1255 荷車作り
村から少し離れたところに工作小屋を建てた。
なぜかと言ったら村の周りが完全にカイナーズの駐屯地と化したからだ。
もう侵略じゃね? とか思わくもないが、オレの金が入っている時点で侵略したも同然。口にしたら特大のブーメランが突き刺さるだけである。
「今度はなにを始める気なの?」
「荷車作りだよ」
材料を無限鞄から出してると、委員長さんら何人かの魔女さんがやって来た。休憩か?
「あなたがなにかやると確実に予定が変わるからね、様子見に来たのよ」
まったくもって反論できぬ。しっかり見てこれから起こる予定変更に備えて下さいませ。
魔女さんたちの視線を一身に受けながら、一メートルくらいの大木を無限鞄から出して結界で木材とする。
本来なら乾燥とかいろいろ工程はあるが、我が結界はその手間の短縮を可能とする。が、防腐処理はいかんともならない。
結界を使用すれば簡単なんだが、それではオレの工作魂が許さない。おっと。くだらないとか吐き捨てくれるなよ。拘りは文化を発展させるんだからよ。
「それは?」
「木の樹液だよ。これを塗ると腐り難くなるのさ」
漆ではないが、荷車にはよく使われるものなのだが、村の周辺にはあまりない木で、採れる量が少ないのが難点だ。
しかし、我にはプリッつあんの能力がある。
残り少ない樹液も伸縮能力があれば万歳三唱。二百ミリリットルが二百リットルになりましたとさ。
「……あなたは、いくつ謎の力を持っているのよ……」
「これは共存体の力だよ」
その共存体はどこでなにをしているかわかりませんけど!
木材に樹液を塗って結界乾燥。イイ具合になったところで木工道具を使ってパーツ作り。以前は一分の一で作ったが、四分の一製作はちょっとムズい。
なんとか三時間くらいでパーツ完成。したら辺りはすっかり暗くなっていた。
「──うおっ! まだいたんかい!?」
委員長さんと三人の魔女さんが周りにいてびっくりこいた。
「あなたの集中力、どれだけなのよ?」
「オレはやるときは全集中する性格なんだよ」
この歳で薬師と名乗れる理由がそれです。
「ってか、見てて楽しいのか? 単なる工作だぞ」
木を削ったり組んだりしてるだけだ。これと言って特別な力は使ってねーぞ。
「あなたがすることすべてが興味あるだけよ」
「そんなおもしろい男じゃねーぞ」
オレはおもしろいことしてる自覚はあるがな。
「おもしろいじゃなく興味深いのよ。南の大陸に当たり前のように来れる村人にね」
叡知の魔女さんがなぜ委員長さんを選んだかわかるセリフだな。
「そうかい。なら、好きなだけ見な」
見られて困るような生き方はしてねーし、今さら監視の目が増えたところで気にもならねーよ。
委員長さんらに構わず荷車作りを続け、日付が変わる前に完成できた。
「うん。イイできだ!」
サリネには負けるし、自画自賛になるかもしれねーが、オレの中では会心のできだと思うぜ。
「そうなの?」
「──うおっ!?」
横からの声にびっくりポン。口から心臓が飛び出るかと思ったわ!
「集中するとまったく周りが見えなくなるのね」
「だったら驚かすなや! オレの心臓が死ぬわ!」
「驚きすぎて言葉がおかしくなってるわよ」
そうだな。ちょっと驚きすぎたな。冷静になろう。
ミタさんが用意しててくれただろうポットに手を伸ばし、カップに注いで口にした。あー旨いコーヒーだ。
「オレを見るのもイイが、夜中まで起きてるなんてお肌に悪いぜ」
「肌の心配より知的好奇心を満たすのが魔女と言う生き物よ」
ぐうの音も出ないほどの正論。いや、実態か?
「好きなことを好きなだけするには元気な体があるから。蔑ろにするヤツには明るい未来はねーぜ」
徹夜するオレだって日頃の摂生があるからだ。納得はされないだろうけど。
「心に留めておくわ」
そう言うところは素直なお嬢ちゃんだよ。
完成した荷車をいろんな角度から眺め、工程を頭の中でリピートする。
「……よし。覚えた」
錬金の指輪をして材料を並べる。
「錬金術作製!」
なんて叫ぶ必要もないのだが、ギャラリーがいると叫びたくなるのが男心なんですよ。
「錬金術!?」
なんて驚く魔女さんたち。驚くってことは錬金術は一般的じゃないってことだ。
「なんだい。帝国ではやってねーのかい? 今、世界では大人気なのによ」
いや、オレの脳内世界では、だけど。
「……帝国でも錬金術は人気よ。けど、村人がほいほい使えるほど簡単なものではないわ。何十年と研鑽した者だけが使える技なのよ」
「さすが帝国。いろいろやってんだな」
人族の中で一番技術発展してんのが帝国だってわかるよ。
「いろいろやってるあなたに言われてもね……」
まったくもってごもっともです。
錬金された荷車は十八台。大木一本で少ないと思うが、まだ練度が低いんだろう。精進だな。
「続きは明日──いや、もう今日か。起きてから再開だな」
ほっとしたら疲れが怒涛のように襲って来たぜ。
「魔女さんたちも風呂入って寝な」
カイナーズが設営した風呂があり、二十四時間使えるって話だ。
「ええ。そうするわ。皆、いきましょう」
魔女さんが去り、工作小屋を片付けてオレも風呂へと向かった。




