。この子も天才でしたわよ。
一時間もしたらまるで自分の手足のように扱えるようになっていましたとさ。ケッ! この天才が!
凡人にはもう出番がないので船尾のデッキでマ〇ダムタイム。もう好きにしてくださいまし。




