1275 チョコバナナ
特別賞の賞品を決めてから一日。果物狙いのヤツらがやって来た。
「……結構特別賞狙いのヤツがいたんだな……」
上半身の背中に背負子を背負った(ややっこしいなもー)のが何十人といた。
「すべてがすべて戦いに誇りを持った種族はいませんからな」
「だな」
そんな種族がいたら真っ先に滅んでるわな。
シープリット族の顔の判別はできんが、体のサイズや毛色はさすがにわかる。
「一回り小さいな。若いヤツらかい?」
闘技場にいたヤツらは雰囲気で大人とわかったが、特別賞狙いのヤツらからはその感じがなかった。
「はい。まだ戦いに出たばかりのやその前のヤツらです」
バルナドはその引率か。副司令官になるヤツにはそう言う理由があるわけか。カイナーズって割りと真っ当な組織だったんだな。
「遅くなりました」
「その分、イイ仕事をしたんだろう?」
バルナドって表情筋が豊かだよな。ニヤって笑いやがるぜ。
「はい。くまなく探して採って来ました」
各自、背負っている背負子を下ろし、一ヶ所に纏めた。
「ちゃんと誰が採ったかわかるようにしてるよな?」
「もちろん。籠に名前を記入しております」
やはり副司令官になるヤツはそつがない。アッパレだよ。
「ミタさん。村の薬師殿と魔女さんたち、あと、メイド何人かで記録してくれ。写真つきで」
「データとして残すのですね」
ファンタジーの住人がデータとか言っちゃイヤン。いや、オレが言うな、だけどねっ。
「残してどうするの?」
と、委員長さん。いつの間に!?
「いたわよ。朝から」
そ、そうだっけ? まったく気がつかんかったよ。もっと存在感をアピールしろよ。
「あなたがなにを考えてるかわからないけど、その顔は無茶なことを言ってるのはわかるわ……」
口ほどに目はものを言うならぬ口ほどに顔はものを言うようです、オレの顔は……。
「オホン。魔女さんたちは学術名をつけてくれや」
「学術名? どう言うこと?」
「世界標準にするためだよ。帝国も南大陸になにがあるか知りたいだろう?」
ニヤリと笑ってみせた。
オレは、人のふんどしで相撲をとり、升席で楽しませてもらう。金と名誉はそちらで自由にしてくたざい、だ。
「南の大陸のことを知りたくないのならやらなくてイイぜ」
大きな利益がいらないと言うならそれもよし、さ。
「やるわ」
「物事がよく見えてなによりだ」
話のわかるヤツは大好きだぜ。
「あなたにどんな利益があるの? 損ばかりじゃない?」
「帝国がオレに付き合ってどんな利益があるかを考えれば見えて来るよ」
オレは帝国を利用する。だから帝国もオレを利用したらいい。持ちつ持たれつ仲良くいこうぜ。フフ。
「…………」
「そう怖い顔しない。こればかりは経験が物言うことなんだからよ」
「年下に言われても説得力がないわよ」
「アハハ。そりゃごもっとも。クソガキのセリフじゃねーな」
失敬失敬。こりゃ失言でしたね。
薬師殿が来て、シープリット族が集めた果物のことを教えてくれた。
その中にはバナナがあった。まだ緑色だけど。
「バナナはサプルとトータの大好物で助かるぜ」
去年、ラーシュが送ってくれたバナナは食べてしまったのだ。
「チョコバナナが食べれますね」
ミタさんも大喜び。ってか、なぜチョコバナナの存在を知ってんのよ?
「ファミリーセブンで売ってます。人気商品でなかなか買えないんですよ」
あのアウトよりの売店か。カイナーズホーム以上に混沌としてんな、うちは。
「じゃあ、熟したのでチョコバナナでも食うか」
オレにそんなに思い入れはないが、懐かしいものではある。せっかくだから食ってみるか。
「はい! すぐに準備します!」
甘いものには自己主張全開な万能メイド。いつもの三倍の力を見せて屋台を用意してチョコバナナを作り出した。
……出店かよ……。
「ベー様。試食をお願いします」
ミタさんが作るものにハズレはないのだから試食もないだろうが、まあ、オレが言い出しっぺなのだから毒味はするのが筋か。
この世界のバナナを食っているので躊躇いはない。パクりと食らいつき、モグモグゴックン。うん、チョコバナナやね。
「旨いんじゃね」
可もなく不可もないチョコバナナ。語れと言われても困ります。
「ミタさんも食ってみなよ」
誰よりも食いたいって顔をするミタさんに勧めた。
「美味しいです!」
それはなにより。どんどんお食べなさいな。
オレは一つ食えば充分。あとは好きにしてちょうだいな。
流れるようにチョコバナナを作るミタさんを眺めながらチョコバナナを完食。ごちそうさまでした。
「あなたのところに来ていろいろ食べたけど、これはもっとも美味しいわね」
委員長さんや他の魔女さんたちにも好評のようだ。
「チョコもバナナも南の大陸で採れるもんでできてるんだよ」
チョコはカイナーズホームのものだろうが、南の大陸には砂糖もカカオもある。このレベルになるまでにはたくさんの工程はあるだろうが、作れることは間違いねーさ。
「そうなの!?」
「ウソは言ってねーよ」
魔女さんたちの目の輝きが一段階アップした感じ。まあ、たくさんの工程を乗り越えてこの世界百パーセントのチョコバナナを作ってくださいな。




