1283 魔女サダコ
旅は順調である。
「そう思ってるのはベー様だけですよね。今、巨大ワーガーと激戦になってますけど」
そう言われてもオレに出る幕なし。竜車を守るだけしかやることがねー。
「あーコーヒーうめ~」
皆が戦うのを観戦しながら飲むコーヒーの旨さよ。あ、信玄餅食いたくなった。
「ミタさん。たい焼きちょうだい」
さすがに信玄餅はないだろうからたい焼きをお願いした。
「あんこでよろしいですか?」
「それでお願い」
オレはたい焼きはあんこしか認めません。
「ってか、南大陸にはおっかねーのがいるんだな」
魔大陸にいそうな巨大ワーム。いや、ワーガーと言う土竜の一種だそうだ。
全長はおそらく三十メートルはあり、堅い鱗に守られ、ワームのような歯が何百と生えている。食われたら一瞬でひき肉だな。
「南大陸は竜の巣と呼ばれてますから」
雲の中じゃないんだ。夢がねーな。
「なぜ雲の中かは知りませんが、竜だって食べなきゃ生きられないんですから空でなんて生きられませんよ。浮遊島でもないと」
幽霊から現実を教えられるとか本当に夢がねーな。
「しかし、手間取ってんな。そんなに苦戦する相手か」
殲滅拳で一発だろうに。
「ベー様の基準は人の域から外れてましからね」
人を人外扱いしないで。オレはまだ人の域に入ってます。
「委員長さんが『お前マジふざけんなよ』って顔を向けてますよ」
デジカメを持つ委員長さんを見れば確かにそんな顔をしていた。オレらの会話(?)は聞こえてないはずなんだがな。
「言いたいことがあるなら言葉にしてくれる?」
いや、言いたくないのなら言わなくてもイイけどさ。
「呑気なものね」
「やることないからな」
ここでオレが出たら大顰蹙もの。シープリット族やザイライヤーのオネーサマ方の立つ瀬がねーよ。
「暇なら混ざって来てもイイぞ」
あの中に入れるならな。
「お茶に混ざるように言わないで! 軽く死ぬわよ!」
「魔女も戦闘力つけろよ」
「魔女をなんだと思ってるのよ! 魔女は知の探究者よ!」
「最近の魔女はしょうがねーな。うちのメイドを見習えよ」
まあ、別にメイドに戦闘力を求めたことはねーけどよ。
「あなたのところのメイドが特殊なのよ。と言うか、メイドと言う職業はあなたのところだけよ!」
「そうなの?」
皆普通にメイドとか言ってたから普通にメイドと言う職業があるのかと思ってたよ。この世界、転生者がいるからな。
「カイナ様が命名したと聞いてます」
あ、自重も根回しもしないバカがいましたね。疑いをかけた転生者諸君、大変失礼いたしました。
「あのよくわからない人なら納得だわ」
「ダハハハら! カイナのヤツ、よくわからないとか思われてやんの。ウケる~!」
「一番よくわからないのはあなただけれどね」
「ぶひゅっ!」
「ぷっ」
幽霊とメイドに笑われた!
「……オレ、わかりやすい男だよ……」
と言っても誰も信じてくれなかった。
ま、まあ、理解されないのならそれでもイイもん。オレ自身がわかってるならな!
「おらっ! いつまでちんたらやってんだ! さっさと終わらせろや!」
もう三十分も戦っている。休憩だって長すぎるぞ。
「わかりました! そろそろ決めるぞ!」
なんだ。遊んでたのかよ。魔大陸のヤツらはお遊びが好きだぜ。
それからネタ武器を与えたヤツらがワーガーにトドメを刺した。えげつな。
「ベー様が作った武器が、ですけどね」
「武器は使う者の技量が物を言うんだよ」
「完全にベー様の趣味を詰め込んだ武器ですよね」
「…………」
ま、まあ、そうだと言われたらそうだとしか返せないかもしれないです……。
「魔女さんたち。解体の時間だ」
命をいただいたら美味しくいただきましょう。あの鱗、なんかに使えそうだ。
「ルダール。竜車を先にいかせろ。解体はオレと魔女さんたちでやるから。あと、今日は酒を飲むのを許す。夜営地でたっぷり飲め」
まだ野蛮人を脱却してないヤツらには酒を飲まして自尊心を満たしてやり、少しずつ調教しないとな。
「さすがベー様! 先を急ぎます!」
ルダールはオレの思惑を理解してそうな感じで、わざと陽気な感じで隊商を出発させた。
「さて。解体しますかね」
綺麗なままで倒して欲しかったが、欲しいのは鱗と牙だ。今回は他のものは諦めよう。
「あ、あの、ぞ、臓器が欲しいのです。ほ、保存できるものをください」
なんか鋭い刃物を持った魔女サダコ。見た目だけではなく中身までヤヴァイヤツである。
「寄生虫とか気をつけろよ。地中にいるヤツはわけのわからん寄生虫がいたりするからよ」
「き、寄生虫ですか。そ、それは楽しみです」
「委員長さん。こいつ大丈夫なんだろうな?」
なんかヤバゲな臭いがプンプンするんだが。
「大丈夫よ」
なら、オレの目を見て言えよ。力強く断言しろよ。完全にヤヴァイヤツだと証明してんだろうがよ!
「しっかり見張っておけよ。黙って帝国に持ち込まれてもオレは知らんからな」
「努力するわ」
だからオレの目を見て言えよ! 不安すぎんだよ!
クソ。今度、叡知の魔女に会ったら文句言ってやるからな! 畜生が!




