1768 エリナが用意した馬車
濃い朝メシを食ったら街道に下りてみた。
「ヴィどの。今さらですが、その背中の赤ん坊はどうしたのでござる?」
「カイナの孫のレニスっていただろう? そいつの娘だ」
「あー、おりましたなカイナ殿の孫殿。子供が産まれたのは聞きましたが、なぜヴィ殿が?」
「押しつけられたから連れている」
「レイコ殿。説明ぷりーず」
なんでだよ! これってないくらいの簡素な説明だったろがい!
「ベー様の簡素は簡素になってないのですよ。エリナ様。カクカクシカジカベー様がバカなんですよ」
最後のいらないよね! 普通の悪口だよ!
「意外ですな。ヴィどのは子育てとか面倒がるタイプだと思っていたでござる」
「なんの偏見だよ。オレは子育ては嫌いじゃないぞ。トータだって面倒見てたし」
「ヴィどのが育てたとは思えないくらいいい子でござるよな。拙者も抱き締めたいでござる」
お前が言うと違った意味に聞こえるから止めろ! そんなことしたらぶっ飛ばしてやるからな。
「でも、女の子は違うのでは?」
「サプルのも面倒見てきたわ」
「あの子はヴィどのに似ておりますよね。好きなことにまっすぐで傍若無人──天真爛漫で」
言ってから言い代えるなよ。まあ、天真爛漫と書いて傍若無人って読むときはあるがよ。
「自分で歩くようになったら館で双子と遊ばせるさ。あそこなら健やかに育つだろうからな」
「父性愛が強いでござるな、ヴィどのは」
そうか? まあ、母性愛があるって言われるよりはイイがよ。
「街道なだけに道は踏み固められてんな」
山を下りて街道に出て地面を踏みしめたらなかなか固くなっていた。馬車はあまり通ってないようだ。
「帝国から続く道だよな?」
マルゲリータさんに尋ねた。
「続いてはいるけど、帝国と聖国は正式な国交を結んでいるわけではないのでする。帝国が飛空船で来る、と言ったものです」
なるほど。バイブラストは辺境だ。国交がないのなら頻繁に行き来することもないか。
「村とか町はあるのか?」
「あるとは聞いてますが、行ったことはないですな」
「ドレミ。分裂体を探りに出させてくれ」
どうせならバイブラストまでの道を知っておきたい。なんなの役に立つかもしれんからな。
「で、聖都まで結構かかんのかい?」
「馬車で二十日はかかると聞いたでござる」
まあ、そう珍しい距離でもないか。ボブラ村からも馬車で二十日から三十日はかかるしな。
「さすがに歩いて行くには厳しいか」
「それなら任せていただきたい。用意したでござるよ」
またどこからか四頭仕立ての馬車が出現した。御者にはやたらマッチョな野郎が座っていた。
「一見したら地味な馬車だが、なんか仕掛けがあるようだな」
こいつがタダの馬車を出すわけがない。絶対、なんかおもしろギミックを搭載さているはずだ。
「それは乗ってからの楽しみでござる」
乗る前に聞きたいんだがな。心の準備をするためによ。




