17 お昼にするよ~
「お~い、あんたたち、お昼にするよ~!」
おっと、手紙に集中し過ぎたぜ。
テレビもないこの世界(時代)で、情報を得るには手紙か本、またはいったことがある人から聞くしかない。
周辺国までなら冒険者や行商人からの情報で得ることが可能だが、さすがに大陸を離れると未知の世界になる。
大陸間を渡る船──飛空船があるのでラーシュのいる大陸と国交はあるものの、こんなド田舎にまで届く恩恵はない。それどころか飛空船があることもこの海の向こうに大陸があることも知らないヤツがほとんどだ。
幸か不幸か、オレには昔(前世)の記憶がある。いろいろ役立ってはくれるが、下手に知識があるだけに、なにも情報を得られないことが不安になってくるのだ。
それに、昔(前世)のオレはテレビっ子(二十代後半からだが)。テレビが親友だった。
生まれて五歳までは生きることが忙しく、生活に慣れてからは三つの能力や魔術を使えるようにするのでやっぱり忙しかった。
去年辺りから余裕が出てきたせいか、やけに情報を求めるようになったのだ。
行商人のあんちゃんから本や話を得てはいるが、本は貴重な上に高く、オレの稼ぎでは月五冊がやっと。話も一晩聞けるだけの内容しか得られない。
だから、ラーシュからの手紙(半年分なので文庫本三冊ぐらいの量になる)はなによりの情報源であり娯楽なのでつい時間を忘れて読み耽ってしまうのだ。
「サプルはオカンを手伝え。トータは荷物をそこに纏めろ」
辺り一面にラーシュからのお土産を広げた二人に命令する。
あんちゃんの命令は絶対(日頃の威厳がものを言うのだ)。ぶーぶー文句を言いながらも命令に従った。
よくこれだけの量をあの中に入れたなと感心しながらトータと二人で一ヶ所に纏め、取っ手付き結界で包み込んだ。
「さて、どうするかな?」
量が量だけに家の中に運ぶのも邪魔だし、保存庫に置くと先伸ばしにしそうだし……まあ、しゃーない。家の前に置いといて帰ってきてからやるか。
ラーシュの国には大魔道師がいて、このお土産──なまものには魔術結界が施されている。結界を解かなければ腐ることはないのだ。
一応、結界で包んだまま家の前に置き、中へと入る。
昼は朝の残り(肉まんは結界で閉じ込めるのでできたてのまま)なので用意に時間は掛からない。
シチューをサプルの魔術で温め、冷えたゆで卵に漬け物。魚の練り物は朝でなくなったので川魚の串焼き。
我が家の食卓は昼も豪華である。
「いただきます」