1758 食べることは生きること
ウサギの肉がイイ感じに焼けてきた。
「炭酸かな?」
まだ酒が飲めないので串焼きには炭酸を合わせるとするか。
「ラムネならあるか」
カイナーズホームで懐かしくなって箱で買ってしまった。
結界に氷を入れてラムネ瓶を突き刺す。なんか夏祭りとかしたくなるよな。
「いい匂いだな」
もうそろそろってときに副館長と見習いたちが上がって来た。帰ったんじゃないんかい!
「これがお前さんところの料理かい?」
「料理ってほどでもねーよ。ウサギの肉を串に刺して焼いただけのものさ。キノコやフクスを焼いたりもするな」
フクスはアスパラみたいなものだな。春に生る山菜だ。塩漬けにもしたりするな。
「食いたいなら食っていきな」
オレは食いたい者を拒否はしない。食えないで苦しんだ時期があるからこそ食べたい者を拒否したくないのだ。
「では、遠慮なく」
見習いたちが串焼きに手を伸ばした。
「焼けてないのは食うなよ。腹痛薬の検体にするぞ」
見習いとは言え、いや、見習いだからこそ食べ盛りなんだろう。焼いた側から食らいついている。
「大図書館はもっと食わせてやれよ」
そばかすさんから聞いてはいたが、本当に碌なもん食わせてもらってないんだな。だからこそそばかすさんには旅に出させて食べるものを探させたいのだ。
「この毒みたいにピリピリするの美味しい!」
「ほんと! こんな毒なら毎日飲みいよ!」
やっているだろうとは思っていたが、本当に毒を食わせていたんだな。まあ、オレもやってたけどよ。毒に耐性をつけておかんと命がいくつあっても足りないからだ、薬師ってのは、な。
「キノコなんて臭いと思ってたけど、こうして焼くとこんなに美味くなるのね!」
「フクスも美味しい! 苦味が全然ない!」
「今の魔女は山菜採りもせんのか?」
「オレはオババから採り方から食い方まで教わったぞ」
「そう簡単に山にも行けんからな」
「そういうところがダメなところだよな。一季節くらい山に籠って実地研修をさせろ。甘ったれた魔女にしかならんぞ」
まあ、オババが特別なんだろうけどな。それでもこの世界で生きていられるのはオババのお陰だ。
「考えておこう。お前さんに任せた見習いたちは顔つきも変わっていたしな」
「ベーの無茶振りに堪えた見習いさんって、ある意味凄いですよね。最近ではなんの躊躇いもなく殴ってますし」
それはオレの意図するところではない。殴らないで済むなら殴らないで欲しいです。オレの尊厳を守るためにもな。
「あ、ベー様。次を焼いてください。あと、漬物も食べたいです」
注文の多い幽霊子だな。てか、オレは一本も口にしてないんですけど!




