1764 魔女から料理人へ
四日ほど滞在してやっと薬が揃った。
「今日の夕食はなんですか?」
なんか見習いどもから食事を用意する人認定を受けたオレ。悔しいからフードコートで買ったものを出してやった。オレがいなくなってから苦しむがよい。
「カレーだ。香辛料を何十種類と混ぜて作ったものだ。帝都にある香辛料から似たようなもの、いや、これを超えるものを作るとよい」
帝都ならいろんな香辛料があるはず。異世界カレーを作るがイイさ。
「舌が贅沢になって仕方がないよ」
その割りには見習いより食ってないか? 魔女は胃まで元気なのかよ。
「だったら美味いものを作れ。そして、残せ。料理だって未来に残さなきゃならん知識なんだからよ」
伝統料理はそこに住む者のアイデンティティーみたいなもの。いつしか消えるものだとしても書籍の中に残しておくべきだ。
「料理に興味があるヤツがいたならうちに留学させてイイぞ。対価は求めねーからよ」
「わたしやりたいです!」
「わたしも!」
意外なことに二人も手を挙げた。美味いものには勝てなかったか?
「では、頼んでよいか?」
「構わねーよ。ハブルームの魔女も館の食堂利用してたからな」
食堂で魔女らしきヤツがいたのを見たような気がする。てか、食堂からハブルームに繋がっていたっけ。魔女も規則に従うばかりじゃないんだなと思ったよ。
「荷物はなにもいらねーよ。うちで用意させっからよ。んじゃ、預けて来るわ」
ついでにユウコさんも一旦館に戻しておくか。じゃないと、どこかに放置しそうだからな。
「まあ、放置されたところで強く生きると思いますよ。いろいろ考えるようになってきましたから」
そりゃ幽霊に憑依されてたら強くもなるだろうよ。
「ベーは取り憑かれているけどね。いろんなのに」
メルヘンはお口にチャックしとけや。
「んじゃ、送って来るわ」
見習い魔女二人とユウコさんに触ってもらい、転移バッチ発動。館へ飛んだ。
館も夕食時のようで、イイ匂いを立たせていた。
「ここがオレんちだ。館って呼んでいる」
なんか出入りが激しくなった玄関から中に入ると、珍しいヤツがいた。カイナの娘だ。出産して浅草に閉じ込めれられていたヤツだ。
「レニスじゃん。浅草から出してもらえたんだ。赤ん坊は元気のようだな。シャーロットだっけか?」
顔つきもしっかりしてきたな。
「シャーロットってなによ? ルヴィレイトゥールよ」
「ルヴィレイトゥールか。じゃあ、ルヴィだな。イイ名前だ」
「三秒後には忘れているに飴一つ」
掛け金やっすいな!
「抱いてあげて」
なんか無理矢理渡されたが、赤ん坊を抱くなんざ慣れたものよ。おーよしよし。
「じゃあ、任せた。強い子に育てて。たまに顔見せに来るから──」
え? と顔を上げたときにはレニスが消えていた。はぁ?




