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150 ご愁傷さま、タケルくん

「ルクク、また明日な!」


 言ってルククの背から飛び下りる。


 下は海。人魚らの町があるところだ。


 結界を纏っているので三百メートルの高さからでもなんら問題はねーし、怖くもねー。夏はよく飛び込んで遊んでるから慣れたもんさ。


 水柱を立てず、真っ直ぐ入る。


 水深は六十メートルあるので激突する心配もない。重力を操作して海底──広場に着地する。


 夕方なので広場には人(魚)の姿は少ない。子どもが何人か遊んでいるくらいだ。


 ……そう言やぁ人魚の子供って初めて見たな……。


 こちらを見てなにか言っているよーだが、気にせず領主館へと向かう。


 人魚も昼間動く生き物なので人(魚)通りは昼間より少ない。が、なにやら武装した人魚が多く目についた。


 ……人魚の冒険者か……。


 人魚の世界にも冒険者ギルドはあり、この町にも支部はあって、そこそこの数の冒険者が登録してるそーだ。


 先の帝国の襲来騒動の陰はもうなくなり、領主館は通常運転していた。


「うっす。ウルさんいるかい?」


 顔見知りの門番に挨拶する。


「いらっしゃいませ、べーさま。ウルさまでしたら捕獲施設にいっております。呼んできましょうか?」


「いや、こっちから行くよ。あんがとさん」


 門番に礼を言って捕獲施設へと向かった。


 エリナ用の食料(生命力高そうな海の魔物)を収容しておく施設であり、ハルヤール将軍の、つーか、この町の公共事業として人魚の職人やら捕虜らに造らせているのだ。


 とは言っても造り始めて数日なのでそんなにはできていない。冒険者らが捕虜してきたものを入れる檻が数個と事務所的な簡易建物(人魚にも土魔法を使える者はいる)があるだけ。港の北側を拡張するために捕虜らが掘り広げているところだ。


 ……さすがファンタジーの海。カバ(のようなもの)がいやがるぜ……。


 檻に入れられた謎生物を見ながら事務所的な簡易建物に入る。


「ウルさんいるかい?」


「べーさま!?」


 と、なにやら六人くらい集まってミーティングみたいなことをやっていた。


「仕事中、ワリィ。ちょっと時間くれねーか?」


「はい。わかりました。少々お待ちください」


 あいよと答えて外に出てカバ(のようなもの)を眺めながら待つ。


「お待たせ致しました。それでどんなご用でしょうか?」


「ああ、ちょっと紹介したいヤツがいてな。今、海の上つーか、空で待たしてあんだ。ワリィけど、海の上まできてくれっか?」


「紹介、ですか? はい、わかりました」


 と了承してくれたので海面へと向かう。


 海から顔を出すと、サプルが操縦するジェット機がなにやらアクロバットなことをしていた。


 ……タケル、生きてるかな……?


「な、なんですか、あれは!? 鳥ですかっ?!」


 クールなウルさんが目を大きくさせて驚いている。あら新鮮。


 なんて萌えている場合じゃねーな。光球を空へと放ち、降りてくるよう合図する。


「あれは飛行機って言う空を飛ぶ道具だよ」


「ち、地上には、あのようなものがあるんですか……?」


「いや、あれはこの世に一つしかねーものだよ」


 光球に気が付いたサプルがアクロバットなことをしながら降りてきて、ピタリとオレらの前に着水させた。


「あんちゃん、見てた! スゴいでしょう!」


「ああ。スゴいスゴい。でも、タケルのこと考えてやれよ。タケル、生きてるか?」


 はしゃぐサプルをなだめ、海から上がって白目剥いてるタケルの頬をペシペシ叩く。


「……う、ん、うーん……あ、れ? べーさん……?」


 あの操縦を見て情けねーとは言わんが、ちと軟弱すぎねーか? そんなんで良く生きてこられたな、お前は……。


「しっかりしろ」


 複座の後ろに座るタケルの首根っこをつかみ、コクピットからつかみ出した。


「ウルさん。こいつが紹介したいヤツだ。ほれ、自己紹介しろ」


 と、ウルさんに向けてタケルを突き出す。


「へ? え? はぁ!? に、人魚?! え、あ、えぇぇぇっ!!」


 ったく、こいつは。


「頭を冷やせ、アホが!」


 手を放し、海に落としてやる。


 あっぷあっぷゲボゲボしながら自力でジェット機に這い上がってきた。


「……容赦ないですよね、べーさまは…」


 そんな突っ込み聞こえません。


「……ひっ、酷いですよ、べーさん……」


「知るか。ちゃんとくる前に人魚だってこと言ってあっただろうが。それでなんで驚くんだよ」


「いや、普通驚くでしょう! 人魚なんてマンガかアニメの中でしか見てないんですからっ!」


「それ以上のこと経験してんだろうが、人魚くらいいて当然と納得しろ。この世にはまだまだファンタジーな生き物がいんだからよ」


 ファンタジースゲェーくらいの気持ちでやってかねーとこの先身が持たねーぞ。マジで。


「時間もねーし、とっとと進めるぞ。ウルさん。こいつはタケル。しばらく面倒見ることになった。こいつは、海の中を進む船の船長で、この空を飛ぶ道具の持ち主だ。今日、これを港に留めるからよろしくな。あと、海の中を進む船、これなんだが──」


 と、結界術で潜水艦(三十センチくらいのサイズ)を創り出す。


「まだいついつとは決めてねーが、桟橋に停泊させるからきたら攻撃しねーでな。これもいついつとは決めてねーが、桟橋付近に新しい港を創る。たぶん、今の港の三倍以上はデカくするから頭ん中に入れといてくれや」


 やること多いから二、三ヶ月は先になりそうだがな。


「は、はい。わかりました……」


 さすがウルさん。話が早くて助かるぜ。


「で、この人はウルさん。港の下にある町の領主代理だ。この海域のことや海の事情が知りたいときはウルさんに相談しろ。ウルさんも忙しいだろうが頼むわ」


「わかりました。べーさまの頼みとなれば喜んでご相談に乗らせていただきます」


「ほんと、ウルさんには苦労かける。ありがとな」


「お気になさらず。我々の繁栄はべーさまあってのもの。べーさまの願いを優先させろとハルヤールさまに命じられてますから。では、失礼します──」


 柔らかい笑顔を残して海の中へと戻っていった。


「んじゃ、サプル。港に着けたらタケルを上に連れてってくれ。オレはちょっと桟橋の様子を見てから上がるからよ」


 桟橋にいったの去年の秋が最後だからな、波で壊れてるかもしんねーからな。一応確認しておかねーと。


「わかった。じゃあ、タケルあんちゃん、乗って!」


「え? はぁ? なぜに?」


 わかっているだろうが、それを認めたくないタケルくん。諦めろ。


 空飛ぶ結界を創り出してジェット機から飛び移る。


 なにやらタケルが騒いでいるが、うちにくるとはそーゆーこと。慣れろ(諦めろ)だ。


 港、目の前だってのに、噴射全開で大空へと飛び立った。


「……ご愁傷さま、タケルくん……」


 無事還ってくることを祈り、桟橋へと向かった。

誤字報告ありがとうございます。

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