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171 ド田舎は気配りが大切

「んじゃ、いくか」


 用意が整ったので出かけることにした。


「そ、そりゃなんだぁ!?」


 ヒィリアと言うクラゲの皮(皮膚?)で作った傘にドワーフのおっちゃんが驚いていた。


「ん? ああ、この時代に傘はないんだったな」


 田舎の雨具は麦ワラで編んだ簑がほとんどで、冒険者や金持ちは革の外套が主流だ。


「これは傘っつってな。雨具の一種さ。ほれ、おっちゃんも使え」


 ヒィリアは、皮(皮膚?)を持ち、死んでも皮(皮膚?)を残し、大量に打ち上げられるので、海の衆からは嫌われてるのだ。


 オレも見ててなんかに利用できねーかなと考えた末に、傘とカッパになんじゃね? と思い作ってみたらそれなりにできた。


 まあ、作ってはみたものの通気性がワリーからカッパは不人気だし、麦ワラ帽子が傘なので片手を塞ぐ傘は邪魔なんだとよ。


「……ス、スゲェだなぁ……」


「需要はねーから保存庫の肥やしになってるがな」


 結構便利だとは思うんだが、そーゆー文化がねーとなかなか受け入れられねーんだよな、この時代(地域)って。


 まあ、別に広めたいわけじゃねーし、オレ用に作ったもの。どうでもイイわだ。


 なんて製作談義をしながら村長宅に到着する。


 さすがにこの雨では外仕事はしてねーようで、家ん中で仕事をしていた。


「邪魔するよー」


「おー。いらっしゃっい。雨ん中よくきたな」


 と、玄関間で麦ワラでゴザを編んでいた息子のナバラのおっちゃんが出迎えてくれた。


「おう。これがあるから問題ねーさ。それより村長はいるかい?」


「オトンなら小屋で家畜の世話してるよ。おう、ナーブ。オトン呼んで来てくれ」


「へーい。わかりましたー」


 村長宅で小間使いをしてるおっちゃんが家の奥で返事し、たぶん、勝手口から出て行った。


「今日はどうした? ドワーフなんて連れて?」


「ああ。オレんちで雇ったんでな、村の人別に書いてもらおうと思ってな」


「おいおい、鍛冶屋なんて入れたらザージが怒るぞ。ただでさえお前を嫌ってんだからよ」


 一応、住み分けはしてるのだが、素人が鍛冶をしているのが気に入らないよーで、なにかと反発してくるのだ。


「大丈夫だよ。このおっちゃんは革職人だし、鍛冶は苦手だって言ってたからな。ザージのおっちゃんの場は荒らさねーよ」


「ドワーフの革職人か。そりゃ珍しいな」


「まーな。だが、腕は王様御用達になれるくらいだぞ」


 将来はブランド化して世界一の革商人にオレはなる──かどうかはわかんねーが、まずはオレのために働いてもらうさ。


「おー、ベー。待たせたな。まあ、座れや」


 と言うので遠慮なく席に座らしてもらった。もちろん、ドワーフのおっちゃんもな。


「で、今日はなんだい?」


「昨日、バリアルの街にいってきた報告とこのドワーフのおっちゃんのことだ。まずは報告な」


 冒険者ギルドからもらった受領印を出した。


「前に言ったように村の護衛依頼を出してきた。まあ、来ることはねーと思うが、万が一きたときは知らせてくれ。なんとかすっからよ」


「そうか。わかった。ご苦労さんな」


「あいよ。次は王都で依頼を出してくるな。まあ、ルクク次第だがよ」


 ルククにも仲間との付き合い(?)があるんで、そうそう遊びにはこれない。半年いる間にこれんのは大体二十回あるかないかだ。


「まあ、その辺のことはベーのいいようにやってくれ。責任はわしが取るからよ」


「了解。イイようにやるから安心しな」


 そう言ってもらえるだけで頑張り甲斐があるってもんさ。


「で、そっちのドワーフはなんだい?」


「このおっちゃん──じゃなくておっちゃんの一家、五人を村の一員にしてくれや。税金はオレが支払うからよ」


「まあ、村の一員になるのは構わねーが、なんでお前が払うんだ?」


「あ、いや、言っておいてなんだが、すんなり許可出したがイイのか?」


 渋られると思っていろいろ考えていたんだがな。


「いや、そんなもん今さらだろ。どうせお前のことだからドワーフの腕に惚れたんだろう」


 さすが村長。わかってらっしゃる。


「だが、ドワーフを入れたらザージが激怒しかねんな」


「ナバラのおっちゃんにも言ったが、このおっちゃんは革職人だ。鍛冶はやらねーよ」


「そうか。なら問題ねーな。で、あんたさんは名はなんと言うんだい?」


「オ、オラ、ジェロガだぁ。よろしく頼むだよ」


「ジェロガか。村長のジロンだ。こちらこそよろしく頼むよ」


 お互い握手して挨拶を交わした。


「ドワーフのおっちゃんらは最近きたばっかりでいろいろ忙しいから、家族の紹介は落ち着いてからな。あと、買い物にくっかもしんねーから村長から村の皆にそれとなく言っててくれや。お互い無駄ないさかいさせたくねーからよ」


「ああ、わかった。酒盛りしたときに言っとくよ」


 雨の日は仕事は休み。こーゆーときに親交を深めましょうと酒盛りするのがこの村の習わしなのだ。


「あ、それとな、あんちゃんの店に獣人の客がいっぱいきてるからそれも言ってくれや。なんでも村をオークに襲われたとかで逃げてきたそうだが、幸いにして同族の集落に受け入れてもらえるらしくて、今は体を休めているところなんだってよ。七日か八日はいるようだから無下に扱わんでくれな。あんちゃんの上客なんでよ」


「わかった。それも言っとくよ」


「ありがとな、村長」


 まったく、話のわかる村長で助かるよ。


「んじゃ、最初の税金とバリアルの土産だ。皆に振る舞ってくれや」


 家族五人で銀貨三十枚(一年分の税金)と酒壺(二十個)を収納鞄から出した。


「ありがたくいただいておくよ」


 ド田舎ではこーゆー気配りが大切なんだよ。


 またなと村長宅を後にした。

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