1252 目的?
ザイライヤー族の薬師殿から回復薬を教わり、各自、作り始めた。
薬師としての年期(いや、六年くらいだけど!)があるので、薬の配合や煎じ方は難なくこなし、すぐに回復薬を完成させた。
「……お前さん、手際がいいね……」
薬師殿がオレの手際にびっくりしている。
……オババに習い始めた頃を思い出すな……。
「手先には自信があるんでな」
前世ではそうでもなかったが、今生はなかなか器用な体に生まれた。オトンとオカンに感謝である。
「やはり、外の者は優秀なんだね」
「薬師殿には負けるよ」
感心する薬師殿だが、残されただけあって薬師レベルは高かった。
「その歳でこれだけできれば天才だよ」
「オレを基準にしないでくれ。上には上がいるんだからよ」
オレより才能があり、努力を重ねた者はいる。魔女さんの中にも才能がありそうなのがいる。とても自分が優秀なんて思えねーよ。努力した自負はあるけどよ。
回復薬を作ったのなら試したくなるのが人情。虫の息になっているヤンキーに無理矢理飲ませた。
「……中の下、ってところかな……?」
材料が違うからか、地元の材料で作る回復薬よりは効果が低い。
「いや、凄い効果じゃないですか!」
とは、魔女さんの一人。調合が一番上手かったソバカスさんだ。
「そうか?」
「そうか? じゃないです! 帝都なら高額で取引されるほどですよ!」
これでか? これならニーブ(オババの現弟子です)でも調合できるぞ。
比べるためにソバカスさんが調合した回復薬をヤンキーに無理矢理飲ませる。
傷の深さに多少の違いはあるが、治るスピードで回復薬の効果はわかる。
「下の下、って感じだな」
オレが初めて調合したときより効果は低いぞ。
「……わたし、これでも調合では優を取ったんですから……」
何段階の優かは知らんが、これで優を与えるヤツの腕は知れると言うものだ。
「低くないか?」
別に貶めるつもりはねーが、帝国だぞ? 魔女だぞ? 見習いとは言え、もうちょっと腕があってもイイだろう。
「……あなたから見たらそうかもしれませんが、魔女が作る薬は人気なんですよ……」
なにかプライドを傷つけちまったようで、不快な顔になっていた。
「いや、否定したわけじゃねーよ。帝国の薬のよさは知ってるからよ」
公爵どのから仕入れてもらい、隊商相手に儲けさせてもらっているからな。ただ、この効果を見ると低くとしか言いようがねーんだよな。
「まあ、教育過程が違うかもしれんし、なんか事情があるんだろうよ」
あえて教えない場合もある。これだけで判断はできんか。
「とにかく、材料がある限り作れ。流れを体に身につけさせろ。ただし、工程を一つ一つ理解しながらやれよ。雑な仕事は雑な結果しか生まねーぞ」
ただやればイイだなんて三流の仕事だ。一流を目指すなら全集中。現役薬師としてひよっ子どもに負けてられるかだ。
それから回復薬を調合し続け、二日後に上の中まで持っていけた。
「これ以上は材料の質だな」
これは負け惜しみじゃなく材料の質が効果を上昇させるのだ。料理だってそうだろう? いくら腕がよくても萎びれた葉をしゃきしゃきにはできまいって。いや、料理下手なオレが言っても説得力がねーけどよ。
「採取班。質のイイもんを採ってこい!」
収納鞄を全員に渡す。採ったらすぐ入れろよ。
エース的オネーサマにも頼み、質の良し悪しを教えるようお願いする。
それから集めて来るごとに質の良し悪しを教えてもらい、自分で見きわめるようにする。
「なにしてるの?」
と、久しぶりに聞くメルヘンの声。なにって薬草の質を見極めてるんだよ。
「つまり、目的を見失ったってことね」
目的? あれ? オレ、なにをしようとしてたんだっけ?
「勇者様を探していたのではありませんか!」
………………。
…………。
……。
あ。
「そうだよ! 勇者ちゃんだよ!」
忘れんなよ、オレ!
「いつものべーで安心するわ」
「いや、それはどうなの?」
「あんちゃんはどこにいてもあんちゃんだからね」
メルヘン、レニス、サプルの女三人三重奏。それは、女に必須な能力なのか?
「なにしに来たんだ?」
なにか浅草的なところでたい焼きを作ってなかったっけ? あ、たい焼き食いたくなった。ムシャムシャ。
「あんちゃんがなんかやってるって聞いたから来てみたの」
つまり、これと言った理由はなし、ってことね。了解了解。
「まあ、薬師としての修行だな」
危うく三年くらい修行しそうなくらい全集中してたけど!
「ミタさん。渋いお茶ちょうだい」
ちょっとクールダウンして我を取り戻そうではないか。あーお茶が渋~い。
なぜか一緒のテーブルについてたい焼きを食べ始める女性陣。君らもゴーイングマイウェーイだね。
「魔女さんたち、なんかやつれてない?」
メルヘンの言葉に魔女さんたちに目を向けるとデスマーチな感じで薬草を調合していた。
「なにかを求めるとはこう言うことさ」
「べーはなにを言ってるの?」
「どうでもいいことよ。軽く流しておきなさい」
「そうだね。たぶん、テキトー言ってるだけだから」
メルヘンとマイシスターからの理解がとっても悲しいです!




