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181 食いしん坊どもが

「さて。今日も家を創りたいと思います」


「は、はいですだ!」


 オレの掛け声にデンコが応える。他はいない。いや、他が来てないと言うべきか、デンコ以外は己の領域(部屋)を整えるので大忙しのよーです。


 まあ、だからと言ってやることには変わらねーんだから気にするなだ。


「ほんじゃ店からやりますか」


 おっちゃんに拘りがないようなんで陳列棚と中央に台を創ってハイ終わり。五分もかからんわ。


 あとは適当に土を移動させてカウンターやらバックヤード的なもんを創り、おっちゃんら夫婦(嫁さんの部屋になりそうだがな)の部屋、居間や応接室、風呂にトイレ(ボッタンだが、後で下水路をうちのに繋ぐ)、工房と創っていく。


「まっ、一階はこんなもんか」


「すげぇーだなや。あっと言う間だぁ……」


 いや、昼近くまではかかってるからね。


「んじゃ、昼にすっか。おっちゃん……らは勝手にとんだろうよ。デンコ、うちで食うぞ」


「はいですだ」


 なにやらまだ部屋を整えているようで、こっちを見ようともしねーよ。どんだけ嬉しいんだよ、まったく。


「デンコも部屋の方をやりてーか? やりてーなら昼食食ったらやってもイイぞ」


「いや、兄貴といるだよ」


 なんの躊躇いも、動揺もなく笑顔で言った。


 一人だけやらせねーのも悪いかと聞いたんが、デンコはこちらの方がイイようだ。


「デンコは、自分の部屋とか興味ねーのか?」


「いや、あるだよ。んだとも兄貴の土魔法を見てえだ! おらも兄貴みてぇに土魔法使えるようになっていろいろ創りてーだ!」


 おろ。デンコくんは土魔法に魅了されちゃったようだね。イイことだ。


「まあ、お前には才能ありそうだし、そう急ぐこともねーよ。ゆっくりじっくり極め、そして楽しめ。余裕もなく遊びもできんようでは一流にはならんからな」


 必死にやるのもイイが、オレは楽しくやらして身につけさせる派なんでな、オレのペースで教えて行きますのであしからず、だ。


 ご近所さんも昼食のようで台所の煙突から煙が出ていた。


 今日は魚(人魚の客からよくもらってくんだとよ)の塩焼きになんかの煮たもんだな。


 料理は完全にサプル任せなので料理名とかはよー知らん。まあ、サプルも付けるタイプじゃないので適当に名付けてるよ。


 イイ匂いだと思いながら通りすぎると、モコモコ族の方でも昼食の準備をしていた。


 ちなみに男衆は狩りに出て、女衆はオレに売る毛を刈ったり、オカンらと一緒にサリバリんちに行って手伝いしてるよ。


 モコモコ族はゴジルが好みのようでごった煮をよく作ってるとサプルが言ってた。


 家に入ると、タケル、モコモコガール、トータ、そしてなぜかあんちゃんの嫁さんがいた。え? じゃあ、台所で作ってんの誰だよ?!


「あ、シェラダ族の女の子を雇ったの。わたし、料理はてんでダメだから」


 なんて突っ込んだらそうあんちゃんの嫁さんが答えた。んじゃ今までどーしてたんだよ!


「サプルちゃんからもらってた」


 あ、うん、そーですか。そりゃよかったデスね。


「ベーさん、早く食いましょうよ! おれ、腹減って死にそうです!」


 叫ぶタケルの横でモコモコガールがまったくだと頷いていた。まったく、食いしん坊どもが。


「デンコ、空いてるところに座れ」


「はいですだ」


 デンコが座ったのを見て、今いるメンバーを見回す。


「はい、いただきます」


 との音頭とともに囲炉裏の周りに置かれた料理に手を伸ばし、朝に張った結界を取った。


「いただきます!」


 真っ先にモコモコガールが料理に手を伸ばし、やや遅れてタケルが続く。もう見慣れたのでなんとも思わねーが、初めて見たあんちゃんの嫁さんは唖然としていた。


「サラニラも食って行くか?」


 わかっちゃいるが一応誘って見る。


「え、あ、ううん。大丈夫。うちで食べるから」


 まあ、だろうな。


 オレも料理に手を伸ばし、食い始める。


「あ、ねぇ、ベーくん。食事しながらで良いんだけど、話、聞いてくれない?」


「構わんよ」


 タケルやモコモコガールと違ってオレはしゃべりながらでも食えるし、聞ける男だぜい。


「わたしに薬学を教えて欲しいの」


「薬学を? なんで?」


 あんちゃんの嫁さんは医者──つっても、魔術を使ったもので、前世の医者のように切ったり取ったり調べたりはしない。目で見える症状を魔術で治癒させたりするくらいだから薬なんて使わねーのだ。


「アバールからベーくんのことを聞いて医者の限界を知ったわ。だから薬学や人体学を学びたいの。医術を高めたいのよ」


「だったらオレの師匠を紹介してやるよ。まずはそこで学んできな」


「ベーくんではダメなの?」


「時間がねーんだよ。いろいろやることあっからな」


 さすがにこれ以上はゆとりがねーし、働きすぎねーのが今世のモットーなんでな。


「まあ、落ち着いたら付き合ってやるよ。それまでは自分で勉強してくれや。うちの本、勝手に見てイイからよ」


「ええ。わかったわ。無理言ってごめんなさいね」


「構わんよ。それより早く帰りな。あんちゃんが腹空かして帰ってくんぞ」


「ふふ。そーね。じゃあ」


「あいよ」


 さて。お代わりを持ってこねーとな。


 ……ったく。サプルがいねーとゆっくり食うこともできねーぜ……。

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