1776 ケルク(青汁)
女の子に連れて来られたのは村から少し離れたところにあった小さな小屋だった。
家の回りには畑があり、ここまで来る間に見た家も同じだからこれが一般的な家なんだろう。
夏の野菜なんだろう。アーベリアン王国周辺では見ないものばかりだ。やっぱり地域が違うと野菜も違うんだな。こうして見ないとなかなか実感できないものだ。
「おかーさん! 薬師様に来てもらったよ!」
「委員長さんが仕切れ」
女の子が家に入ったら委員長さんにに耳打ちした。
「わ、わたしが!?」
「そうだよ。お前はもっと人と触れ合え。大図書館の外を知れ。もう閉じ籠ってればイイ時代じゃねーんだからよ」
こいつらはコミュニケーション能力が低い。そばかすさんを推す理由もそこにあるのだ。
「おねーちゃん、お願い!」
二人の背中を押してやって小屋の中に入った。
小屋なだけに中は狭い。二段ベッド(初めて見た。聖国だけの仕様か?)と棚があるくらい。食事は外で食うようだ。やっぱ南半球に近いんだな。
二人の後ろから母親を覗くと、皮と骨に近い状態だった。これはもう薬でどうこうって問題ではない。まずは点滴しないとダメなレベルだ。
「まずは薬湯を飲ませましょう」
委員長さんもそう判断したようで、その竈で薬湯を作るとする。
「しかし、よく生きているわね」
委員長さんが不思議そうに女の子に尋ねた。
「ケルクは飲ませていたから」
「ケルク?」
「畑に植えてある草だよ。昔から村では長生きの草と言われて絞った汁を飲むの。とっても苦いけど」
不味い! もう一杯! の青汁のことか? 聖国にも似たようなものがあるんだな。とは言え、この状態になっても生きているならファンタジー的な成分も混ざってそうだ。
「うん、できた」
薬湯を飲める状態じゃないが、魔法が使える魔女は小さな玉にして胃に直接送ることができる。
弱った胃にコップ一杯は多いので、三十分ごと飲ませていく。
魔女の湯薬は効果が早い。三時間くらいで青白かった皮膚に赤みが戻ってきた。
「ここまでだとなんの病かわからないわね」
「脱水状態なのに腹が膨らんでいるところを見ると、寄生虫か病原菌じゃないかな?」
「寄生虫? 病原菌? で、こんなことになるの?」
「なるよ。寝込む前は下痢とかしてた?」
「うん。凄いことになってた」
この時代ではよくあることだ。腹下しが重宝される理由がこれである。
「うっ」
母親が痛みを見せた。これは、寄生虫のほうが確率高いな。
「姉じゃ。手術だ」
「こんなところで!?」
「長いこと時間をかけていたら母親が持たない。サクッと切って寄生虫を取り出す」
結界でやれなくもないが、ここは委員長さんの経験となってもらおう。万が一のときは、大図書館で女の子を引き取ればイイさ。




