1270 晴れ舞台
魔族のオネーサマ方が大量にやって来た。何事?!
「パートさんたちです」
パ、パート?! って、パートタイマーのパートか?
「なんでまた?」
オレも何気なく前世の言葉を使ったり広めちっまったから強いこと言えないが、もうちょっと世間に通じる言葉にして使えよ。うちが無国籍地帯になるわ。
……いやまあ、今さらだけどよ……。
「ベー様が次々と仕事を作るからです」
まさかオレが原因でしたっ!
「いや、それ以外ないでしょう」
蛇のような目を持つメイドさんからの容赦ない突っ込み。厳しいです!
「シフ様が嘆いていますよ。メイドを雇っても雇っても仕事が片付かないと」
「す、すみませんです……」
不徳なわたしめが全力で謝罪させていただきます。まあ、後悔したり改めたりはしないけど!
「いえ。雇用が生まれるので主婦の方々は助かってますから。ただ、シフ様の仕事が増えてますが」
「メイド長に感謝を」
遥か遠くでガンバっているメイド長さまに感謝の敬礼を送った。届くかは知らないけど。
「ってことで、あとはよろしくお願いします」
我にパートさんを使う才はなし。ってか、職人のクルフ族はどうした?
「パートさんたちに混ざって毛を洗ってます」
あ、そうなの。ご苦労さまです。
オレもパートのおば──じゃなく、オネーサマ方に混ざって毛を洗い、自分用にブラシを作り始めた。
「ベー様、器用ですね」
隣にいたシープリット族の……女か? 上半身の胸が膨らんでいるけど。あ、下半身を覗く勇気はないのでご勘弁を。
……そのエプロン姿がとてもセクシィーだこと……。
「まーな。昔、たくさん作ったからな」
ブラシ作りに嵌まったことがあって、いろんな毛で作ったものよ。
「つーか、同族の毛をブラシにするって気持ち悪くねーのかい?」
昔、ハゲに苦しんでいた貴族のために人の毛でカツラを作ったことあるが、仲介したあんちゃんは気持ち悪がっていたし、サリバリも変な顔をしていたもんだぜ。
「気持ち悪くはないですよ。寝床に自分たちの毛を使ってましたから」
「そう言うことする種族、いるんだな」
「まあ、魔大陸では毛が生えている種族は貴重ですからね。需要はあるんです」
去年まで世紀末な世界で生きてたのに、自然と需要とか言っちゃうとか、ほんと、成長が早いヤツらだよ。
「所変われば品変わるだな」
「あの、ベー様。わたしらの毛も買ってもらえませんか」
「売ってくれんなら買うよ。なんか他にも使い道がありそうだからな」
寝床になるくらいなら絨毯にもなるような気がする。野外で敷くものにイイかも知れんな。
「えーと、メイドさんは……」
「ここです」
蛇のような目を持つメイドさんが真後ろにいた。気配なっ!!
「ちなみに派遣団のメイド頭でルグランジェと申します」
胸の名札を指すルグランジェさん。
「お、おう。了解了解」
なにが了解なんだよ? と、突っ込む者はいないので、そのまま流させていただきます。
それからパートさんと一緒に毛を洗ったり、ブラシを作っていると、ルダールと副司令官──ではなく、今は遊撃団団長のバルナドがやって来た。どうしたい?
「いや、そろそろこちらに目を向けてもらえると助かるんですが……」
ん? なにがよ?
「……完全に忘れているのがベー様ですよね……」
そう褒められるとテレるぜ。って言うのは冗談です。その振り上げたハルバードを下ろしてくださいませ。
「ケガは治ったのかい?」
「はい。魔女どのが治してくれました」
あ、魔女さんたちもいたっけな。完全無欠に忘れてましたわ。
まあ、魔女さんたちは放置しておくとして、シープリット族を先に片付けますかね。ってか、もう夕方か。
「暗くなるから明日やるよ。それまで休んでな」
そう告げて、シープリット族の戦いですっかり広場となったところへと向かった。
「なにするんです?」
休んでなと言ったのに、ルダールとバルナドがついて来た。
「勇者たちが力の限りを尽くして戦ったんだ、その晴れ舞台を創ってやろうと思ってな」
武器を渡して終わりじゃ味気ねーし、名誉にも誇りにもならんだろうよ。
「我々のためにありがとうございます」
「気にすんな。オレの拘りだ」
やるなら派手にやる。それがオレだ。
右足で大地を叩き、すり鉢状の闘技場を創り始めた。




