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172 才能は宝なり

 村長宅を後にし、雑貨屋に顔を出してから我が家に帰ると、砂場でトータとドワーフ三兄弟が遊んでいた。


 なに気に覗いて見ると、砂場の両端にミニチュアな要塞が作られて、これまたミニチュアなゴーレムが作られ戦っていた。


 ……おもしろいことしてんな……。


 片方にはドワーフ三兄弟。もう片方にはトータが碁盤目な戦場でミニチュアなゴーレムを一体ずつ動かしてチェスや将棋のように遊んでいるのんだから感心もするさ。


「おっちゃんの子、つーか、ドワーフって土魔法に長けてんのか?」


「他の種族よりは優れてっかもしんねぇが、デンコは特別優れてんな」


 デンコってのは三兄弟の長男で、年は七歳だ。


「人のことは言えんが、天才だな」


 オレも土魔法の才能は他より高いが、デンコの才能はそれ以上の動きを見せていた。


「なあ、おっちゃん。デンコをうちに預けねーか? つってもおっちゃんの家からの通いになるが、オレの土魔法を伝授させてくれねーか。これだけの才能を眠らせておくなんて勿体ねーよ」


 土魔法の汎用性や利便性を知っていたから願ったが、一人でやれることには限界がある。何度土魔法の使い手がもっといてくれたらと願ったもんだ。


「そ、そりゃ、願ってもねぇことだが、なんでこんなによくしてくれるだぁ? おらたち、あんたに返せるもんなんかねぇだよ……」


「人は力なり。そして、才能は宝なり。そこに金の卵を生む鳥がいんだぞ、欲しいと思うのが人情だろうがよ」


 物や技術は人が生み出す。人がいなけりゃ人の社会は成り立たない。なら優秀な人材を求めるのは自然な欲求だ。なにもせず他にもってかれるなんて悔しいじゃねーか。誰よりも早くその才能に出会えたってのによ。


「まあ、疑問に思うのも当然。不審に思うのも当然。世の中人を騙すクズが多いんだ、素直に信じんな。疑い、考えろ。だからまずおっちゃんらで話し合え。そして、デンコに決めさせろ。渋々こられても迷惑だからな」


 どうせなら気持ちよく、やる気を見せてくれた方が教える方も頑張り甲斐があるってもんだ。


「さて。オレも島にいく準備をしねーとな。おっちゃんは嫁さんと一緒に今後必要なもんを漁っといてくれや」


 そう言って保存庫へと入る。


 まあ、下見なんで急ぐこともねーんだが、やりたいときにやれねーのが世の常。ならやれるときにやれるだけやれだ。


 農作道具部屋から背負い籠を十個持ち出し、結界台車に積み込む。背負い籠はなにかと役に立つからな。


 草刈り鎌にスコップと言った土木道具に、ちょっとした家の修理をする工作道具、鍋や釜、茶碗や皿、あと、簡単な鍛冶道具に武器を結界台車に載せていく。


「お、イイのはあったかい?」


 武器部屋に入ったらおっちゃんの嫁さんがいたので声をかけた。


「あ、はいぃ。いいのばかりで迷ってますだぁ」


「アハハ。そりゃ、作り手としては嬉しいセリフだな。でも、なんで武器部屋にいんだ? まあ、必要なら勝手に持ってけばイイけどよ」


 護身用か?


「あ、いや、ちょっとしたもん切るのが欲しくてな、探してたんだよ」


 ああ、確かにド田舎には必要だわな。


「これじゃダメなのか?」


 手が届く場所にあった短剣をつかんで掲げて見せた。嫁さんにちょうどイイんじゃね、これ?


「おらの手にはちょっとデッカイだよ。もうちょっと小さいのが欲しいだぁ」


 なるほど。確かにその短剣は人用に創ったもの。ドワーフのように短くて太い指には合わねーか。


「ちょっと手、見せてくれっか?」


「へ? あ、ああ。わかっただよ」


 疑問に思いながらも差し出してくれた手をつかみ、じっくり観察する。


「……しっかし、よくこんな手で細かい作業ができるよな。ドワーフスゲーわ」


 短くて太い指なのに、この手は芸術的な動きを見せる。なんか魔法でも掛かってんじゃねーの?


「……よし。わかった」


 と、土魔法で短剣を変化させる。


「握りの巻き糸が外れちまったが、これでどうだ?」


 短剣を渡し具合を確めてもらう。


「……あ、ああ。いいだよ。ほんと、スゲェだな、あんた。まるで絵本の中の魔法使いだよ……」


「これ、努力の賜物なり。人の力だよ」


 確かに才能によるところ大だが、才能だけでは身につけられねーのが技術だ。努々忘れることなかれ、だ。


「まあ、他になんかあったら遠慮なく言ってくれや。おっちゃんらには気持ちよく働いてもらいてーからな」


 島にいく準備を再開し、整ったら港へと向かった。

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