1292 到着
次の日、予想以上に代表さんの動きは早く、朝に使いの者がやって来た。
「役場に来ていただきたい。マドリオ様がお話したいそうです」
と言うのでミタさんだけを連れて役場へと向かった。
役場は町の中心にあり、役場と言うより牢獄? な感じだった。
「以前は砦でしたか?」
案内役の男に尋ねてみた。
「はい。そうだと聞いてますが、相当昔のようで詳しくはわかりません」
へ~。結構歴史がある町だったんだな。昔、戦いでもあったのか? いや、歴史探求はあとだ。今はこちらに集中しないとな。
「……しっかりしてるな……」
歴史があるにしては朽ちているところは見て取れず、数十年前に造られたと言われても疑うことはないだろう。
「魔法がかけられてますね。ただ、解けかかってる感じですけど」
オレには感じられんが、それなら納得だな。南の大陸は魔法が発展してるからな。あ、普及してるかは別問題ね。
「魔法の光か」
通路には魔法の光が等間隔に設置(?)してあり、充分足元が見える。結構魔法が浸透してるのか?
案内されたところは広い部屋で、年配の男たちが十数人いた。
椅子と言う文化はないのか、部屋には絨毯が敷いてある。
……インドっぽいな……。
まあ、インドの知識なんてないに等しいが、薄い知識で判断するとインドっぽいと感じるのだ。
「初めまして。ゼルフィング商会の長でヴィベルファクフィニーと申します。こちらの礼儀を知らないのでご無礼がありましたらご容赦を」
先制パンチとばかりにこちらから名乗りと挨拶をした。
「挨拶痛みうる。まあ、座ってくだされ」
客として扱ってくれると言うことか。どうやらバカではないようだな。
では、失礼してと靴を脱いで絨毯に上がり、皆と同じく胡座をかいた。
「北の大陸から来たと伺ったが、あちらもシャグラをするので?」
シャグラ? 胡座のことか?
「いえ。わたしどもの大陸では椅子に座ります。このような座り方はありません」
「それにしては堂が入ってますな」
「ゼルフィング商会はいろいろな種族と商売しておりますからな、相手に合わせるのは慣れております」
どうやらオレを見定めているようだ。
「お茶をどうぞ」
と、若い女が茶碗のような陶器を置いた。
金属製の急須? 土瓶? から茶色い液体を茶碗に注いだ。
「ロブロと言うお茶ですね。何百年も前から飲まれている一般的なお茶ですね」
と、レイコさんが教えてくれた。
「これはこのまま飲んでよろしいので?」
「ああ。口に合わなければ無理なさらず」
一般的に飲まれているものなら恐れる必要はなしと、ロブロをいただいた。
「……甘いですな……」
砂糖の甘さじゃなく、果物の甘さだ。
「口に合いませんでしたか?」
「いえいえ、あまりに旨かったので驚いてしまいました」
ハルメラン(黒丹病があった自由貿易都市だよ)でバルグル茶も旨かったが、これも負けてない。売れるぞ、これ。
「是非、仕入れたいですな。こちらの大陸でも受け入れられる味です」
一般的に飲まれているなら一般的に流通してるってこと。仕入れるのは難しくないだろうよ。
全部飲み干し、お代わりをいただいた。
「気に入ってもらえたら幸いです。ご要望なら用意しますぞ」
改めて対応していた男を見る。
代表の横にいることからしてそれなりの地位にいる者だろう。商人って感じがしないから党の幹部かな?
「はい。是非ともお願いします。礼は弾みますので」
「商人はいずこも同じですな」
「商人は損得で動きます。得になるなら国や種族は関係ありませんよ」
まあ、なんちゃって商人だが、損得は忘れたことはないぜ。
「この町に得はありますかな?」
やはり商人じゃないようで話が単刀直入だ。オレとしては助かるわ。
「もちろん、得だらけですとも」
商人としては弱みを見せるのは減点だろう。が、そんなに時間をかけてられねー。こちらも単刀直入といかせてもらうぜ。
「町の外、人がいない土地を使う許可をいただきたい。もちろん、使用料はお支払します」
無限鞄から金の延べ棒を二本を出して絨毯の上に置いた。
「なんなら食料でお支払いしても構いません」
男は代表を見ると、なにか目配せしてお互いが頷いた。テレパシーか?
「土地はなにに使うので?」
「外を見ていただければご理解いただけるかと」
意味がわからず視線を飛ばし合う男たち。
オレと話していた男が立ち上がり、窓へと向かった。
「なっ!?」
と、驚きの声を上げた。
他の男たちも立ち上がって窓へと向かうと、同じように驚いた。
「あ、あれはいったい!?」
「我が商会が所有する空を飛ぶ船、飛空船です」
こちらを見る男たちにニッコリ笑ってみせた。




