1257 エボー
朝食が終わり、食後のお茶(オネーサマ方は甘いもの食ってるけど)を飲んでから本題へと入る。
「荷車を引かせる竜が欲しいんだが、近くで捕まえられないか?」
「この近くでは無理だろうな。マダルが溢れたから遠くに逃げたと思う」
マダル? って、ヤンキーのことか? 話の流れからして?
「どの辺ならいるんだい?」
「おそらく、バルバラット族がいるほうなら」
バルバラット? あ、トカゲさんたちのところか。荷車を引くような竜なんていたっけ?
「ミタさん。まだトカゲさんたちのところにカイナーズはいるかい?」
淡水人魚さんのところに移っちゃったかな?
「はい。中隊が駐屯しています」
中隊がどれだけの規模かはわからんけど、いるならそれでよし、だ。
「またお邪魔させてもらうってトカゲさんたちに伝えてもらってよ」
友好関係は築けているとは言え、一言あったほうがイイやろ。
「畏まりました。中隊と連絡をしますのでお待ちください」
オレは待つのが得意な男。いくらでも待ちますとも。
「捕まえるなら用意をして来る」
オネーサマ方が席を立ち、村へと戻っていった。
しばらくしてカイナーズの青鬼っ娘さんがやって来た。
……この青鬼っ娘さん、オレ担当になったのかな……?
「なったと言うよりさせられたが正しいのでは?」
レイコさんがオレだけに聞こえる声でボソッと呟いた。そこはかとなく失礼なこと言わないでくださいませ。
「まあ、ベー様担当になるとお給金が上がるそうですからよろしいんじゃないですか?」
それもそこはかとなく失礼だと思うのは考えすぎだろうか?
「あ、あの、わたしたちもついていってよろしいでしょうか?」
ん? ついて来んなと言ってもついて来るクセに珍しいな。
「別に構わんが、どうしたんだい?」
「あ、いえ、その、非番組の方々がアルバイトしたいと言いまして……」
つまり、下っぱの青鬼っ娘さんに訊いてこいとパシられたってことね。
「来たいなら好きにしたらイイさ。隊商の商品にする皮とか肉が欲しかったから狩ってくれんなら駄賃は出すよ」
さすがにヤンキーのように一匹千円は出せん。狩り尽くされても困るからな。駄賃ていどにさせてもらいます。
「ありがとうごさいます!」
ヒャッホー! な感じで去っていく青鬼っ娘さん。
「魔族ってよく働くよな」
イメージ的に怠惰な種族かと思ってたが、根は働き者なんだな。
「働けば暮らしは豊かになりますから」
とはミタさん。まあ、怠惰にならないていどに豊かになれ、だ。
青鬼っ娘さんと代わるようにオネーサマ方も狩りの格好になって戻って来た。
「なんか本格的な出で立ちだな?」
格好もそうだが、気合いも入っていた。なんのやる気スイッチが入ったんだ?
「我らもエボーは欲しいのでな」
エボーって言うのか、荷車を引っ張る竜は?
「そのエボーってのはなにを食うんだい?」
「なんでも食うが、肉が一番喜ぶな」
雑食な竜とかいるんだ。初めて知ったよ。
「ベー様。中隊と話がつきました。いつでもお越しくださいとのことです」
「あいよ。いくヤツは集まれ」
オネーサマ方は八人。魔女さんたちは五人。メイドは十人以上。カイナーズは……たくさん。非番、多くね!?
「オレの転移バッチで魔女さんらを連れていくから残りはミタさんたちで頼む。カイナーズは適当にいけ」
「畏まりました」
「了解です」
転移バッチ発動。トカゲさんたちの村へ──で、転移した場所にはカイナーズとトカゲの勇者がいた。
「またお邪魔させてもらうよ」
「いつでも歓迎する」
ミタさんたちも転移して来て、中隊が駐屯する場所に移った。
「エボーを捕まえたいそうだな」
駐屯のテントに入り、こちらが切り出す前にトカゲの勇者が切り出した。単刀直入で助かる。
「ああ。場所を知っていたら教えて欲しい。礼はするんでよ」
「いや、礼はいらない。こちらでエボーは害でしかないからな」
そうなんだ。ところ変わればってヤツか?
「じゃあ、すべて捕まえても問題ねーってことでイイんだな?」
「そうしてくれると助かるが、野生のエボーはすばしっこいぞ」
よくそんなのに荷車を引っ張らせようとしたな。まあ、野生の馬も気性は荒いけどよ。
「それは腕が鳴るってもんさ」
戦いはまるでダメだが、狩りはS級の腕前よ。
……ただまあ、熱くなると根絶やしにしちゃうけどな……。
「エボーがどんなのか知りたいからザイライヤー族のやり方で捕まえてみてくれよ」
エース的オネーサマを見ながら言った。
「わかった」
「カイナーズも自分たちのやり方で捕まえな。一匹につき五百円で買い取るからよ」
ヤンキーより安いが、あれはボーナスタイム。通常タイムに戻させてもらいます。
「了解です!」
安くなってもカイナーズのやる気は百二十パーセント。狙撃銃っぽいものを掲げて雄叫びを上げた。生捕りってのを忘れないでね。
「魔女さんたちは見学だ」
空飛ぶ箒を持っている魔女さんたちに注意する。なんかこちらもやる気百二十パーセントだから。
「わたしたちもやりたいです!」
と、戦闘系っぽい魔女さんが声を上げた。
「まずは先生方の見学だ。いきなり実践などさせられんよ」
なんか殺しそうな勢いだし。
「嫌だと言ってもやらせるから慌てるな」
オレはやる気のあるヤツにはとことんやらせる主義である。それこそ血反吐を吐こうがな。
「ザイライヤー族。準備はイイかい?」
「いつでも構わん」
では、エボー狩りの時間だ!




