表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/1719

13 内職

 オレが作った荷車は、積載量は一般の荷車と変わらないが、御者席を高くしていることにより、その下を荷物入れに充てている。


 泥が当たるところなので丸みをつけているためそれほど物は入らないが、バケツ四つは入る容量はある。


 馬にも両側に鞄を背負わせることもできるし、馬車の側面にはフックもつけているから積載量はさらに増やすことが可能だ。


 オババにやる結界詰めを御者席の下に入れる。


 入れると、まだ余裕があるので、また保存庫へといき、集落と浜辺にいるガキどもにやるクッキー(木箱入りのを四つ)を持ってきて詰め込んだ。


 小麦=パンが当然の世界でクッキーはパンと見なされない。ましてや作り方を知る者など誰もいないので、クッキーは我が家秘伝のお菓子としている。


 まあ、教えてもイイんだが、砂糖の代わりに蜂蜜を入れているので、教えたところで蜂蜜を獲れるヤツは村に一人か二人ぐらい。さらに蜂の巣と蜜を分離できる方法と手段を持っているのはオレだけなので教えても意味がない。


 それにだ。クッキーを作る──正確に言えば焼けるのはサプルだけ。村に(かまど)や暖炉はあってもオーブンなどないから作ろうにも作れないのだ。


 結果、クッキーはうちの専売特許。注文がひっきりなしにやってくる。だが、これを商売にしようとは思わない。


 いや、物々交換しているから商売とも言えなくないが、暴利な取引はしていない。相手はガキどもだし、ガキでも用意できるものだ。正当と言えるだろう。


「お前ら、がんばるのはイイが、ちょっと休憩しろよ」


 がんばる二人に声をかける。


 魔力があるとは言え、まだ肉体や精神が未熟な子どもである。無理したところで身には付かない。そう日頃から言ってるので二人は素直に訓練を止め、水場へと駆けていった。


 そんな二人を目で追いながら家に入り、作業場(暖炉の前がオレ用の作業場だ)から今内職しているものを一式持って外の臨時作業場へと移した。


 内職にもいろいろあるが、一番実入りがよく、内職しているヤツらとかぶらないものが冒険者相手のものだ。


 だからと言って剣や槍、防具類を作っているわけじゃねー。いや、そんな専門知識や技術が必要なものじゃなく、素人──とまでは言わないが、それらを作る技術があればちゃんと売れるものを作っているのだ。


 革のバック(バッグ)やベルト、簡単な革靴、探索用の長棒、使い捨ての投げ槍、石矢、鉄の矢、狩り用の小型弓、斧の柄、練習用の木剣、木槍と、いろいろ作っている。


 まあ、昔(前世)から木を切ったり削ったりと木工作業は好きだったし、力と結界があるので機織り機の部品を作ることだって余裕である。


 実際、二台分は作って山の女衆にやって毛長山羊の毛でいろいろ作ってもらっている。


 いろいろ作っているオレではあるが、ここ最近の内職は、投げナイフ作りだ。


 投げナイフは武器屋でも売っているし、鍛冶屋の領分だが、この世界の投げナイフの種類が余りにも少ない。


 だいたいにしてナイフを投げる冒険者が少ない。なんせ、実力社会の冒険者。魔力球や魔力矢も出せないヤツは駆け出しと見られる。


 なら、そんな駆け出しに売れば良いじゃない。もともと投げナイフなんて牽制や不意打ちに使っているにすぎない。腕のある冒険者や中級の魔物には大した効果もないのだから。


 だからと言って投げナイフをバカにしたら痛い目にあうよ。いろいろな種類を作れば隠し武器にもなるし、毒を塗ればオークでも殺せるんだからな。


 まあ、その有用性と認知度はまだまだ低いが、この村にくる冒険者にはウケは良い。ちょっとずつだが、口コミで広がりは見せている。


 なによりオレの作る投げナイフは安いときてる。なんたって土魔法で砂鉄を集めて結合するだけ。実に簡単である。練習用に石のナイフは十本で小銅貨三枚。約三百円とさらに安い。


 大ヒット、とまでは行かないまでも、そこそこ売れる自信はある。有用性がわかれば他が真似するが、オレは別に構わない。


 元々内職の一つだし、自分で使えば良いだけ。オレが本気で投げれば竜の鱗すら砕く(だけね)。なんの問題ナッシング、である。


「今日はクナイ型のを作るとするか」


 砂鉄の入った箱に右手を突っ込み、クナイの型をイメージして砂鉄を結合する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ