1380 メガネ女子
「オカン。体が丈夫だからって過信するなよ。妊娠はちょっとしたことで流れたりするんだからよ」
オレもそこまで詳しくねーが、オババから出産の大変さや事例は聞いている。ましてやこんな時代では死ぬことだってあるのだ。
「わかってるよ。あんたの大切な兄弟なんだからね。しっかり産むよ」
四人目ともなると説得力があるから不思議だよな。
「ああ。頼むよ」
これで診察を終え、オカンを開放してやる。
オカンとオカンつきのメイドが寝室を出ていき、サラニラと二代目メイド長、見習い魔女たちを連れて診療室へと場所を移した。
「男のオレが訊くのはアレだが、種族別の月のものを書いた資料なんてあったら見せてくれや」
種族に関係なく女が子を産む。なら、月のものがあるはず。そして、それを調べた資料があるはずだ。
「畏まりました」
と、二代目メイド長が棚から資料を出してくれた。ほんと、優秀なメイド長だよ。
「……やはり、人により酷いときがあるようだな……」
生理痛は人ぞれぞれ違う。重い者もいれば軽い者もいる。診療室に定期的に来てる者が何人かいた。
「はい。ですが、酷いときは休ませておりますので重症になっている者はおりません」
「カイナーズホームでいろいろ売っているからね」
まったく、カイナーズホーム万歳だな。
「魔女は月のものはどう対処している?」
「ちょっと、べー。デリカシーがないわよ」
「医学の前にデリカシーはねーし、知識の前に男女の区別はねーんだよ」
つーか、サラッとデリカシーとか使ってんな、このメルヘンは。
「男のオレに抵抗あるならサラニラが聞いて文字として残しておけ。魔女の知識は役に立つからな。ってか、医学を修めた魔女をうちに派遣なんてできるか? ちゃんと報酬を出すからよ」
見習い魔女に委員長さんがいねーからか影が薄い。委員長さんみたいにグイグイ来いよな。
「……は、話しておきます……」
メガネをかけた大人っぽい魔女さんが答えた。
「あんた、名前なんだっけ?」
「今さらなことを恥ずかしげもなく訊くわね」
それがオレの長所ですから。
「名前を覚えないところは短所だけどね」
メルヘンは本当に容赦ない突っ込みをします。いや、ここ最近、幽霊もそうだけど!
「ロ、ロミナです」
「もしかして、医学を学んでたりするのか?」
四人の中で集中して聞いていた。医学に興味があるんじよゃねーかと思ったのだ。
「まだ本を読んでいるだけです」
まあ、見習いだしな。そんなものか。
「なら、サラニラに魔女のやり方を教えてやってくれ。サラニラ。ワリーがメガネ女子の面倒見てくれや」
見習いとは言え、知識量はサラニラより多いはずだ。これはメガネ女子のためでもありサラニラのためでもある。
「わたしは構わないわ。魔女さんたち、いろいろ知ってて勉強になるからね」
話をしたことあるんだ。
「ロミナ。よろしくね」
「は、はい。こ、こちらこそよろしくお願いします」
ってことで魔女さんの世話係ゲット。よろしくお願いしやっす!
「どこまでも人任せの人生よね」
それもオレの長所です。
「じゃあ、解散。オレはオババのところにいってくるよ」
出産はオババがやるはず。なら、挨拶しておこう。なんだかんだで長いこと会ってねーしな。
診療室を出て食堂に向かう。
なんだかんだとお昼近くまでかかってしまった。昼食をいただいてからオババのところにいくとしよう。
「べー。残りの魔女さんたちも面倒見てあげなさいよ」
「別に好きなことしてりゃイイじゃん。大した制限かけてねーんだからよ」
「預かったのベーでしょうが。ちゃんと責任を持ちなさいよ」
責任はちゃんと持ってるわ。魔女さんたちの不祥事はオレが責任を持って解決してやるよ。
「わかったよ」
これまでの魔女からして、なにか得意分野や才能持ったの、なにか問題を抱えたヤツと様々。よくもまあそんなのを預けてくれたと思うが、ちゃんとこちらの得になるようなヤツを選んでるから叡知の魔女さんは妙だよな。
食堂のテーブルにつき、コーヒーをお願いする。
魔女さんたちは、カフェオレを頼み、緊張しながら飲み始めた。
そんな三人を眺めながら過去の姿を思い出した。
……うん。いたな。この三人……。
モブのような魔女にそばかすの魔女。あと、金髪の魔女。ってか、漫画喫茶にいたあの二人をララちゃんに任せたの失敗したかな?
まあ、あの二人は引っ込み思案なところが見えた。最前線で自己主張を学ばせたほうがイイやろ。テキトーだけど。
「あの魔女さんもなんでべーに預けたのかしらね? 真っ当に育たないわよ」
真っ当じゃないからオレに預けたんだろう。押してダメなら引いてみな理論でよ。
まったく、これだから長年生きたヤツを相手にするのは嫌なんだよ。こちらの見えないところを見てるからよ。
「きっと相手もそう思ってると思いますよ」
だから嫌なんだよ。化かし合いに発展するんだからな……。
「さて。まずは名前を教えてもらえるかい?」
「べーに名乗るほど無意味なことはないわよね」
メルヘンの容赦ない突っ込みがウザいです。




